関生支部の産業別労働運動③
「生コン産業および関連産業」
生コンの製造方法が日本に導入されたのは1949年以降です。1959年に生コンの品質基準が日本工業規格(JIS)として制定され、普及するようになりました。
JISは日本工業規格と呼ばれてきましたが、産業標準化法の改正により、2019年7月1日からは「日本産業規格」と呼ばれるようになりました。
日本の2018年度の生コン生産は、85,481千立方メートル。国内のセメントの全量販売4,250万トンのうち、生コンとして使用されたものは3002万トンで、70.6%を占めています。
過去最大の生産量は1990年度の197,997千立方メートルでした。2018年度は85,481千立方メートルで1990年度の43%となっています。
生コンの主たる原料であるセメントは、セメント製造者から購入することになります。セメント工場は、全国に分布しますが、特に主原料の石灰石資源が豊富な北九州地区、山口県のほか、国内最大の消費地を抱える関東地区に多く立地しています。
2019年度現在、企業数17社、30工場あり、クリンカ(セメントの中間製品)の生産能力は年間54,589千トンです。
セメントメーカーは、住友大阪セメント㈱、宇部三菱セメント㈱、太平洋セメント㈱など大企業の募占状況にあります。
生コンの需用者は建設業で、建設業には建築工事と土木工事があります。建築事業を営む企業は、中小企業から大企業までありますが、そのなかでは総合建設業、通称「ゼネコン」と呼ばれる企業が業界において支配力を有しています。
2018年度において単独売り上げが1兆円を超えるスーパーゼネコンとしては、鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組、竹中工務店があります。また売上高3000億円を超える大手ゼネコンとして、長谷工コーポレーション、フジタ、戸田建設、五洋建設、前田建設工業、安藤ハザマ、三井住友建設、熊谷組、西松建設があります。売上高1500億円を超える中堅ゼネコンとしては、東急建設、奥村組、鴻池組などがあります。
「バラセメント輸送、生コン輸送業者、ポンプ圧送業者」
バラセメントを輸送する業者は中小企業です。運賃を上げることはバラセメント業者の要求です。1996年10月、近畿バラセメント輸送協同組合(近バラ協)が設立されました。2000年、近バラ協は中小企業事業等協同組合法に基づき、取引条件に関する団体協約締結のための団体交渉をセメントメーカーに申し入れましたが、拒否されたため運輸省(当時)に調停を申請しました。懇談会形式で協議しましたが膠着状態となったことから、労働組合がSS(セメントサービスステーション、セメントの積み込み場)へ一斉ストライキを行うことによって状況を打開したのです。
労働組合の要求は、❶共同雇用保障(連帯雇用保障)❷運賃試算表による適正な運賃の収受❸SSの共同使用・効率化(タンクローリーの効率的使用)❹先方引取車(セメントメーカー専属の業者以外の傭車)対策と輸送車両そのものの台数規制(運賃対策)❺共同購入(タイヤ、燃料など)でした。
生コンを現場に輸送する業者は中小企業であり、近畿地区の輸送業者は近畿生コン輸送協同組合(1996年に結成された近畿生コンクリート貨物輸送事業協同組合の後身)を結成しました。
生コンを現場において打設箇所に圧送する業者は中小企業であり、大阪地区では、大阪生コンクリート圧送協同組合が結成されています。
「大企業の谷間で翻弄される生コン業者」
大多数が中小企業の生コン製造業者は、形の上では独立していますが、実態はゼネコンとセメントという大企業の谷間で、つねに両者の強い影響力を受けています。
セメントの購入と生コンの販売というもっとも重要な取引において、価格・契約形態など主要な取引条件をセメントメーカーに対しても、ゼネコンに対しても、個々の生コン業者が対等な立場で決定することはできません。生コン産業はつねに、セメントメーカーの拡販政策とゼネコンの買い叩きに翻弄され、両者の利益追求のための調整弁となってきた歴史があり、今もそのような状況にあります。
次回は、生コン業者の組織「協同組合について」を記します。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで。