恫喝と組織票が蝕む市民社会
民主主義を揺るがす「暴力装置」の変質
南西地域の防衛体制強化を名目に、陸上自衛隊宮古島駐屯地の隊員増強が進むなか、この動きは単なる軍事力の拡大に留まらず、宮古島の民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題を引き起こしています。それは、公務員である自衛官による市民への恫喝と、隊員増強による地域の民意の歪曲という二つの側面から顕在化しています。これらの問題は、自衛隊と市民社会の関係、そして国民の生命と財産を守るべき組織のあり方について、根本的な問いを投げかけています。
憲法を軽んじた隊長の恫喝行為
まず、宮古警備隊長が、公道で訓練を監視していた市民に対し「許可を取ってこい」などと恫喝したとされる事案は、個人の不適切な言動として片付けられるべきではありません。この発言は、日本国憲法が保障する報道、表現、集会の自由を無視したものです。公道での監視活動は、国民の自由権の行使であり、自衛隊の「許可」を必要としないことは明白です。隊長が虚偽の主張で市民の権利を制限しようとしたことは、民主主義社会のあり方として全く容認できません。
この隊長の態度は、市民を対話の相手ではなく、排除すべき「敵」と見なしているかのようです。もしこのような認識が自衛隊内で広く共有されているとすれば、それは国民から遊離し、閉鎖的な「暴力装置」へと変質していく危険性を示唆しています。この種の恫喝行為が繰り返されれば、自衛隊と地元住民との間に深い不信感の溝が生まれ、災害派遣などで築き上げてきた国民からの信頼を根底から揺るがすことになります。
「組織票」が歪める民主的プロセス
次に、宮古島駐屯地の隊員増強が、将来的に行われる可能性のある住民投票に与える影響は、現実的な懸念として捉えるべきです。現在、数千人規模にまで膨れ上がるとされる駐屯地関係者は、人口約5万5千人の宮古島において、無視できない有権者層を形成しています。自衛隊員も一般市民と同様に選挙権を有していますが、彼らは上官からの命令系統が存在する特殊な組織に属しています。
もし、基地のあり方や、新たな軍事施設建設の是非を問う住民投票が行われた場合、自衛隊員とその家族が、組織の意向に沿って投票する可能性は否定できません。このような「組織票」の存在は、純粋な市民一人ひとりの意思を反映すべき住民投票の公平性を著しく損なうものです。たとえ駐屯地の拡大に反対する市民の声が多数派であっても、組織票によって結果が覆されるような事態は、民主主義社会にとって由々しき事態と言わざるを得ません。
市民社会を蝕む心理的圧力
さらに、隊員数の増加は、地域の民意形成そのものにも影響をおよぼします。自衛隊は、地域住民との融和を図るとして、様々な行事やボランティア活動に参加していますが、その一方で、自衛隊の存在を地域社会に「正常化」させ、反対意見を言いにくい雰囲気を作り出す効果も持っています。市民が、自衛隊員に直接、基地反対の声を上げることが難しくなるという心理的な圧力は、民主主義社会の健全な議論を阻害するものです。
市民の監視と自衛隊の変革が求められる
これらの問題は、宮古警備隊長個人の資質や、特定の事案に限定されるものではありません。自衛隊が今後も国民の支持を得てその任務を全うしていくためには、今回の事案を他山の石とし、自らの組織文化と向き合う必要があります。隊員一人ひとりが、国民の「奉仕者」としての自覚を強く持ち、いかなる状況でも市民に対する敬意と対話の姿勢を忘れないこと。それが、この一連の事案から我々が学ぶべき最も重要な教訓です。
そして、我々市民もまた、自衛隊の活動が国民の税金で運営されていることを自覚し、その活動を監視し続ける必要があります。単なる軍事施設の是非だけでなく、自衛隊という組織が地域社会に与える影響、特に民主主義の根幹を揺るがす可能性について深く考察し、声を上げていくことが求められます。宮古島で起きていることは、日本の民主主義が試されていると言えるのではないでしょうか。
真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】20250411【デモクラシータイムス】
ご存じですか、「関西生コン」事件。3月には、組合の委員長に対して懲役10年の求刑がされていた事件で京都地裁で完全無罪判決が出ました。無罪判決を獲得した湯川委員長と弁護人をお呼びして、竹信三恵子が事件の真相と2018年からの一連の組合弾圧事件の背景を深堀します。 今でも、「関西生コン事件」は、先鋭な、あるいは乱暴な労働組合が強面の不法な交渉をして逮捕された事件、と思っておられる方も多いようです。しかしそうではありません。企業横断的な「産別組合」が憲法上の労働基本権を行使しただけで、正当な交渉や職場環境の改善運動だったから、強要や恐喝など刑事事件には当たらないものでした。裁判所の判断もこの点を明確にしています。では、なぜ暴力的組合の非行であるかのように喧伝され、関西全域の警察と検察が組織的に刑事事件化することになったのか、その大きな背景にも興味は尽きません。 tansaのサイトに組合員お一人お一人のインタビューも連載されています。ぜひ、どんな顔をもった、どんな人生を歩んできた人たちが、濡れ衣を着せられ逮捕勾留されて裁判の法廷に引き出されたのかも知っていただきたいと思います。
動画閲覧できます ココをクリック
増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国
勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合潰しが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
はじめに――増補にあたって
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
補章 反攻の始まり
増補版おわりに

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
お問い合わせはコチラ ココをクリック
ー 公判予定 ー
10月31日 国賠裁判 東京地裁(判決) | 15:00~ |
---|---|
11月18日 大津第2次事件 大阪高裁(判決) | 14:30~ |