関生支部の産業別労働運動⑨
「セメントメーカーによる協同組合支配」
1974年4月30日、公正取引委員会がセメントメーカーに対し、勧告を行いました。これは、セメントメーカー系列の生コン企業(直系工場ともいわる)によって協同組合が支配され、価格が操作されるという事態が横行したことによるものです。公正取引委員会の勧告によって、いったんは価格協定が破棄されました。
これに対して、1974年6月、セメントメーカーはセメント価格の20%大幅値上げを行いました。
公正取引委員会は、セメントメーカーによる協同組合支配に対し、1974年暮れに勧告するとともに、さらに1975年3月末、関西の6社のセメントメーカー系列の生コン企業に対して、「協同組合からの脱退」を勧告しました。
他方、生コン業界もセメントメーカーの圧迫の下で操業率が低下し、1974年から75年にかけて13の生コン工場が閉鎖に追い込まれました。
協同組合に加入していないアウトサイダーと呼ばれる生コン業者(専業)にとって事態は深刻でした。専業者は、一方では、セメントメーカーの価格カルテルの枠外の存在としてセメントメーカーから攻撃を受け、他方では、専業者は生コン価格の安売り競争の活動主体であり、そのためまた労働力を安く買い叩く主体でもあるのです。
「一面闘争・一面共闘」
1974年6月、関生支部は、灰久建材、大阪ライオン、北大阪菱光、サヤマ、新大阪生コン、大昭和運輸、和歌山生コン、および大阪運送の専業生コン業者8社と「会社は組合活動に対する支配介入は一切行わず、労働基本権に対する侵害行為に対しては協力共同してその排除に努める」、「8社は週休二日制の休日と祝祭日については一切買い上げをせず、労働者の希望を基本に週休二日制は連続休日を与え、祝祭日については賃金月度中に代休を与えるものとする」などを内容とする協定を締結しました。
この中小専業8社との協定締結は、関生支部が掲げた生コン業者の団体との一面共闘・一面闘争の一つの具体化でした。
1974年9月3日には、退職金を5年勤続で35万円(運輸関係平均は20万円前後)、10年勤続で100万円(同50万円前後)などを内容とする協定を23社と締結しました。これは集合取引による集合協定そのものです。
「政策闘争・政策活動」
1975年8月、関生支部は、関西の生コン製造および輸送の38社と政策懇談会を開催しました。関生支部は開催の趣旨について、「独占企業本位の政府の経済政策によって労働者は失業、中小企業は破綻、倒産に追い込まれている。労使は共通認識にたって、共通課題について政策一致をはかることが必要である」と説明しました。
より具体的には以下の事項を提起しました。この問題提起を実現するための活動を関生支部は以後「政策闘争」「政策活動」と呼び、毎年の春闘とは別に通年闘争として持続的に取り組んでいくことになったのです。
❶協同組合化-セメントメーカーとゼネコンに対する主体性、自主性を確立し、商社のピンハネをなくすこと。対等取引関係を確立し、業界として自立する条件を整備するため協同組合化に努力し、共同受注・共同販売の方向を検討すること。
❷労働条件の統一化-労働条件、賃金の統一化をはかり、共同雇用責任を明らかにすること。優先雇用、希望退職条件、雇用基金を確立すること。
❸不当労働行為の排除-労働基本権をはじめ諸法律を守り、一切の不当労働行為について共同してその排除に努めること。
❹ゼネコン・セメントメーカーの圧力の排除-組合(関生支部)は中小企業の実情を理解し、セメントメーカーやゼネコンの中小企業への圧力を排除することに努めること。
「セメントメーカー・各行政への申し入れ行動」
1975年11月、政策懇談会に参加した38社のうち24社からは一定程度前向きの回答はあったが、生コン業者24社と交渉するだけでは限界があるとし、関生支部は、セメントメーカーおよび各行政機関への取り組みを強めることにしました。
同年11月14日、関生支部は、大阪に事業所を持つセメントメーカー各社(三菱、住友、日本、大阪、ツルガ、徳山)及び行政(大阪府、兵庫県、京都府、各市)に対する申し入れ行動を行いました。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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ー 公判予定 ー
1月はありません |
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで