和歌山広域協組事件・控訴審、第1回公判、12月12日、大阪高裁
連帯ユニオン・関生支部への権力弾圧をめぐる公判が12月12日、大阪高裁で開かれました。和歌山広域協組事件・控訴審の第1回公判です。
「和歌山広域協組事件とは」
和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、関生支部事務所を高級車で周回して、組合員らを脅すなどした行為に対して、2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。
「和歌山地裁では、全員有罪判決」
和歌山地裁では、武谷書記次長は、懲役1年4月。松村執行委員は、懲役1年、大原執行委員は、懲役10月。それぞれ3年の執行猶予の有罪判決が出されています。
「控訴趣意書を読み上げて主張」
公判は、人定質問に続いて、被告人とされている3人の弁護人から「控訴趣意書」が読み上げられました(要約したもの)。
久堀弁護士(松村執行委員の弁護人)は、構成要件に該当しないこと。威力業務妨害にあたらないことを述べ、「原判決は誤りである」と主張しました。
普門弁護士(大原執行委員の弁護人)は、共謀を認めた原判決は誤りであり、脅迫にはあたらない。強要未遂、威力業務妨害に重大な決定に誤りがあると主張。
中島弁護士(武谷書記次長の弁護人)は、違法性について、関生支部の産業別労働組合を原判決が認めていること、労組法1条2項の免責で違法性が阻却されること、検察官の答弁書に対する反論などを述べたあと、労働運動の歴史をふまえて社会権としての労働基本権が明文化された歴史経緯を無視するものであると主張しました。
「判決は、来年3月6日」
検察官答弁の陳述に続いて、弁護人からの事実取調請求(書証など)について、検察官は不同意、取調の必要なしと主張。検察官の意見を聞いた裁判官は、事実取調請求を却下しました。弁護人の異議も、裁判官は却下し、結審を宣言。判決を(来年)3月6日、14時30分と決定して閉廷しました。
「弁護人から控訴趣意書の解説」
武谷書記次長の司会で、公判後の集約集会。久堀弁護士は「控訴趣意書は要約して述べた。不誠実な対応をしたM氏が悪いと言うことであり、犯罪の構成要件にあたらない。学者の意見書や文献を証拠請求したが、採用されなかった。しかし、控訴審は事前に証拠を出せるので、裁判官は目を通している」。
普門弁護士は「事務所内も事務所外も威力業務妨害とされていることに違和感をもっている。原判決は、目的としては正当としているが有罪判決と矛盾しており、乱暴な議論だ」。
中島弁護士は「暴力団による労組弾圧に、産別労組を前面に出し、雇用関係のないところでも団交・行動ができると主張した。また、国家権力と暴力団が密接に関係して、労組つぶしを行った書籍を証拠として出した」などと、弁護人らは控訴趣意書を解説しました。
「どんな判決が出ても、運動のスタンスは変わらない」
中央本部・小谷野書記長からあいさつと「検察官はたちが悪い。原判決では目的が正当だと言っているのに、不当だと言っている。M氏が罪に問われないのはおかしい」など公判の感想が述べられました。そして、当事者の松村執行委員から、「どんな判決が出ても、運動のスタンスは変わらない」。大原執行委員からは「不当判決が出たとしても、運動で変えていく」と決意が表明されました。
「関生は、団結と産別運動で勝利するまで闘う!」
中島弁護士から、北海道のベトナム労働者のストライキが報告され、北海道のおみやげが当事者の3人に贈られました。
最後に、関生支部・湯川委員長からあいさつ。傍聴支援に駆けつけた仲間にお礼を述べたあと「来年3月は、大津、和歌山などを含めて3件の判決が出ることから、正念場だ。しかし、弾圧を受けても、運動スタイルは変わらない。権力の労組弾圧により、差別が激化し、戦争が起こる。関生支部は、団結と産別運動で勝利するまで闘う」と決意表明しました。
「傍聴支援の仲間に感謝します!」
寒いなか、遠方から、傍聴支援に駆けつけてくれた仲間に感謝します。関生支部は、資本と権力が一体となった弾圧を粉砕し、勝利するまで全力で闘います。引き続きのご支援をお願いします。
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。
目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ
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