滋賀県内の9自治体に「申入書」(ビジネスと人権)を提出

関生支部は5月7日、滋賀県をはじめ大津市、草津市、栗東市、守山市、野洲市、湖南市、甲賀市、高島市に「不当労働行為企業に対する草津市、栗東市、守山市、野洲市、湖南市、甲賀市、高島市地方行政の指導と措置について」と題した申入書を提出しました。滋賀県を含めた9自治体には、1ヵ月を目途に文書回答を求めています。

「国連人権理事会『ビジネスと人権』」をテーマとした申入書の提出

関生支部の平田執行委員と西田執行委員、京津ブロック執行部が、滋賀県内の9自治体・契約関係部局と人権関係部局に「不当労働行為企業に対する地方行政の指導と措置について」と題した申入書を提出し、趣旨説明を行いました。今回の申し入れは「国連人権理事会『ビジネスと人権』」をテーマにした内容です。
関生支部の申し入れに、当局の担当者は真摯に対応し、丁寧に申入書を受け取り「申し入れの内容を検討して回答します」と平田執行委員と西田執行委員、京津ブロック執行部に約束してくれました。

※「申入書」全文

「不当労働行為企業に対する〇〇市、地方行政の指導と措置について」
〇〇市では、市長をはじめ職員のみなさんが懸命に業務や任務に従事されていることに敬意を表します。
私たちは、民間の労働者で組織している労働組合です。〇〇市に対して次のことを申し入れします。
1.「国連人権理事会『ビジネスと人権』」
国連は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を定めました。この指導原則は、取引先も含めて人権侵害を防止・是正・救済するよう求めています。
また、企業には人権を尊重する責任があるとして、サプライチェーン(供給網)全体で問題が起きていないかを調べる「人権デューデリジェンス」を実施することも求めています。
国連の動きを受けて、日本政府(経済産業省)は2022年9月、日本で事業を営む全ての企業に、取引先など供給網を含めて人権侵害の有無やリスクを特定・評価し、対処する人権監査(人権デューデリジェンス)の指針を公表しました。
2023年4月には、政府調達の入札参加企業に、人権尊重への取り組みを求める方針を決めました。
「ビジネスと人権作業部会の声明」
国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が今年の7月24日から8月4日にかけて、訪日調査を実施しました。(7月28日、国連人権理事会「ビジネスと人権の作業部会」の専門家と事務官の2人が、当労働組合事務所を訪問し、組合員と面談。組合員が作業部会の2人に、必要だと考える勧告の具体的な内容を伝えた。)
故ジャニー喜多川氏の性加害問題の扱いが注目されましたが、日本企業に関する人権上の懸念への言及は多岐にわたりました。
作業部会は政府や自治体、企業、労働組合、市民活動家らから聞き取りをし、8月4日の「国連ビジネスと人権に関する指導原則」についての記者会見(日本記者クラブ主催)で声明を出しました。
声明は、人権侵害を受ける恐れがある集団として、女性や性的少数者、障がい者、先住民族、被差別部落、労働組合などの具体的な例を挙げました。
移住労働者や技能実習生問題、原発労働者の下請け構造による低待遇問題、正規も含めて男女の賃金格差、非正規の7割が女性という問題、雇用主がヘイトスピーチを繰り返すなど韓国人・中国人労働者に対する差別の事例、障がい者、アイヌの人々などの先住民、部落、LGBTQI+の労働問題など、日本の企業と人権について包括的な課題が多角的に取り上げられました。(記者会見で明らかにされた所見は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のホームページに掲載されている。「国連ビジネスと人権の作業部会ミッション終了ステートメント」で検索すれば、所見の日本語版を知ることができる。)
その7ページ上段に「労働組合-作業部会は日本で、外国人技術労働者を支援する労働組合の間で、積極的な実践が行われているのを目の当たりにしました。しかし私たちは引き続き、労働組合結成に際する困難、さまざまな部門でストの実施を含む集会の自由に対する障壁、さらには労働組合員の逮捕や訴追の事例などについて、懸念を抱いています」。(労働組合について、「さらには労働組合の逮捕や訴追の事例などについて、懸念を抱いています」というくだりは、関西生コン事件のこと。記者会見の内容は、ユーチューブで「国連『ビジネスと人権』ワーキンググループ会見2923.8.4」を検索すれば知ることができる。)
声明は、地方では企業などの間で指導原則や行動計画に対する認識不足が見られ、大企業と中小企業でも原則の理解に差があるといった分析も示しています。
また、独立した人権救済委員会の設置を求めるなど、日本政府に求めています。企業の責任と同時に、人権保護の責務を負う政府の役割が重要なのは、言うまでもありません。(作業部会の最終報告は来年6月に出る予定。)
