「事業再開・承継の有無、組合員の取扱い等につき団交を行え」

12月12日、大阪府労働委員会が、加茂生コン不当労働行為事件で会社の団交拒否など不当労働行為を認め、組合の勝利命令を下した。命令主文は以下の通り。

1 会社は、組合が平成30年8月24日付け書面により申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 会社は、組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合が送付した平成29年11月18日付け書面及び同30年6月4日付け書面を受領しなかったこと(3号該当)。(2)貴組合が平成30年8月24日付け書面により行った団体交渉申入れに対し、正当な理由なく、応じなかったこと(2号該当)。
3 組合のその他の申立てを棄却する。

労働事件を警察がハイジャック

加茂生コン事件は、2017年10月、常用的な日々雇用の生コン運転手が組合加入して会社(村田建材)に団体交渉を申し入れたところ、団体交渉を拒否すると同時に、村田建材は別会社(村田商事。経営者は同じで所在地も村田建材と同じ敷地内)に吸収合併されて廃業したと称して、組合員を事実上解雇したことが発端。組合排除を目的にした不当労働行為だとして組合が大阪府労委に申し立てて証人尋問も行われ、昨年6月には和解調査が予定されていた。ところが調査前日の6月19日、京都府警組織犯罪対策課が「正社員として雇用するよう不当に要求した疑い」(京都新聞)などとして組合役員と組合員を5人、さらに生コン業者団体の理事長ら2人を強要未遂と恐喝未遂容疑で逮捕した。労働事件に警察が殴り込みをかけて刑事事件にしたという、一連の「関西生コン事件」のなかでもひときわ異様な事件だ。今回の府労委命令で、この弾圧の不当性がまたひとつ証明されたことになる。

大阪府労委命令の意義

府労委命令の意義は次の点にある。
第1に、会社は、組合員は労働者ではなく「請負」だとして団交拒否の口実にしたのだが、大阪府労委命令は、組合員が日雇い手帳を取得させられて2012年以降就労していたことをはじめ、厚労省指針(「労働組合法上の労働者性の判断基準について」)にもとづいて、組合員は労働組合法上の労働者だと明快に認定したことである。
第2に、団交拒否を不当労働行為と認定し、村田建材が村田商事に吸収された経緯や事業承継の有無、そして組合員の取扱いについて団体交渉を行えと命じたことにある。府労委命令は、会社が団体交渉の内容証明郵便を受け取り拒否することによって団体交渉を拒否したこと、また、組合が不当労働行為事件の準備書面において廃業の経緯や組合員の雇用の取扱いについて申し入れた団体交渉に応じなかったことを、これまた明快に不当労働行為と認定している。そして、村田商事による吸収合併によって「不当労働行為の責任は(存続する村田商事に)引き継がれる」のだから団交応諾義務は存続会社の村田商事に引き継がれるとして、存続会社の村田商事に対し、組合が申し入れた次の事項について団交を行えと命じた。
(1)村田建材を村田商事が吸収合併した経緯
(2)事業再開もしくは承継の有無
(3)組合員の今後の取扱い

組合の申し入れ、監視、宣伝活動は正当

なお、府労委命令はふたつの点で不当労働行為を認定しなかった。
ひとつは「就労証明書」。組合加入前は会社の証明印を異議なく押印していた「就労証明書」について加入後は証明を拒否した点については、拒否の実際の理由は組合員であることなのに、廃業を口実にしただけとまではいえないとした。もうひとつはバックペイを認めなかったこと。村田建材の廃業で事実上解雇されたことで組合員に経済的不利益が生じたことや、廃業したと称する村田建材のプラントがいまだに解体されていないことは認めつつも、同社の経営状況や廃業の経緯は判然とせず、組合員だけを就労させなかったのではないのだから、組合員であるが故の不利益取扱いとはいえないとしてバックペイは認めなかった。
このように、組合嫌悪の廃業を偽装と認めず、就労証明書拒否の理由に廃業を挙げたことも口実に過ぎないと認めなかった点で府労委命令には問題があるが、組合員が労働者であること、会社の団交拒否などの不当労働行為を明確に認定し、かつ組合員が再三会社を訪問し、会社の監視や組合の宣伝活動を行ったことも、正当性を逸脱するものとは認められないとした点で意義を持つものである。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ 
PDF


労働組合つぶしの大弾圧を許さない元旦行動 PDF

ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?(労働組合なのに…) 単行本 – 2019/1/30
連帯ユニオン、小谷野 毅、葛西 映子、安田 浩一、里見 和夫、永嶋 靖久(著)
内容紹介
レイシスト(差別主義者)を使って組合破壊をしかける協同組合、ストライキを「威力業務妨害」、職場のコンプライアンス違反の告発を「恐喝」、抗議を「強要」、組合活動を「組織犯罪」、労働組合を「組織犯罪集団」と言い換えて不当逮捕する警察。
いま、まっとうな労働運動に加えられている資本による攻撃と「共謀罪のリハーサル」ともいえる国家権力による弾圧の本質を明らかにする!
お問い合わせは、連帯ユニオンまで TEL:06(6583)5546 FAX:06(6582)6547
アマゾンでも購入することができます。
こちらから