画期的な勝利判決 東リ偽装請負事件

2021年11月4日、大阪高等裁判所で東証1部上場企業である東リ伊丹工場の就労実態が違法な「偽装請負」であったことを認め、労働者5名との直接雇用契約が成立していることを認定。また2017年4月以降の賃金を支払うように命じる判決を言い渡した。

会社からの報復的不利益取り扱い攻撃により採用されず

東リ伊丹工場は巾木など建築資材を製造する会社で1990年台後半頃から労働者を偽装請負といえる状態で雇用してきた。2015年施行の改正労働者派遣法を契機とし労働組合(なかまユニオンLIA労組)を結成。原告ら執行部が先行して労働者派遣法第40条の6に基づき承認通知を東リに送付。直接雇用に関する団体交渉開催を申し入れた。その当時会社は偽装請負会社から派遣会社に労働者の雇用を引き継がせる手続き中であったため、組合員だけを採用拒否するという事件が発生。16名いた組合員は11名が脱退。組合を脱退したメンバーは採用され、組合に残った5名(原告)は全員が不採用となり2017年3月をもって会社から追い出されることになる。

神戸地裁での不当判決

会社からの攻撃に臆することなく組合は2017年11月21日、東リにたいし労働者派遣法40条の6に基づく地位確認訴訟を神戸地裁に提起した。しかし神戸地裁第6民事部裁判官は、2020年3月13日原告らの就労実態は偽装請負ではなかったとして請求を棄却する不当判決を言い渡した。東リが組織的に労働者を他の労働者同様に指揮命令してきた数々の証拠が存在しているにもかかわらず、それらを取り上げることなく、また指揮命令に大きく関わっている人物の尋問も行わず会社側が有利な証拠を認定するなど到底理解できない不当判決であった。

労働者派遣法 第40条の6とは
労働契約申し込み見なし制度の関わる法律で派遣労働者の雇用が失われないように派遣労働者の保護を目的に作られた法律。法律が施行された時点において労働制度が適用される違法行為を行っている場合には、派遣先等はその時点において労働契約の申し込みをしたものとみなされる。
 
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日本初みなし制度を認めた 大阪高等裁判所判決

2021年11月4日、大阪高等裁判所第2民事部判決では党利が伊丹工場で原告ら労働者を「偽装請負」で就労させてきたと認定。さらに東リが労働者派遣法の規定を逃れる目的で偽装請負をおこなってきたことも認め、神戸地裁判決の取り消し、労働者派遣法第40条の6を適用し、労働者としての地位を認め、さらに会社から排除された2017年4月以降の賃金についても支払うように命じている。
偽装請負の該当性については厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」に沿って正当な判断をしている。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準とは
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律に該当するか否かの判断を的確に行うための基準である。
 
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不安定な雇用で苦しむ非正規労働者に一条の光を

現在、日本では違法派遣や会社が労働者基準法違反を免れるための偽装請負が横行している。当たり前の働き方が出来ない、また訴訟を起こしても国家や企業に忖度し当たり前の判決が出ない国「日本」。この判決を評価するとともに、同じように苦しむ労働者を救うべく取り組んでいかなければならない。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

ハーバービジネスオンライン
「関生事件」が揺るがす労働基本権
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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20
業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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