労働組合の表現を違法と評価  KURS「結」名誉毀損損害賠償訴訟

3月25日、関生支部が原告となり、日本労働組合総連合会全国交通運輸労働組合総連合関西地方総支部生コン産業労働組合(以下「生コン産労」)、全日本建設交運一般労働組合関西支部(以下「建交労」)および建交労顧問の岡元氏を被告として提訴していた名誉毀損等に基づく損害賠償等請求事件の大阪地裁判決があった。

「数ある投稿のなかに名誉を毀損の内容が」

2018年1月23日、大阪広域生コン協組が連帯労組との接触・面談禁止の通知を発出し、その翌日、被告らは、近畿生コン関連協議会(KURS・コース)なる団体を発足させた。被告らは、そのウェブサイトで「結」と名付けたブログで投稿をするようになり、関生支部を執拗に中傷し、非難する「偽装労組」という連載記事を投稿するようになった。なお、「KURS」は、建交労(K)、UAゼンセン関西セメント関連産業労働組合(U)、関西レディーミクスト労働組合(R)、生コン産労(S)の頭文字をつないだものとのことである。
関生支部が、名誉毀損にあたるとした投稿は次の4点である(これ以外にも名誉毀損の投稿はあるが、訴訟対応の便宜等から4点に絞った)。❶武委員長(当時)が手錠および腰縄で拘束されていることがわかる逮捕時の写真の投稿❷湖東協組事件(フジタ事件)に関する誤った事実と評価を記載した投稿❸「労働組合の名を騙(かた)り、建設関連企業に対して本来の組合運動とはほど遠い「恐喝」や「威力業務妨害」など反社会的行為で巨額の資金を獲得していた…」という投稿❹宝島記事の内容に関する誤った事実と評価を記載した投稿である。

「暴力団と親密な関係真実相当も否定した」

これに対し、判決は次の判断を示した。❶について、腰縄を付けられて警察に連行される姿を視覚的に表現した事実を摘示したものだと整理し、これは武委員長(当時)の社会的評価を低下させる摘示でも名誉感情侵害(侮辱)ではないし、仮にそうだとしても関生支部への権利侵害にならないとした。❷~❸について、社会的評価を低下させる摘示だとし、真実性は認められないものの、検察官の冒頭陳述等を前提に被告らが真実と信ずるにつき相当の理由があったとした。④について、そのほとんどが社会的評価を低下させる摘示だとした。❹のうち「宝島訴訟第1審判決が、原告は半グレ集団であると認定した」「宝島訴訟控訴審判決が、原告は反社会的勢力ないし反社会的集団であると認定した」「宝島訴訟において、原告は反社会的勢力ないし反社会的集団であるとの認定が最高裁で確定した」等の摘示事実は、真実であるとはいえないとしつつも、判決について「法律的知識の十分でない者において真実性が認められたと誤解しかねない状況があったといい得る…」として真実信ずるについて相当の理由があったとした。❹のうち「宝島訴訟控訴審判決が、原告代表者である武は暴力団と親密な関係にあると認定した」、「宝島訴訟において、原告代表者である武は暴力団と密接な関係にあるとの認定が最高裁で確定した」の摘示事実は、同控訴審判決が、真実性も真実相当性も否定していることから、本件についての真実であるとはいえず、真実と信ずるについて相当の理由があったとはいえないとした。

「審問等ではっきりとストライキの正当性」

なお、関生支部は、被告らの本件投稿における主要目的は、敵対組合の弱体化であって公益目的ではないため、違法性が阻却されないと主張してきたが、この点は認められなかった(被告岡元尋問等から、2017年12月のストライキの目的が輸送運賃の値上げであり、その正当性について被告らを含む労組間で共有されていたこと等の事実は十分に認定できたはずである)。

「一部勝利判決とはいえ法的責任を明確にした」

判決は結論として、10万円の損害賠償請求、上記真実相当性を否定した記事の該当部分の削除請求を認めた。この結論自体は、一部とはいえ被告らの法的責任を明確に認めたという点で評価できる。とりわけ、裁判所が被告ら「労働組合」の「表現」を違法と評価し、差し止めたという事実は重く受け止められるべきである。残念ながら被告らが控訴したようで、闘いの舞台は大阪高裁に移る。地裁判決以上の成果が得られるよう尽力する。

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