「組合活動を刑事事件にすることは許さない」
加茂生コン事件無罪判決でユニオンが共同声明

加茂生コン事件控訴審の無罪判決(12月13日大阪高裁第6刑事部・村山浩昭裁判長)を受けて、全国各地のユニオンが共同声明を出した。

呼びかけたのは、全国ユニオン(全国コミュニティ・ユニオン連合会、11団体)とコミュニティ・ユニオン全国ネットワーク(78 団体)の2者。秋田、山形、千葉、東京、神奈川、長野、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、愛媛の13都府県で活動する33のユニオンが賛同して12月24日、公表された。
共同声明は、「われわれユニオンは、解雇、残業代不払い、さまざまなハラスメントなどに直面した労働者の労働相談を受け付け、企業に団体交渉を申し入れ、不当労働行為に抗議し、問題解決を図ってきた。そのひとつひとつが加茂生コン事件のように刑事事件化されたならば、ユニオンの活動は成り立たなくなる。その意味で加茂生コン事件は、当事者である関生支部の団結権を侵害する弾圧事件であるだけではなく、われわれユニオンの活動の存立基盤をも揺るがしかねない事態だ」としたうえで、「組合排除の意図を隠さず確信犯的に不当労働行為を重ねた企業が免罪され、他方で、労働者の権利と雇用を守るために正当な組合活動を行った組合員が刑事犯とされる暴挙が許されていいはずはない」と判決を評価している。
そして、検察に対し、「大阪高裁の無罪判決を真摯に受け止め、最高裁への上告を放棄すべき」、さらに、「各裁判所は、大阪高裁判決に倣って、憲法28条労働基本権保障をふまえた公正な判断を下すべき」だとしている。

 

正当な労働組合活動を刑事事件にすることは許さない
加茂生コン事件・無罪判決についての共同声明

12月13日、大阪高等裁判所が、不当労働行為に抗議する組合活動が強要未遂罪にされた加茂生コン事件で、一審判決(京都地裁)を破棄し、組合員1人を無罪にするなどの実質的な組合勝訴判決を出した。
この事件は、加茂生コン(京都府)の常用的な日々雇用運転手が、2017年10月、関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)に加入して、正社員化や未払い賃金の支払いなどを要求して団体交渉を申し入れたところ、会社はタイムレコーダーを撤去して監視カメラを設置。運転手は労働者ではないとして団交をかたくなに拒否したうえ、組合員の子どもの保育園入所に必要な就労証明書への押印も、組合加入以前は毎年応じていたのに拒否して、会社を廃業すると通知して雇用を打ち切ったことに端を発している。このあからさまな不当労働行為に抗議した正当な活動が強要未遂にあたるとして、組合員らが2年後に逮捕され、京都地裁が2020年12月、組合員1人に懲役1年、もう1人に懲役8月、両者とも執行猶予3年という有罪判決を出した。大阪高裁判決はこれを覆して、1人に無罪、もう1人に罰金を命じたものである。
一審判決はまったく許しがたいものであった。日本には憲法28条労働基本権保障があり、労働組合法1条2項は正当な組合活動を刑事罰の対象としないとする刑事免責条項を明記している。それにもかかわらず、京都府警や京都地検は、「正社員として雇用することを不当に要求した」などと称して組合員らを逮捕・起訴した。このような暴挙がまかり通り、裁判所がそれを追認する信じがたい判決を出すようでは、労働基本権はないに等しい。
全国各地で活動するわれわれユニオンは、解雇、残業代不払い、さまざまなハラスメントなどに直面した労働者の労働相談を受け付け、企業に団体交渉を申し入れ、不当労働行為に抗議し、問題解決を図ってきた。そのひとつひとつが加茂生コン事件のように刑事事件化されたならば、ユニオンの活動は成り立たなくなる。その意味で加茂生コン事件は、当事者である関生支部の団結権を侵害する弾圧事件であるだけではなく、われわれユニオンの活動の存立基盤をも揺るがしかねない事態だとわれわれはとらえて支援し活動にとりくんできた。
組合排除の意図を隠さず確信犯的に不当労働行為を重ねた企業が免罪され、他方で、労働者の権利と雇用を守るために正当な組合活動を行った組合員が刑事犯とされる暴挙が許されていいはずはない。大阪高裁の無罪判決はあまりにも当然の司法判断である。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み)

1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。
そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。
業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。
迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 : プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】
竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011‐2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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