戦後80年のいま、私たちはファシズムの影にどう向き合うか

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2025年8月15日。私たちは敗戦から80年という節目の日を迎える。この長い年月の中で日本は、平和憲法のもと戦争を放棄し、経済復興と民主主義の発展を遂げてきた。だが今、私たちの足元で揺らいでいるのは、まさにこの平和と民主主義そのものである。特に近年、急速に支持を広げている「参政党」のような新興右派勢力の台頭には、戦前のファシズムとの不気味な重なりを見る者も少なくない。

「日本人ファーストを掲げ支持の拡大」

参政党は、既存政党への不信、コロナ禍への不満、子どもたちの未来への危機感を巧みにすくい上げ、「日本人ファースト」を掲げて支持を拡大してきた。その名前は一見すると市民運動のように中立的に響くが、街頭演説やSNSでの扇動的な言説、科学を無視した陰謀論、外国人排斥的な姿勢は、1930年代のナチスやファシスト党の戦術を想起させる。

「格差の広がりや情報への不信感」

こうした現象は日本だけでなく、世界中で起きている。アメリカでは2024年の大統領選挙でドナルド・トランプが再選を果たし、2025年現在、現職の大統領として再びホワイトハウスに戻っている。彼は前任期と同様、メディアや司法を敵視し、「アメリカ・ファースト」を掲げて移民やLGBTQの権利を攻撃する政策を進めている。議会や司法に対する攻撃的な姿勢は、民主主義の基盤をじわじわと侵食している。
アメリカで起きていることは、決して他人事ではない。トランプ現象は、経済格差やグローバリズムへの反発、白人層の相対的地位の低下といった「不安」に根差している。こうした構造は日本にも存在する。格差の広がり、将来不安、情報への不信感。それが参政党のような勢力への支持につながっている。
そして私たちは、ナチスやトランプを語るとき、日本自身の過去の過ちにも目を向けなければならない。大日本帝国は、アジア諸国への侵略と植民地支配を行い、国内では異論を許さない全体主義体制を築いた。1923年の関東大震災においては、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という根拠のないデマが流され、自警団や軍・警察によって多数の朝鮮人が虐殺された。この事件は、日本社会における排外主義がいかにして暴力と結びつくかを象徴するものである。
参政党が主張する「真の日本人を守れ」「国を取り戻す」といったスローガンは、この歴史と無縁ではない。排外主義的な言説は、過去の加害の歴史を矮小化し、再び少数者への攻撃を正当化する空気をつくり出す。だからこそ、私たちは歴史に学ばなければならない。
歴史は、必ずしも同じ形では繰り返さない。だが、社会が不安定になったとき、民主主義が「選挙」という合法的な手続きを通じて自壊していくことはあり得る。ナチスも選挙で政権を取り、合法的に独裁体制を築いた。「民族の誇りを取り戻せ」「強い国家を再建せよ」といったメッセージが、今日も繰り返されている。

「差別排外主義は分断をもたらす」

「ファシズムとは、強権的な指導者が突然現れることではなく、市民一人ひとりの無関心と迎合から生まれる」。この指摘は的を射ているが、同時に私たちは、自発的な関心をもたない市民を一方的に責めるだけでは解決にならないという現実も見つめる必要がある。無関心や迎合は、ある意味で歴史的な必然でもある。日々の生活に追われ、制度や情報に対する無力感を抱くなかで、政治から遠ざかってしまう人々がいて当然である。

「組合活動を通して自らの権利を学ぶ」

だからこそ、私たちには「社会的紐帯」を再構築する努力が求められる。その一つが、労働組合である。労働組合は単なる賃金闘争の場ではなく、労働者が社会や政治について学び、考える「労働者の学校」としての役割を果たしてきた。無知と無関心に陥った労働者が、組合活動を通して社会の構造や自らの権利を学び、声を上げる主体となっていく。この営みこそが、ファシズムに抗う最も現実的で力強い希望ではないだろうか。
戦後80年というこの日を、単なる慰霊の日として終わらせてはならない。むしろ今こそ、「なぜ私たちはあの戦争に至ったのか」「なぜ民主主義は力を失ったのか」という根源的な問いに向き合うべきである。そして、その問いに答える営みを、私たちの日常と組織のなかに取り戻すことが、未来への責任である。

私的判決論 人々の権利の実現をめざして

中島光孝/著
出版社名 白澤社
ページ数 334p
発売日 2025年06月
販売価格 : 3,400円 (税込:3,740円)
目次
第一部 弁論が開かれた最高裁判決(ハマキョウレックス事件、日本郵便〔西日本〕事件―「非正規格差」をどう是正するか
空知太神社事件最高裁判決―政教分離原則違反はだれがどのような基準で判断すべきか
水俣病訴訟―公害企業救済か被害者救済か)
第二部 「戦争」にまつわる判決(大阪・花岡中国人強制連行国賠請求訴訟―国家の「強制」による「加害」を国家はいかに償うべきか
台湾靖国訴訟・小泉靖国訴訟―台湾原住民族はなぜ「靖国合祀」を拒否するか
「アベ的なるもの」との三〇年―フィリピン元「従軍慰安婦」補償請求訴訟/「君が代」斉唱拒否訴訟/安倍国葬違法支出公費返還請求住民訴訟)
第三部 労働組合をめぐる判決(三菱重工長崎造船所〔労働時間〕事件―「労働と労働組合活動」を考える
住友ゴム工業事件・近鉄高架下文具店長事件―「職場の労働組合活動」を考える
関西生コン支部刑事弾圧事件―「労働基本権保障」の意味を考える)

 

真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】20250411【デモクラシータイムス】

ご存じですか、「関西生コン」事件。3月には、組合の委員長に対して懲役10年の求刑がされていた事件で京都地裁で完全無罪判決が出ました。無罪判決を獲得した湯川委員長と弁護人をお呼びして、竹信三恵子が事件の真相と2018年からの一連の組合弾圧事件の背景を深堀します。 今でも、「関西生コン事件」は、先鋭な、あるいは乱暴な労働組合が強面の不法な交渉をして逮捕された事件、と思っておられる方も多いようです。しかしそうではありません。企業横断的な「産別組合」が憲法上の労働基本権を行使しただけで、正当な交渉や職場環境の改善運動だったから、強要や恐喝など刑事事件には当たらないものでした。裁判所の判断もこの点を明確にしています。では、なぜ暴力的組合の非行であるかのように喧伝され、関西全域の警察と検察が組織的に刑事事件化することになったのか、その大きな背景にも興味は尽きません。 tansaのサイトに組合員お一人お一人のインタビューも連載されています。ぜひ、どんな顔をもった、どんな人生を歩んできた人たちが、濡れ衣を着せられ逮捕勾留されて裁判の法廷に引き出されたのかも知っていただきたいと思います。
動画閲覧できます ココをクリック

増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国

竹信三恵子 (著) 旬報社 – 2025/1/30

勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合潰しが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
  はじめに――増補にあたって
  プロローグ
  第1章 「賃金が上がらない国」の底で
  第2章 労働運動が「犯罪」になった日
  第3章 ヘイトの次に警察が来た
  第4章 労働分野の解釈改憲
  第5章 経営側は何を恐れたのか
  第6章 影の主役としてのメディア
  第7章 労働者が国を訴えた日
  エピローグ
  補章 反攻の始まり
  増補版おわりに

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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ー 公判予定 ー

10月31日    国賠裁判      東京地裁(判決)   15:00~
11月18日    大津第2次事件   大阪高裁(判決)   14:30~