関西生コン・コンプライアンス事件 論告求刑 大津地裁
「8年の求刑には動じない。ひとつの試練だと思って、労働運動を続けていく」―湯川委員長
9月13日13:15から大津地裁において、関西生コン・コンプライアンス事件の6人の組合員と元組合員に対する論告求刑がありました。検察の3時間に及ぶ論告求刑では関生支部がアウトサイダー企業に対してコンプライアンス活動(違法行為摘発活動)を行った5事件を、「害悪を告知し、企業を意のままにすることで湖東協組と共謀して生コンの受注をしようとした恐喝」だとして、湯川委員長への8年をはじめ、4.5年、4年、3.5年、2.5年、1.5年と次々重刑を求刑しました。憲法に保障された労働組の行動権を否定するこの求刑に対し、裁判所前を行進する120名のデモ隊の怒りの声が法廷内にも鳴り響き、傍聴席からも鋭い糾弾が叩きつけられました。
関西―東海から120名の支援が結集
11:10から行われた傍聴券の抽選には、企業側の60名を凌駕する70名の支援が結集しました。
裁判が始まる前の昼休みには、裁判所前の路上を横断幕と幟を林立させて、「裁判所は憲法を守れ、労働運動を犯罪にするな」と呼び掛ける大街宣が行われました。主催者の京滋実行委員会、滋賀勝手連、東海の会、大阪実行委員会、若狭の原発を考える会、京都ユニオン、なかまユニオン、大阪全労協、全日建中央本部、地元争議当該の関生支部バード分会と発言が続きました。
論告求刑が3時間に及んだため、報告集会を延期し、16時からは120名が滋賀県教育会館から裁判所を周回し、大津駅前までのデモ行進を行いました。
労働組合の行動権、関生支部の産業政策運動を否定する論告を許すな!
検事は、雇用関係のないアウト企業への違法行為の摘発は組合員の労働条件と関係ないから、労組法の刑事免責は適用されないと言い放ちましたが、現実をみればこれがデタラメであることは明らかです。
*傍聴に並ぶ支援者と企業関係者
関西生コン支部は、中小企業である生コン会社を協同組合に加入することを促し、そうすることで大資本のセメントメーカーの原料値上げを許さず、ゼネコンの生コン買い叩きに対抗し、1リューベ1万7000円という生コンの適正価格を収受させてきました。これによってミキサードライバーの賃金原資を確保し、大企業や公務員に比肩する賃金と労働条件を実現し、中小企業へも利益をもたらしてきたのです。比較するに、隣接する名古屋地域はセメントメーカーと商社が生コン企業を支配、生コン価格は1リューベ1万円、結果、ミキサードライバーの賃金は関西地区の60%程度となっています。検事が口を極めて非難する関生支部のアウト企業対策や越境企業対策は、協同組合の団結を守り、賃金原資を確保して労働条件を守るための核心的な取り組みに他なりません。
検事は、刑事免責の対象となる争議は労務の不提供が基本となるとしましたが、現実の古今東西の労働争議は、ピケッティングやサポタージュ、座り込みや抗議行動、不買運動と様々な創意の下に行われてきました。最近ではドイツで「フラッシュモブ・スト」(不特定多数の一斉行動)が合憲だという判決も出ています。コンプライアンス活動は法秩序に則った最も穏健な労働組合活動です。
「国家権力の弾圧等と称して反省していない」―検事論告
検事は、コンプライアンス活動が2~3人で穏健に行われていたことについては「違法性を認識していて、法を潜脱しようとしていた」とし、組合員たちは「国家権力の弾圧だなどと称して反省がないから、長期に拘束して矯正する必要がある」として組合員たちへ8年~1.5年の重刑を求刑したのでした。
「検察は公益の代表者ではなく、大企業の代弁者」
大津駅前の報告集会では、永嶋弁護士はこの日の論告求刑について「検察は公益の代表者ではなく、大企業の代弁者のようであった」と印象を語り、太田弁護士は「前委員長に無罪判決が出ているタイヨー生コン事件部分の論告に典型的なように、今日の論告は証拠関係が極めて杜撰であった」と報告しました。
最後に関生支部の湯川委員長(写真上)が「求刑が重くなることは予想していた。8年の求刑には動じない。一つの試練だと思って運動を続けていく。コンプライアンス活動は労働組合として全く間違っていない。阪神大震災以来、自分たちの運ぶ生コンの質に責任を持とうとやってきた。先進国では認められている普通の活動だ」と関生支部の決意を淡々と語りました。
報告 愛知連帯ユニオン
池田香代子の世界を変える100人の働き人60人目 労働運動を〈犯罪〉にする国
「連帯ユニオン関西地区生コン支部」事件
ゲスト:竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。
目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ
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