「ジャニーズ問題とビジネスと人権」
ジャニーズ問題を含め、今回の声明が指摘するように、国内の企業活動の足下にも目を向けるべき分野が多くあることから各経営者は、自社や国内の取引先についても、人権上の問題が起きていたり、潜在的な懸念があったりしないか、改めて点検するべきです。
ジャニーズ問題では、広告などの見直しを決めるよりどころにするのは、取引先の企業でも人権侵害があれば、救済のために介入していく「ビジネスと人権」の考え方です。
日本でもグローバル企業を中心にここ数年、人権侵害がないか調べて対策を取る「人権デューデリジェンス」を導入する企業が増えています。再発防止に向けた具体的な行動計画を提出するよう求める企業もあります。
アサヒグループHD代表者は「2019年に策定したグループの人権方針に照らせば、取引を継続すれば我々が人権侵害に寛容であるということになってしまう。取引を継続できないと判断した」「マーケティングには影響がないとはいえないが、代替策を考える。人権を損なってまで必要な売り上げは1円たりともありません」「先陣を切って契約を更新しませんとは言いたくなかったが、やはり人権方針に照らしてきちんと決断し、能動的に示す責任がある。人権は我々の事業基盤だと本心から考えている」と朝日新聞の取材に答えています。
取引先の企業に人権侵害があれば、被害救済するために介入していくという考え方が国際標準となっているのです。
取引先として影響力を行使することが求められます。被害者として、すべての被害者への十分な賠償をどう確保するのか、再発防止策を実施できるのか、改善を強く求めるべきではないでしょうか。
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
令和4(2022)年9月13日に日本政府が策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下、ガイドラインという)を参照してください(別添えしている資料ガイドラインにマーカーしています)。
・ガイドライン6頁、1.3本ガイドラインの対象企業及び人権尊重の取組の対象範囲。
・ガイドライン7頁、2.1.2.1「人権」の範囲。
・ガイドライン19頁、ステークホルダーの例として。
・ガイドライン14頁、4.人権DD(各論)。
・ガイドライン21頁、4.2.1.2自社の事業等が人権の負の影響に直接関連している場合。
・ガイドライン22頁、4.2.1.3取引停止。
2.「不当労働行為が認定された企業の違法性」
〇〇市が発注する工事に、大阪府労働委員会から不当労働行為と認定され、救済命令が出されている企業が建設資材を納入・搬入している実態は、この間の当労働組合からの申し入れなどでご承知の通りです。
労働委員会から不当労働行為が認定され、救済命令が出されている企業は、中央労働委員会に再審査申立しているとの理由から大阪府労働委員会の命令を履行していませんが、初審命令を履行する義務があるのはご承知のことです。
初審命令を履行した上で、再審査申立するのが本来のあり方なのです。再審査申立しているから初審命令を履行しないということは理由にならないのです。
〇〇市としても、下請け・資材搬入業者に不当労働行為が認定されている企業を入札参加資格のある元請けの契約問題として、放置するということは、不当労働行為が認定された企業に加担することになります。
上述したように、取引先の問題だからといって、無関係ということではないのです。取引停止も視野に入れつつ監視する姿勢を取らない限り、影響力は発揮できません。
〇〇市には、この機会に人権方針を定め、取引先に対しても人権侵害がないかを調べて対策を取る「人権デューデリジェンス」を実施すべきです。行政が関与を続けて相手企業を改善していくことが必要です。
「不当労働行為企業への対応について」
(1)〇〇市には、入札参加資格業者やすでに落札して工事を進めている元請け業者及びサプライヤーに対して国連人権理事会の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく具体的な指導を求めます。〇〇市として、どのような機関で、どのように対処・善処するのかを回答してください。
(2)また、公共工事の品質確保の促進に関する法律、基本理念(3条8項)、発注者等の責務(第7条)について〇〇市として、どのような機関で、どのように対処・善処するのかを回答してください。
なお、上記2項目の回答書面については、1ヵ月を目処に当労働組合に提出していただきたいことを申し添えます。
(担当者)大阪市西区川口2-4-28
全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部 副委員長 武谷新吾

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