藤田早苗「武器としての国際人権」発刊記念セミナーに参加して(大阪Bブロック組合員の投稿)

「国際社会からみた日本、藤田早苗『「武器としての国際人権』出版記念セミナー」(主催:一般財団法人アジア・太平洋人権センター「ヒューライツ大阪」)が2023年2月17日、ドーンセンターで開催された。

 

「日本の人権問題の解決に取り組んでいる」

そもそも『権利』『人権』とは改めて何ぞや?と考えてみた。『権利侵害だ』とか『人権侵害だ』とか労働組合でも言ってはいるが次々と問題は起こっている。Google先生に問いかけてみたけど、それらしい事が記載されている。そんななか、『武器としての国際人権』という本が出版されたことから、普段から本などは読まない自分だが購入して読んでみた。
著者の藤田早苗さんは、イギリスのエセックス大学人権センターのフェローで国連の人権機関を活用して日本の人権問題の解決に取り組んでいる人物だという。
2/17に、この著者でもある藤田早苗さんの発刊記念セミナーがあることを知り、参加をさせていただいた。

「世界の『常識』が日本の『非常識』」

冒頭、藤田さんは「イギリスではストライキが連日、よく行われている。鉄道も大学の先生も。困るんだけど彼らの行動権(ストライキ)の行使は、イギリス国民から尊重されている。日本ではストライキっていう文字が死んでませんか?」と参加者に投げかけた。確かに日本ではストライキは死語になりつつあると認めざる得ない状況である。労働者の権利はどんどん奪われ、バラバラに分断されてしまっている。
「日本では人権と言えば『思いやり』『優しさ』などと道徳の授業で教育している。確かに大事なことなんだけど、国際的にはそうではなく、政府が助ける義務があるのだ。『思いやり』『優しさ』だけでは限界があり、『自己責任』というカタチで返ってくる。そうじゃないんだと。人権そのものが理解されていないを自分には関係がないと思っているんじゃないか」と話していた。
「ここ日本は国際条約の締結国であり、国連から勧告が幾つも出されている。そもそも批准しなければいけません」と訴えていた。人権後進国。それが、ここ日本の現状なのだそうだ。世界の『常識』が日本の『非常識』であると、著者の藤田さんは警鐘を鳴らしている。

「日本の国会答弁の様に答えないため、出直して来なさい」

国連は基本的に対話を行い、一方的に政府だけの話を聞かない。国連の人権理事会の審査がジュネーブで行われており、そこに日本政府の各省庁の代表団が大所帯で訪れる。2014年7月(第6回審査)が行われた際に、議長が「日本政府はこれまで何度も勧告を受けてきたけど、一向に改善する気がない、それは時間と資源の無駄使いだ」と、真摯に受け止めていないと厳しく指摘されている。
前回も国連の委員から、「聞いていることを日本の国会答弁のように答えないため、出直して来なさい」と言われ、途中で審議が止まることもあったそうだ。

「勧告を無視するような態度をとり続ける日本政府」

●日本に独立した国内人権機関の設置→裁判で行わなくても改善できる様なものを作らなければならない。
●包括的差別禁止法の制定→ヘイトスピーチ規制法では実効性がない。日本の差別の問題は包括的差別禁止法を制定する事で殆どの問題が改善するのではないか。
●個人通報制度の設置。
などの勧告が出されているが日本は批准しない。「2019年には準備する用意がある」と回答しているが、日本は進捗の情報提供をしていないなど、国連の勧告を無視するような態度をとり続ける日本政府の実態がある。

「国内法では行き詰まるため、国際人権を学びに来た」

先日、藤田さんは、初めて大阪弁護士会の弁護士ら20名ほどに講義を行ったそうだ。自由権規約委員会が弁護士、裁判官、検察官に対して国際人権の職業的な訓練を行いなさいと、何度も勧告を受けているのに、司法修習の時に、国際人権をわずか2時間だけ学んだだけで司法界に入っているとのことで、国際人権を学んでいない人が99%だそうだ。藤田早苗さんは「も〜う、大変だわね!」と言っていた。
この状態をなんとかしないといけないという思いで、10年ほど前に、エセックス大学と日弁連が協定を結び、毎年、2名の弁護士が国際人権を学んでいるそうだ。
「国内法では行き詰まるため、国際人権を学びに来た」と、弁護士の皆さんが言うそうだ。大阪弁護士会の人たちも、「武器になるんや」「国際人権が使えるんや」と言っていたそうで「他の弁護士会にも拡げていければ良いな」と、藤田さんは話していた。

「『国連からの勧告に法的拘束力がない』と閣議決定」

人権問題で活動を行なっている人だけではなく、メデイア、弁護士、学者の人たちがみんなでやらなくてはいけない。連帯しなければならない。「会見しても日本のメディアは取り扱わない。記事にしてくれるのは、赤旗くらいや、何でなんやろ?」と藤田さんは嘆いていた。
日本では国連からの勧告に法的拘束力がないので守らなくても良いと2013年に閣議決定している。藤田さんは「こんな国、日本くらいちゃうか?」と怒りを露わにしていた。
(※2023/3/23の参議院予算委員会で国会議員が岸田総理に対した質問で、「総理、国連憲章は尊重されますか?」の質問に「国連憲章をはじめとする国際法を、日本はしっかりと遵守します」と答弁している)。

「憲法は、権力者を縛るもので、国民を縛るものであってはならない」

日本国内で憲法違反や法律の拡大解釈によって、個人や団体の活動を萎縮させるような、警察権力を使った恣意的な拘禁が行われている。関生弾圧もそうであるように、政府は自分たちに異を唱える個人や団体に対して制限をかける。憲法改正を謳いながら、秘密保護法や共謀罪の成立。自民党の憲法改正案には、「集会・結社の自由」「表現の自由」などを定めた22条に2項を新設して「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは認められない」とある。憲法改正を謳いながら、国民のさまざまな権利が制限されていくことになり、自由や権利が制限される。憲法は本来、権力者や政治家を縛るものであって、国民を縛るものであってはならないはずだ。

「想像力を持って行動することが大事なことだ」

最近、メディアで報道されている放送法4条の解釈をめぐって、過去、総務大臣が国会で答弁したことについて騒がれている。時の政権が放送法の拡大解釈を行い、政府が介入して報道の自由を奪おうとしている。放送する権利を国に委ねているのも、先進国の中でも日本だけだそうだ。国民の知る権利を奪うようなことになりかねない。日本国憲法もそうだが、放送法もどのような目的で作られたのか。労働組合や市民団体を弾圧し、大学の教授や教育、教科書検定、メディアにも時の政権が介入する。まさに戦前回帰のような状態に日本はなっていっているんだと思う。
読んだり、聞いたり、ノートに書き留めたことは、日焼けのように消えて行くと言われているように、得た知識をどう活かすかが重要だ。労働組合の立場からこの『国際人権』という武器を使い「人権」「権利」「自由」を守るために、様々な団体と連帯しながら想像力を持って行動することが大事なことだと思う。

 

藤田早苗(ふじた さなえ)法学博士(国際人権法)エセックス大学人権センターフェロー。
同大学で国際人権法学修士号、法学博士号取得。
名古屋大学大学院国際開発研究科修了。
大阪府出身、英国在住。写真家。
特定秘密保護法案(2013年)、共謀罪法案(2017年)を英訳して国連に通報し、その危険性を周知。
2016年の国連特別報告者(表現の自由)日本調査実現に尽力。

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

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ー 公判予定 ー

4月19日  コンプライアンス二次事件 大津地裁 10:00~
5月11日     京都3事件                    京都地裁 10:00~

関西生コン事件ニュース No.88  ココをクリック3月29日発行 関連動画 「関西生コン事件」報告集会 ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.87  ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.86  ココをクリック   

2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

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