大津1次事件控訴審 不当判決に対する抗議声明を発表
11月18日、大阪高等裁判所で出された、全日本建設運輸連帯労働組合(中央本部・近畿地方本部・関西地区生コン支部連名)と弁護団がそれぞれ抗議声明を発表しました。
両声明は、法令違反を指摘し、生コンの安売りを抑制する活動を違法視したものであり、憲法が保障する労働者の権利を侵害するものだと強く非難しています。
執行委員長 細野直也
執行委員長 湯川裕司
2025年11月18日、大阪高等裁判所第3刑事部(石川恭司裁判長)は、コンプライアンス活動第1事件について控訴審判決を出した。
判決は、湯川裕司委員長については原判決を破棄してタイヨー生コン事件については無罪としたが、他の4事件については一審判決を維持して懲役3年、執行猶予5年とした。また、他の組合員ら4名については控訴を棄却して執行猶予付きの懲役2年6ヵ月から1年とした。
タイヨー生コン事件の無罪は当然である。この事件は武・前委員長と湯川委員長が同社から1,000万円を脅し取ったとされたものだが、組合側が同社に金員を要求した事実はなかった。しかも関生支部50周年事業に対するカンパとして現金を受け取った前委員長は分離された別の裁判ですでに2年半も前に無罪判決が確定していたうえ、そもそも湯川委員長は現金受け渡しの際にはその場にいなかったからである。控訴審判決が判示したとおり「恐喝の実行行為」など存在しなかったにもかかわらず、一審大津地裁判決は推認に推認を重ねて湯川委員長を有罪にして懲役4年という実刑を科したのだった。
他方、控訴審判決は、他の4事件についてはコンプライアンス活動の目的はゼネコン等の生コン購入先を協同組合非加盟社(アウト)から協同組合加盟社(イン)に変更させることが目的なのだから、正当な労働組合活動とは評価できないというのである。しかし、この評価は関生支部が産業別労働組合として行ってきたコンプライアンス活動の目的をまった理解しようとしない不当極まりないものというほかない。
コンプライアンス活動の目的は、生コン業界が供給過多の過当競争構造のもとで安売り競争が横行し、生コン業者の慢性的な赤字経営、労働者の雇用の非正規化と労働条件切り下げ、品質の手抜きにつながってきたことから、地域の協同組合を強化することによって安売り競争を抑制すること、それによって生コン価格を適正水準に引き上げて事業者の適正利益、労働者の賃金・労働条件引き上げ、生コンの品質確保を実現することにある。同時に、死亡事故を含む重大事故が後を絶たない建設現場を安心して働くことができる職場に変えていくことをめざしてきた。コンプラアインス活動は世界の産業別労働運動においてはごく当たり前の日常活動である。ところが、高裁判決は、産業構造や市場のあり方について労働組合が口出しすることは違法だという許しがたい労働組合観にもとづいて書かれている。
私たちは、憲法28条の労働基本権保障を当然に受ける産業別労働組合として、自らの活動の正当性に確信を持っている。不当判決に対して上告し、弁護団をはじめ全国の仲間と固く団結し、最高裁で無罪判決を勝ち取るべく奮闘する決意である。
2025年11月18日、大阪高等裁判所第3刑事部(裁判長裁判官石川恭司・裁判官中川綾子・裁判官國分進)は、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、「組合」という。)の湯川委員長(事件当時は副委員長)ら5名に対する判決を言い渡した。組合が行っていたコンプライアンス活動(生コンが納入される建設現場で、諸法令・品質管理基準の遵守状況を監視し、違反があれば是正を求める活動。)が恐喝未遂・威力業務妨害にあたるとして起訴された事件、湯川委員長についてはそれに加えて、関生支部50周年事業に対するカンパが恐喝として起訴された事件(タイヨー事件)であった。原判決は、すべての被告人についてすべての事件を有罪としていた(湯川委員長は実刑。)。判決は、原判決中、湯川委員長に関する部分を破棄してタイヨー生コン事件について無罪とし、その他の4事件に関する部分は控訴を棄却し原判決を維持した。量刑としては、湯川委員長に懲役3年・執行猶予5年、それ以外の組合員には執行猶予付きの懲役2年6ヶ月から1年とした。
検察官が懲役8年の求刑をし、懲役4年の実刑判決とした原判決において、その量刑理由の比重の大部分を占めたのが高額の恐喝既遂事件であるタイヨー事件の有罪であったはずである。控訴審でも結果として、タイヨー事件で無罪を得たことによって実刑を阻止したことになる。その意味でタイヨー事件について逆転無罪を獲得したことの意義は大きい。もっとも、判決は、原判決が恐喝の事実を認めたこと自体が誤りだとし、その判断の過程についても原判決のあまりの杜撰さから「推認力の乏しい間接事実による推論といわざるを得ず」等と何度も判示せざるを得なかった。原判決がおよそ裁判官としての仕事をしていないと述べているに等しく、無罪判決を得ることが必至であったともいえる。
一方、有罪判決となった4事件については、原判決と同様、致命的な欠陥がある
1 結局のところ憲法28条の判断をしていない
判決は、弁護人による憲法28条による刑事免責にかかる主張について、原判決が「正面からこたえたものとは言い難い」等と何度も原判決の不備を指摘している。 しかし、判決も、結局のところ団体行動権行使の正当性の判断に不可欠であるはずの主体・目的・態様の具体的検討をしていない。つまり、原判決は「憲法28条」という文字が一度も登場しないほどに弁護人の主張に対応せずに判決の体をなしていなかったのであるが、判決は、一応弁護人の主張に対応するそぶりをみせつつも、その実質は原判決と変わらず、憲法28条の判断をしていないといえる。
2 「目的」と「一連の行為」を結びつけて刑法違反と判断している誤り
判決は、コンプライアンス活動の「目的」がゼネコン等の生コン購入先を生コン協同組合非加盟社から加盟社に変更させることにあったと何度も判示する。判決は、そうした「目的」が悪いということを当然の前提にし、それを根拠に刑法違反を結論づけているようである。しかし、仮にそうした「目的」があったとして、そうした「目的」がなぜ悪いのか全く理由が述べられていない。産業別労働組合としての組合が、生コン業者間の過当競争を正常化して企業の経営基盤を安定させようとすること、つまり協同組合の組織率を高めようとすることは当然のことである。「労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ること」(労働組合法2条柱書)そのものである。そもそも、企業に圧力をかけて自己の要求を実現しようとすること自体が違法とされるなら、反原発、反公害の住民運動や消費者運動さえ、本来的には違法なものと評価されることになる。
また、判決は、「コンプライアンス活動は直ちに違法とはいえないとしても」、「コンプライアンス活動は個別に見れば、態様は概ね平穏」等と判示し、原判決に比してコンプライアンス活動に対して一定の理解を示す。 しかし、判決は、現場に存在した明白な法令違反や行政・警察による指導を認定していない。コンプライアンス活動のどの動画を見ても、組合員らは少人数・短時間・平穏な態様で丁寧なコミュニケーションを尽くしていたことがわかる。それにもかかわらず、判決は、原判決と同様、コンプライアンス活動時の組合員の言葉・口調・語気・所要時間、違反の事実、現場監督等の対応、行政の対応等について事実認定しておらず、動画を視聴した形跡がない。動画等に基づき正しく事実認定をすれば、一つ一つのコンプライアンス活動が、人を畏怖させるに足りる行為(恐喝)や、人の自由意思を制圧するに足りる行為(威力業務妨害)に該当しないことは明らかであった。このことは判決も自明の前提としていたといえる。だからこそ、判決は、一つ一つのコンプライアンス活動が適法であることは犯罪の成否とは無関係であり、一連の行為としてみれば有罪とせざるを得なかったのである。 このように原判決は、「目的」と「一連の行為」を結びつけ全体として見れば悪そうだから有罪としたのであり、刑事裁判の根本を歪める極めて危険な判断をしているのである。弁護団および組合は、最高裁で全件無罪を獲得するべく闘い抜く所存である。
真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】20250411【デモクラシータイムス】
ご存じですか、「関西生コン」事件。3月には、組合の委員長に対して懲役10年の求刑がされていた事件で京都地裁で完全無罪判決が出ました。無罪判決を獲得した湯川委員長と弁護人をお呼びして、竹信三恵子が事件の真相と2018年からの一連の組合弾圧事件の背景を深堀します。 今でも、「関西生コン事件」は、先鋭な、あるいは乱暴な労働組合が強面の不法な交渉をして逮捕された事件、と思っておられる方も多いようです。しかしそうではありません。企業横断的な「産別組合」が憲法上の労働基本権を行使しただけで、正当な交渉や職場環境の改善運動だったから、強要や恐喝など刑事事件には当たらないものでした。裁判所の判断もこの点を明確にしています。では、なぜ暴力的組合の非行であるかのように喧伝され、関西全域の警察と検察が組織的に刑事事件化することになったのか、その大きな背景にも興味は尽きません。 tansaのサイトに組合員お一人お一人のインタビューも連載されています。ぜひ、どんな顔をもった、どんな人生を歩んできた人たちが、濡れ衣を着せられ逮捕勾留されて裁判の法廷に引き出されたのかも知っていただきたいと思います。
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増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国
勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合潰しが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
はじめに――増補にあたって
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
補章 反攻の始まり
増補版おわりに
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たちこの映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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