加茂生コン事件差し戻し審判決 / 大阪高裁

人質司法 なぜ労組は狙われたのか〈Tansa〉 ココをクリック
真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】 ココをクリック
無罪!関西生コン委員長に判決【探査報道最前線】ココをクリック

勝利判決と不当判決

最高裁からの差し戻しを受けて行われたこの日の判決では、関生支部のY組合員が再び無罪となる勝利をかち取る一方、安井執行委員は懲役6月執行猶予3年の不当判決を受けました。

多くの支援が駆けつける

大阪高裁前の公園には正午を記して関西圏の支援が続々と結集、12:20には裁判所を周回するデモを敢行、その後、公園に戻って前段集会が行われ、反弾圧大阪実行委員会、京滋実行委員会、兵庫の会、東海の会、教育合同、なかまユニオン、関合労大阪、京都ユニオン、兵庫ユニオン、大阪全労協、全港湾大阪、反原発若狭の会、Xバンドレーダー基地反対連絡会、全交、朝鮮総連大阪府と、支援から無罪判決を求める発言が続き、最後に当該2名の組合員が判決に臨む決意を語りました。
13:30からの84名の傍聴抽選に並ぶ列は200人弱に増え、14:30から201大法廷で1時間弱に渡る判決の言い渡しがありました。

事件と判決の経緯

加茂生コン事件は2017年、村田建材(加茂生コン)で「個人事業主」の形式で、実際には日々雇用されていたM運転手が関生支部に加入、10月16日に組合が団交を申し込むもこれに応じず、就労日数の差別に加え、子どもが保育園に通うための就労証明書の発行を会社が組合加入後拒否するという不当労働行為に対して、組合が抗議と団交の開催、就労証明書の発行を繰り返し求め、会社前での監視活動を行ったことを強要未遂とされた事件です。普通の労組の活動であり、そもそも刑事事件で逮捕されるようなものではないのです。

しかし、2020年12月17日の京都地裁は、加茂生コン代表取締役の妻が急に体調不良を訴えた11月27日以降に要求行為を繰り返したことを強要として安井執行委員に懲役1年(執行猶予3年)、Y組合員を懲役8ヵ月(執行猶予3年)としました。

他方、2021年12月13日の大阪高裁は、就労証明書発行は会社に信義則上の義務があるとして強要の成立を否定、また、11月27日に「仮病を疑ったことは無理からぬ面がある」と判断、Y組合員を無罪、村田建材が警察を呼んだ日のM執行委員(後に組合から脱落)の抗議は行き過ぎだと「脅迫」を認定、安井執行委員はその共犯として罰金30万円とされました。

ところが、2023年9月11日の最高裁は、上告理由は当たらないとしながら、異例の職権による調査を行って上記大阪高裁判決が1審判決を十分に評価したものとは言えない等として上記大阪高裁判決を破棄しました。そのことで今回の判決は今一度、1審地裁判決が正当か否かを判決する場となったのでした。

Y組合員の無罪判決を守り抜く一方、最高裁に忖度して安井執行委員を有罪に

判決終了後の集会で、片田弁護士が判決を解説、今回は12月4日の言動以外は、全て社会通念上認められる範囲を逸脱したとまでは言えないとしながら、12月4日の言動を強要行為とする。しかし、それはこの日に回答するという旨の約束を会社が反古にした等の事情を全く考慮していない不当なもので、傍聴席からも声が上がったように「最高裁の顔を立てた判決」というように私も感じたと述べました。久堀弁護士は、「有罪になった方には申し訳ないが今日は無罪を維持した喜びに浸りたい、ただ、労組法の正当行為の判断がほとんどなされなかったことは残念だ」と語りました。森弁護士は直ちに上告の検討に入るとし、Y組合員が久堀弁護士への感謝を述べました。
有罪となった安井執行委員は、「Y組合員が無罪となって嬉しい。私たちの闘いは刑事事件だけではない。解雇無効に勝利したY組合員は定年後再雇用を求めて争っているが、最高裁判決後は厳しい局面となっていた。今日の無罪判決を受けて、明日にでも団交を申し込む」と労組役員の鑑のような発言。最後に湯川委員長が上告で無罪を勝ち取る組合の決意を述べて締めくくりました。

