関生支部の産業別労働運動①

和歌山県の生コン経営者が元暴力団関係者を使って、関生支部の組合活動を妨害したり、組合員を脅したことに対して、関生支部の役員らが抗議と謝罪を求めたことが、強要未遂、威力業務妨害とされた事件の控訴審判決公判が3月6日に開かれ、大阪高裁は1審の和歌山地裁判決(有罪)を破棄し、関生支部の組合員ら全員無罪の判決を言い渡しました。

「関生支部は産業別労働組合」

和田真裁判長は、主文の理由を「関生支部の団結権を守るための行為(憲法28条の団結権等の保障)」、「関生支部は産業別労働組合であり、業界企業の経営者・使用者やその団体と労働関係上の当事者に当たる(広域協組に関生支部の組合員が雇用されていなくても)から、団結権を守るための正当な行為は、違法性が阻却される(労組法1条2項)」と理由を述べ、関生支部の産業別労働運動を認定したのです。

「憲法28条の解釈」

日本国憲法28条は、勤労者の団結権、団体交渉権、その他の団体行動権を保障しています。憲法28条は、特定の組織形態の労働組合の結成だけを保障しているのではないのです。企業別組合だけでなく、職業別あるいは産業別の労働組合の結成をその団体行動を保障しています。
ところが、日本には企業別労働組合が多いという現状から、憲法28条は企業別労働組合だけを保障しているかのような前提にたって、労働組合は組合員が雇用されている企業との団体交渉だけが保障されているにすぎないとの解釈がされることがあります。
しかし、上記のような解釈は憲法28条の立法事実をふまえた解釈ではありません。憲法28条が定める労働基本権を憲法規範とするに至った事実(立法事実)は、企業別組合ではなく、主として職業別・産業別組合が結成されてきた歴史的事実、しかも職業別組合や産業別組合が組合員が雇用されている企業に対してだけでなく、組合員が雇用されていない企業であっても同種の職業、同種の産業に属する企業であれば、そのような企業に対しても団体交渉を求めてきた歴史的事実があるのです。

「産業別労働組合の『集合取引』(団体交渉・集団交渉)を保障している」

憲法28条は、労働組合の組織形態について制限するものではありません。企業別組合だけでなく、むしろ職業別組合、産業別組合を保障したものなのです。それは、憲法制定当時までの各国における労働組合が職業別・産業別労働組合であったという事実だけでなく、日本の戦前の労働組合が職業別・産業別労働組合であったという事実、また、1945年労働組合法制定過程における審議において企業別組合を主張する意見がまったく顧みられなかった事実からも明らかです。
職業別・産業別労働組合の団結権、団体行動権等を保障している以上、憲法28条は、職業別・産業別労働組合が行う本来的な活動、すなわち「集合取引」をも保障しています。集合取引は一つの業種・産業に属する個別企業およびその連合体に対し、当該産業に従事する労働者の労働組合が、取引主体となって取引することです。組合員と雇用関係にある企業はもちろん、雇用関係にない企業との集合取引も保障していると解さなければなりません。憲法制定の審議においてこれを否定する意見はなかったのです。そうであれば、憲法28条は「団体交渉」という文言によって、上記のような意味での集合取引を保障してると見るべきなのです。

「集団的労使関係に関する重要な判断を示した」

大阪高裁の判決は、日本では労働組合・労働運動が国家権力やその手先となった暴力組織によって弾圧された歴史があり、憲法28条はそうした権力・暴力との関係で保障されている。産業別労働組合である関生支部は、業界企業の経営者・使用者あるいはその団体と労働関係上の当事者に当たるとし、関生支部の行動は、正当な目的のもとに行った正当な労働組合活動だと、憲法28条の制定経過や労働運動の弾圧の歴史について正当な理解のもとに、産業別労働組合の組織構造や活動の特徴を理解したうえで憲法や労組法を正当に解釈した、集団的労使関係に関する重要な判断を示しました。
次回は、関生支部の労働組合活動とその特徴を紹介します。

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

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関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】

デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。

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ー 公判予定 ー

5月11日  京都3事件     京都地裁

(4/26 中止となりました)

5月22日     フジタビラ事件       大津地裁 9:45~

関西生コン事件ニュース No.88  ココをクリック3月29日発行 関連動画 「関西生コン事件」報告集会 ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.87  ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.86  ココをクリック   

2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

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