【大阪スト2次事件控訴審】控訴棄却の不当判決 2/21 大阪高裁

⚫重罰判決の正当化に腐心

2月21日、大阪ストライキ2次事件控訴審の判決が出された(大阪高裁第4刑事部宮崎英一裁判長)。
「本件各控訴をいずれも棄却する」が判決主文。西山執行委員と柳元副委員長に対する懲役2年6月、執行猶予5年という一審判決が見直されることはなかった。
控訴審判決の特徴は、労働法の不勉強ぶりを手厳しく批判された一審判決を修正するふりをしつつ、重罰ありきの一審判決を正当化するために腐心したことにある。

⚫産別運動の無知・無理解

一審判決はたしかにひどかった。宇部三菱大阪港SSの専属輸送業者である植田組などに「関生支部の組合員は存在しない」、だから、「関生支部との関係で争議行為の対象となる使用者とはいえないことに照らせば、組合員らの行為が正当行為としてその違法性が阻却される余地がない」として、関生支部の行動が産業別労働組合の団体行動であることを無視して、あたかも無関係な第三者に対して関生支部が押しかけて業務妨害を企てた行為であるかのようにとらえるものだったからだ。企業内労働組合の活動を念頭において産業別労働組合の団体行動を敵視したものと言ってもいい。労働法学者やベテランの労働弁護士から、「産業別労働運動の無知・無理解」「労働組合の団体行動としての正当性判断が欠落している」などとする厳しい批判が集まった。

⚫産別運動に理解を示すふりしながら

控訴審判決はこうした批判を意識して、「労働組合が労働条件の改善を目的として行う団体行動である限りは、直接労使関係に立つ者の間の団体交渉に関係する行為でなくとも、憲法 28条の保障の対象に含まれるというべきである。」と修正して、産別運動に理解を示すポーズをとってみせた。
しかし、「そこには自ずと限界があるべきであって、そのような団体行動を受ける者の有する権利・利益を不当に侵害することは許されないと解するのが相当であるから、これを行う主体、目的、態様等の諸般の事情を考慮して、社会通念上相当と認められる行為に限り、その正当性が肯定され、違法性が阻却されうる」。
ところが、関生支部の行動は「輸送運賃を上げることによって、関生支部組合員を含む生コン業界で働く労働者の労働条件を改善しようとする目的があったことは認められるものの」と、ここでも産別運動としての目的に理解を示すふりをしつつ、しかし、「関生支部組合員らの行為は、到底平穏なものとはいえ」ず、「非組合員や同人らの属する企業の権利・利益を侵害することはもとより、非組合員に対する説得活動等としては大きく限度を超えているといわざるをえない。」と断じた。さらに、植田組関係者が事前に周到に準備し、「関生支部組合員らの行動に対抗措置を講じたりすることは、企業活動をする者としていわば当然のことであ って、そのような植田組関係者の行動を踏まえてみたとしても、関生支部組合員らの活動は、社会通念上相当と認められる限度を超えているといわざるを得ず、違法性が阻却されるものではない。」
ひとことで言えば、産別組合の団体行動だとはいっても、キミたちは限度を超えてやり過ぎなんだよ、ということだ。

⚫「自作自演の業務妨害」

だが、この事実認定と判断には強い疑問を抱かざるをえない。
このニュースの読者の方々はご記憶のことだろうから思い返してほしい。
そもそも大阪港SS事件の場合、セメントメーカー宇部三菱と植田組は、関生支部の説得活動を威力業務妨害事件に仕立て上げる方策を事前に打ち合わせていた。これを判決は「企業活動をする者として当然のこと」と言っているのだが、その行為の実態は当然のことだったのか。
2017年12月12日当日、両社の管理職は、隣接する関西宇部(宇部興産の子会社)の社員まで動員して大阪港SS入門口に勢揃いした。そして、バラセメント車輌がやってくると、「車輌が通行します」などと書かれた数本のプラカードを持ち、バラセメント車の前に自分たちが立ちはだかって進行を妨げたうえで、「業務妨害はやめてください」などと連呼しつつ、ビラを渡したり話しかけようとする組合員を寄せ付けなかった。
検察は、この様子を撮影した監視カメラや数台のビデオの動画を証拠として提出し、公判で動画を再生して業務妨害だと言い張った。
しかし、弁護団は会社側証人に対する反対尋問で、車輌の前に立ちはだかっていたのは組合員ではなく会社側の管理職5~ 10 人だったこと、また、当日はセメントの注文がほとんどなかったことなどを認めさせていた。(2019年5月28日付「ニュース No7」。また、ジャーナリストの北健一さん「警察のストーリーを検証する」p50~55、連帯ユニオン編『労働組合やめろって警察に言われたんだけどそれってどうなの?』所収)

⚫自作自演も当然のことなのか?

ところが、それにもかかわらず、一審判決は「輸送業務を強烈に阻害」と認定したのだった。おそらく事実関係を詳細には検討せぬままなされた杜撰(ずさん)な認定というほかない。
「おそらく」というのは、動画が再生されたり、反対尋問がなされたのは、西山さんらが「指示役」とされた今回の2次事件の公判ではなく、現場で行動した七牟礼副委員長ら「現場組」の1次事件の公判でのことだったからで、2次事件の一審裁判官たちがこの1次事件の動画や弁護団の反対尋問までていねいに検討したかどうかには疑問があるからだ。
ところが、控訴審判決は、一審判決のこの「強烈に阻害」という事実認定と判断をあくまで正当化することに腐心したからなのだろう。植田組らの行為は「企業活動をする者として当然のこと」との詭弁を弄して、自作自演の業務妨害劇だったことにはあえて目をつぶり、関生支部の行動は「説得活動等としては大きく限度を超えていた」と決めつけたのである。

⚫中央大阪生コンの関生支部排除も正当化

中央大阪生コン事件の場合もおなじだ。同社は、ストライキを奇貨として、関生支部組合員を排除するために、近酸運輸との専属輸送契約を打ち切って工場からミキサー車を退去させた。これは立派な組合つぶしの不当労働行為だ。これに抗議する関生支部の行動は、それこそ「当然のこと」というほかないはずだ。「使用者でもなく、争議行為の対象ではない、単なる取引先企業に対する就労要求や抗議活動にすぎないところ」という形式論によって中央大阪生コンの不当な意図と行為の責任を免罪する一方で、「関生支部組合員の行為は到底平穏とはいえず」、「社会通念上相当と認められる限度を超えているといわざるを得ず、違法性が阻却されるものではない」としたのである。

⚫上告して争う

量刑の不当性についてはあらためて言うまでもない。判決には産業別労働運動とストライキに対する裁判所の敵意さえ垣間見えると言ったらいいすぎだろうか。
これはすべての労働組合の団結権保障にかかわるたたかい。不当判決を覆すため、最高裁に上告して争う方針だ。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

デモクラシータイムス 〈 2022.01.11 〉
池田香代子の世界を変える100人の働き人60人目
労働運動を〈犯罪〉にする国「連帯ユニオン関西地区生コン支部」事件
ゲスト:竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)
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関西生コン事件ニュース No.70 ココをクリック
関西生コン事件ニュース No.71 ココをクリック
2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み)

1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。
そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。
業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。
迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 : プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】
竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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