関生支部の産業別労働運動④

「生コン製造業者の組織、協同組合について」

大多数が中小企業の生コン製造業者は、形の上では独立していますが、実態はゼネコンとセメントという大企業の谷間で、つねに両者の強い影響力を受けています。

セメントの購入と生コンの販売という重要な取引において、価格・契約形態など主要な取引条件をセメントメーカーやゼネコンに対して、個々の生コン業者が対等な立場で決定することはできません。生コン産業は、常にセメントメーカーの拡販政策とゼネコンの買い叩きに翻弄され、両者の利益追求のための調整弁となってきた歴史があり、今もその様な状況にあります。

「対等取引求め協同組合設立」

そこで、生コン業者は、対等な立場で取引を行うために団体を結成することになりました。ウェッブ夫妻※の「産業民主制論」にある「雇主の連合」すなわち「協同組合」の結成が必要になります。

現在、生コン業者は、都道府県単位の業者の組織である工業組合を結成し、また、地域的な業者の組織である協同組合を結成しています。

工業組合は、中小企業団体の組織に関する法律に基づく商工組合であり、業界全体の発展向上と技術面の指導事業や共同事業を行っています。同法17条は、商工組合の事業は、商工組合の資格として定款で定められている事業(資格事業)に関する指導及び教育、情報又は資料の収集及び提供等の事業を行うものとするとしています。

協同組合は、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合であり、主として共同販売等の経済活動にかかる共同事業を行っています。

同法7条は一定の要件を満たす事業協同組合については、私的独占禁止法22条1号の要件を備える組合とみなすとし、原則として私的独占禁止法は適用されません。事業協同組合は、生産、加工、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同事業を行うとされ(中小企業等協同組合法9条の2第1項1号等)、団体協約を締結することができるとされています(同条第1項6号)。

「団体協約を認めた趣旨は、中小企業者は、社会的経済的に弱い立場に立たされており、取引に当たっては、相手方との力関係から、その時その場において種々の不利な条件を付されることが多く、特に、中小企業が組合を組織し、歩調をそろえて事業活動を行おうとする場合において、これを乱されることは組合の運営上著しい支障をきたし、したがって、法は組合が組合員の競争力を補強するための手段として団体協約締結を認めたものである(中小企業等協同組合法逐条解説)」。

「協同組合法制度の歴史」

中小企業等協同組合法は、日本国憲法制定後の1949年に制定されたものですが、その制定は、敗戦直後から1947年頃までのGHQの占領政策が財閥解体(1945年11月6日の「持株会社の解体に関する覚書」)等の経済民主化政策や、窮乏化する中小企業の要求によるものでした。しかし、他方では1947年に入る頃からの統制経済の復活(基幹産業への資金・資材等を集中的に投入する1946年12月の「傾斜生産方式」の導入等)の影響によりGHQの占領政策が経済民主主義の強化から、アメリカ資本主義経済に資する日本の大企業保護育成へという質的転換もあって、制定された中小企業等協同組合法は中小企業問題を解決するための抜本的手段にはなりませんでした。「団体協約」の締結についても、それが「団体交渉」の権限なくしては実効性がなかったのです。

政府は、中小企業の深刻な窮乏化に直面し、1947年2月25日に「中小企業振興対策」を閣議決定し、1948年8月1日、中小企業庁を設置しました。そのうえで、1949年6月に中小企業等協同組合法を成立させたのです。

当時、中小企業庁は、「中小企業における労働はきわめて前近代的な低位な状態にあり、しかも日本経済全体における困難の『しわ』がここへ寄せられ、ここに集約的に表現されているところに深刻な問題をもっている」という認識も示していました。この認識は産業民主正論の認識と共通しています。

※ウェッブ夫妻、1884年にフェアビアン協会の創設にあたったイギリスの社会運動家夫婦。社会保障政策の実現に尽くし、労働党創設にも加わった。

次回も、生コン業者の組織「協同組合について」を記します。

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性

A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
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巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。

[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)

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お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで。