労働者に生活時間はいらないのか!?
9.29 イオン幹線便 トラックドライバー 労災認定を退ける不当判決  

9月29日、名古屋地裁民事1部で、イオン幹線便・トラックドライバーが長時間労働により2013年に脳梗塞を発症した事件で、労災認定を退ける不当判決がありました。

長時間の待機時間は休憩にあたる

原告のドライバーは、スーパーイオンの倉庫間を10トントラックで配送する業務を行い、13時から15時に始業し、翌朝未明に終業するという業務を毎日繰り返していました。被災前6ヵ月の拘束時間は平均で月280時間、長い時は月323時間を超えていました。
ところが裁判官は、この最長の拘束時間323時間の時でさえ、時間外労働は50時間未満しか認めず、約100時間の待機時間は休憩としたのです。運送業界では、様々な荷物を混載する雑貨輸送の長時間の待機時間が社会的問題になっているにもかかわらず、裁判官はこれを全て休憩時間としたのです。驚くべき非常識です。

医学的な見解を踏みにじるもの

極めつけは、判決が次のように言っていることです。「原告が朝6:30~7:30に就寝していたとしても、13時の当日の業務連絡の電話があるまで、5時間30分から6時間30分の睡眠をとることができたというべき」と。裁判官は、労働者は昼食をとる必要も、洗面やトイレに行く必要も、着替える必要のないというのでしょうか??
現在の脳心臓疾患の労災認定基準の「連続した月80時間の残業、あるいは1ヵ月に100時間を超える残業」という考え方は、80時間の残業では1日6時間の睡眠を割り込み、100時間の残業では1日5時間の睡眠を割り込むことが、脳心臓疾患の危険を高めるという考え方が基本にあります(脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告P86~98)。そこでは、拘束時間と睡眠時間を除く労働者の生活時間は約5時間という生活調査の結果が前提になっています。今回の判決は、労働時間について認定基準を踏まえるかのように装っていますが、その内容は、国の認定基準の医学的な見解すら踏みにじるものなのです。

なお、裁判では、原処分庁(労基署)が「ドライバーにあらかじめ順番を伝えていたので、自分の積み込み時間を予想できた」という認定の根拠になった会社関係者の証言が、会社関係者自身の陳述書や証言で、全て覆っていました。にもかかわらず、裁判官は、長い時には100時間にも迫る郊外の物流拠点構内でのトラック待機について、「適宜、仮眠や休憩を取ることも可能」とこじつけました。裁判官は人間の生活を何と心得るのか!
私たちは、このような出鱈目な判決を許さず、控訴審を闘います。

愛知連帯ユニオン

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「関生事件」が揺るがす労働基本権
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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20
業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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