関生支部の産業別労働運動②
「関生支部の労働組合活動とその特徴」
憲法28条が企業別労働組合だけではなく、複数の企業に雇用されている労働者を組合員とする横断的な職業別労働組合や産業別労働組合の団結権等を保障していること、職業別労働組合や産業別労働組合が雇用関係のない企業に対しても、関連する企業に対し労働者の地位を向上させることを目的として団体交渉を行う権利を保障していることは、前回述べました。
関生支部は、生コンクリート製造関連の企業に雇用される労働者を組合員とする産業別労働組合ですが、労働者の地位の向上のために組合員が雇用されている企業に対して団体交渉を求めることはもちろん、組合員が雇用されていない企業であっても生コンクリート製造に関連する企業であって、労働者の地位の向上のために必要である限り、問題解決のために交渉を求めてきました。
これは、19世紀イギリスにおける職業別労働組合の行動と同様のものであり、憲法28条が保障する産業別労働組合に必然的に伴う行動そのものです。
関生支部の労働組合としての活動は、対象とする産業の産品が「生コンクリート」であること、生コンクリート製造業者が中小の企業であり、原材料の主な仕入れ先が大手企業のセメント会社であり、産品の販売先が大手ゼネコンであること等によって規定されています。これが関生支部の労働組合としての活動を特徴づけています。
「生コンクリート・コンクリートの特質」
コンクリートは砂、砂利、水などをセメントで凝固させた硬化物です。凝固する前の状態のものが生コンクリート(生コン)であり、生コンは時間の経過に凝固し、硬化物であるコンクリートになります。
セメントは、石灰石、粘土、珪石などを高温で焼成し粉砕したものであり、水や液剤になどにより硬化する粉体です。
セメントの主要成分は生石灰、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化鉄、であり、水と化学反応を起こしてガラス質の堅い結晶が生成され、これが砂や砂利と一体になって固まります。
固まる強度は「水セメント比」で決まります。水の比率がある程度まで低ければ強度が高まります。しかし、水の比率が低ければ流動性が低くなり取り扱いが困難となります。このため、生コンの運搬に際し、取り扱いを楽にするため「加水」などの品質に問題を残す問題のある行為が行われることがありました。
水が多いほど、生成される結晶が粗大で疎な状態になるとともに、空隙の多い脆弱な組織のコンクリートになり、強度、耐久性ともに劣悪で、ひび割れが生じやすいコンクリートになるのです。
「生コンの製造、運搬、打設」
生コン工場のバッチャープラントで製造されるものをレディミクストコンクリートといい、生コン工場は、セメントサイロ、骨材サイロ、混和剤タンク、バッチャープラントなどから構成されます。計量設備によって、注文された品質を実現する配合比の各材料をバッチャープラントの練り混ぜ設備(ミキサー)に投入し、練り混ぜた後、積み込みホッパから、トラックアジテータ(ミキサー車、生コン車)のミキサドラムを回転し、混合しながら生コンを現場に運送します。凝固しないようにするため、90分以内に現場に到着しなければなりません(JIS)。現場に運搬された生コンは、ポンプ車のポンプの圧力によって、管を通して打ち込み箇所(型枠)に流し込まれます。
「生コンの品質」
コンクリートは用途によって様々な品質が要求されます。建築物に使用されるコンクリートは比較的やわらかく流動性があり(スランプ18~21㎝)、骨材寸法が小さいものが使用されます。スランプとは、凝固前の生コンの流動性を示す値です。たとえばスランプ18㎝であればかなりやわらかく、8㎝であれば硬いということになります。
生コンは生産者によって、製造時(生コン工場)、荷卸し時(荷卸し地点)に検査され、購入者によって受け入れ検査が行われます。
「コンクリートの劣化要因」
コンクリートの劣化は、強度劣化、ひび割れ、表面劣化などの現象になって現れます。強度劣化の原因は配合や施工上の問題によるもの、ひび割れは乾燥収縮、温度変化の繰り返しのほか施工不良などによるもの、表面劣化は汚れなどです。
現場への搬出時に作業を容易にする目的で行う不法な加水によって強度や耐久性が不足し、表面の剥離が生じるという問題もあります。山陽新幹線の高架橋が、東名高速道路のコンクリートに比べて6倍の速度で老化が進行しているとの報告もあります。
全国生コンクリート工業組合は、1996年から生コン品質監査制度を発足させています。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たちこの映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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ー 公判予定 ー
6月 5日 フジタビラ事件 大津地裁 | 9:45~ |
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。
目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ
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