「家事労働者過労死訴訟高裁判決は逆転全面勝訴」竹信三恵子さん

竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)の2024年9月22日付け発信を掲載します。

「家事労働者過労死訴訟高裁判決は逆転全面勝訴」

(写真はレイバーネットより 写真右から2番目が竹信さん)
ご報告が大変遅れましたが、19日の家事労働者過労死訴訟の高裁判決は、1審判決を覆し、全面勝訴ともいえる素晴らしいものになりました。2013年に『家事労働ハラスメント』という本を書いて以来、家事労働の社会的な意味の重さと怖さに強い関心を抱き、この裁判も支援してきました。そんな立場からも本当にうれしく、原告の方々の踏ん張りと、弁護団の方々の精緻な立証力、支援労組の粘り強さ、そして「トラツバ」(虎と翼)の再来のような明快な水野有子裁判長ほか裁判官のみなさんの心意気に感謝します。

「地裁判決は、全面敗訴」

この事件は、1週間ほど個人家庭に寝泊まりして、朝5時から夜12時ごろまで症状の重い高齢者を介護しつつ、その家族のために家事労働も担っていた60代の家事労働者の女性が、勤務明けに急死した事件です。遺族の過労死申請が却下され、その処分の取り消しを求めた地裁判決は、全面敗訴となりました。」
理由は、女性が家事サービス会社に雇われて担っていたのは介護部分だけ、その労働時間は1日4時間半程度にすぎず、労災の要件となる長時間労働を大幅に下回る、というものです。残りの家事労働は家庭と個人契約を結んで家庭内で働く「家事使用人」としてのものであり、労基法116条2項では、「家事使用人」は労基法の対象外となっているため、労災の対象にならないというものでした。

「労災不支給処分を取り消した高裁判決」

一方、高裁判決は、女性の労働実態を丹念に検証し、家事と介護はこの場合、混然一体となっており、一体の労働として家事サービス会社に雇われていたため、会社の仕事(つまり労基法の対象内)として、労災の対象になるとし、仕事の内容も、被介護者と同室で寝泊まりを続け、個室がないため空いた時間も台所の椅子で休むなど休憩がほとんどない過酷なものであり、その過酷さからも労災を引き起こすには十分、として労災不支給処分を取り消しました。
1審は、家事なんだから家事使用人、といわんばかりの形式的な認定で、また、家事・介護労働の負担をきわめて軽く見積もるものでした。それを、実態に即して、しっかりと見直した判決でした。今回は116条の是非に踏み込むまでもなく、本来は116条の対象にならないような労働をその対象にしていたずさんさを突いたものでしたので、116条の是非にまで言及する必要はなかったわけです。言い換えれば、116条を放置すると、こうした誤った拡大解釈を通じて、介護労働と家事の混合労働を任される家事労働者の労働条件を引き下げることにも利用されかねないということです。

「ILOの家事労働者条約の批准要求にもはずみを」

このところ、介護と家事労働を一緒にして家事労働者に丸投げするような働かせ方が増えています。介護保険では足りない部分が広がり、それが、こうした「家政婦」の家庭内介護ニーズの拡大につながっているようです。そこでの労働条件の悪化に歯止めをかけた点できわめて重要な判決ですし、さらに、116条の撤廃、さらにはILOの家事労働者条約の批准要求にもはずみをつけるものと言えます。
長くなりましたが、今回はこの程度にとどめ、今後、詳しい分析・論評をまとめたらお知らせします。竹信三恵子

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※『家事労働ハラスメント-生きづらさの根にあるもの』著者=竹信三恵子(岩波新書、2013年)

10.19反弾圧シンポジウムin東京開催決定!
日にち:2024年10月19日 土曜日
時 間:13:30受付 14:00~
場 所:国鉄労働会館
     (東京都港区新橋5丁目15-5)

 
 
 
 
 
 
主 催:連帯ユニオン関西地区生コン支部
共 催:連帯ユニオン関東支部
    労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会・大阪
    労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会
    労働組合つぶしを許さない兵庫の会
お問合せ:連帯ユニオン関西地区生コン支部 06-6583-5546
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京都3事件無罪判決を求める署名のよびかけ
労働組合活動を犯罪扱いさせてはなりません
「京都事件」は、ベスト・ライナー、近畿生コン、加茂生コンの3つの事件(労働争議)を併合審理する刑事裁判です。労働争議の解決金を受領したことが「恐喝」とされています。
争議解決にあたって、会社側に解雇期間中の未払い賃金、雇用保障、組合の闘争費用などを解決金として支払わせることは、裁判所や労働委員会でも当然の実務として定着しています。ところが、警察・検察は、関生支部は労働組合を名乗る反社会勢力で、金銭目当てで活動してきたそんなストーリーで前代未聞の事件を仕組んだのです。
企業の団結権侵害に対する抗議行動や団体行動を犯罪扱いする警察・検察の暴挙を許せば、憲法28条が保障した労働基本権がなかった時代への逆戻りです。裁判所は毅然たる姿勢で無罪判決を出すべきです。すべての労働組合のみなさまに署名活動へのご協力をよびかけます。
署名活動の実施要領
提 出 先:京都地方裁判所第2刑事部
署名の種類:団体署名を実施します(個人署名ではありません)
      署名用紙は、  ココをクリック
集約と提出:第1次集約  9月末日(10月中旬提出)
      第2次集役  10月末日(11月中旬提出)
      最終週役    11月末日(12月中旬提出)
送 り 先:〒101ー0062
      東京都千代田区神田駿河台3ー2ー11 連合会館
      フォーラム平和・人権・環境気付
      関西生コンを支援する会 ホームページ  ココをクリック
      TEL:03ー5289ー8222
      関西生コン事件 仰天の現場証言~無罪の被告人と兵糧攻めされる業者【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで、「関西生コン事件」の解説。刑事裁判で無罪になった二人の組合員と、組合員を雇った、組合員に仕事を出したことを背景にセメントの販売を拒絶され兵糧攻めにあっているセメント製造業者をインタビュー。また、「産業別労働組合」の歴史の経過を詳しく解説。
動画閲覧できます ココをクリック
MBS(毎日放送)映像’24「労組と弾圧」がギャラクシー賞奨励賞を受賞しました。
5月31日、受賞式のようす ココをクリック
【MBSラジオがネットで聞けるようになりました】
ドキュメンタリー番組の前に放送されたMBSラジオ「関西生コン事件とは何か」がネットで聞けるようになりました。
以下のところから聞くことができます。
▼Spotify ココをクリック
▼Apple ココをクリック
▼Amazon ココをクリック

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

第26回ソウル人権映画祭で上映されました。 ココをクリック
6月13日から開催される、第26回ソウル人権映画祭(ソウルマロニエ公園一帯)。
14日(金)に『ここから「関西生コン事件」とわたしたち』が上映されます。英語・韓国語・字幕、韓国手話付き。全22作品を上映。

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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東京新聞「こちら情報部」

保育園に入れるための就労証明が犯罪? 労組は反社? 逆転無罪が相次ぐ「関西生コン事件」が示す民主主義の危機 ココをクリック

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