愛知連帯ユニオン
無罪!関西生コン委員長に判決【探査報道最前線】2025.03.19
【デモクラシータイムス】

深堀する探査報道に特化した記者グループTansaがお届けします。 出演は、中川七海記者、渡辺周編集長。 一部でまるで暴力集団のように中傷されてきた産業別労働組合の関西地区生コン支部。その委員長が、恐喝や強要、威力業務妨害で逮捕され660日を超えて勾留され、起訴後は裁判では懲役10年を求刑されていましたが、このたび京都地裁は全面無罪判決を言い渡しました。しかも、裁判所の判断は明確でした。「畏怖に乗じて金銭を脅し取ったなどとは到底評価できない」「そもそも、ストライキをはじめとする争議行為は、その性質上、労働組合が使用者に一定の圧力をかけ、その主張を貫徹することを目的とする行為であって、業務の正常な運営を阻害することはもともと当然に予定されているものであるし、そうした意味で使用者側がストライキを避けたいと考えることは当然の前提になっている」と、憲法28条で労働組合を作る権利、団体交渉をする権利、ストライキをする権利を保障した趣旨に照らしてごくごく当たり前の判断を示しています。 関生支部は、いわゆる「企業別組合」「従業員組合」と異なり、関西の生コン産業のミキサー車の運転手、事務所の職員などどの会社に雇われていても、正規でも不正規でも加入することができる横断的な労働組合です。この産業別労働組合の強みを生かして、地域の生コン業界の労働条件の向上のためにがんばってきました。元気が良くて団結する組合は、もちろん使用者側には悩みの種です。そのため、何度も弾圧されてきましたが、2018年には安倍政権の下で大阪、京都、和歌山、滋賀など県境を越えて、一斉に組合員が不当に逮捕勾留され、通常では考えられないような無理な罪名で起訴されました。しかも、取調べと言いつつ、ほとんどの事件で「組合をやめればおとがめはない」とささやかれ、生活のために組合を脱退した多くの人もいます。関与したのは警察の警備部や組織暴力対策課でした。 tansaでは、これらの事件を「人質司法」の一例として取り上げるとともに、この一斉捜査はどこがどのように仕組んでいたのか、取材によって見えてきた警察・検察と政治の作った構図を暴いていきます。 2025年3月19日 収録
動画閲覧できます ココをクリック
【MBSラジオがネットで聞けるようになりました】
ドキュメンタリー番組の前に放送されたMBSラジオ「関西生コン事件とは何か」がネットで聞けるようになりました。
以下のところから聞くことができます。
▼Spotify ココをクリック
▼Apple ココをクリック
▼Amazon ココをクリック

増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国

竹信三恵子 (著) 旬報社 – 2025/1/30

勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
  はじめに――増補にあたって
  プロローグ
  第1章 「賃金が上がらない国」の底で
  第2章 労働運動が「犯罪」になった日
  第3章 ヘイトの次に警察が来た
  第4章 労働分野の解釈改憲
  第5章 経営側は何を恐れたのか
  第6章 影の主役としてのメディア
  第7章 労働者が国を訴えた日
  エピローグ
  補章 反攻の始まり
  増補版おわりに

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
お問い合わせはコチラ ココをクリック

ー 公判予定 ー

5月22日    大津1次事件控訴審      大阪高裁   14:30~
   6月 9日        大津2次事件(判決)           大阪高裁 14:30~
関西生コン事件ニュース117号  (4/11 院内報告集会 京都事件・無罪判決と国賠訴訟の今後) ココをクリック