吉田生コン闘争、地位確認控訴審「久堀弁護士の解説」

㈱吉田生コンクリートによるY組合員に対する解雇事件で、控訴審においても解雇無効の勝利判決を獲得したため、以下報告する(担当は中島光孝弁護士、久堀文)。

2019年4月、吉田生コンは、関生支部組合員全員に対し事前協議同意約款を無視して退職勧奨を行うとともに、退職勧奨に応じなかったY組合員とF組合員を懲戒解雇とした。その後、Y組合員は加茂生コン刑事事件で逮捕、勾留、起訴された。
2020年3月、奈良地裁が、吉田生コンに両名の賃金仮払いを命じると、同年7月になって、大阪広域協の顧問弁護士らが会社代理人に就任した。すると、同年9月、吉田生コンは、刑事事件を理由に吉田さんを予備的懲戒解雇とする一方、F組合員に対する懲戒解雇は撤回して就業を命じ、F組合員は会社に復職した。
2020年12月、京都地裁はY組合員に有罪の不当判決を下したが、2021年12月、大阪高裁がY組合員に逆転無罪判決を言い渡した。
2022年10月、奈良地裁は、第1次解雇及び予備的解雇はいずれも吉田生コンが権利を濫用したものとして無効であるとの判決を下した。吉田生コンは判決を不服として即日控訴し、裁判闘争は大阪高裁に移った。

「一審判決を支持する」

2023年6月29日、大阪高等裁判所第8民事部(森崎英二裁判長裁判官、渡部佳寿子裁判官、岩井一真裁判官)は、吉田生コンの控訴を棄却する判決を下した。高裁判決は、第1次解雇及び予備的解雇を無効とした地裁判決の判断を支持するとともに、Y組合員の加茂生コンにおける行為が、就業規則上の解雇事由である「企業外非行行為により、会社の名誉・信用を著しく損ない、又は会社に重大な損害を及ぼした場合、その他企業外非行行為により、企業秩序が著しく乱された場合で、その行為態様が悪質な場合」「勤務態度が不良」「従業員としての適格性がないとき」という要件にも該当しないと、さらに一歩踏み込んだ判断をした。また、Y組合員の加茂生コンでの行為が「組合活動として許容される限度を明らかに超えるとまでは認められ」ないとして、これを理由とする予備的解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとして無効であると判断した。さらに、吉田生コンが、Y組合員逮捕、勾留、起訴によって会社の社会的信用が低下したなどと縷々主張したことについて、Y組合員は「当該刑事事件において無罪判決を受けている」のであるから、これをY組合員の「責任とすることはできない」として、会社の主張を一蹴した。
吉田生コンは上告を断念したため、解雇無効に関する吉田生コンの敗訴は確定した。Y組合員は訴訟係属中に定年に達したため、従前と同一の労働条件での再雇用を求め、団体交渉はすでに始まっている。

「妥協せず闘いを継続する」

他方、高裁が、Y組合員の解雇に対する慰謝料や解雇期間中の残業代や賞与のバックペイを認めなかった点につき、関生支部と吉田さんは、この闘いを妥協して終わらせることなく最後まで戦い抜く決意をし、最高裁に上告した。
労働委員会闘争も大詰めを迎えている。吉田生コンは、F組合員を定年後再雇用するにあたり、長年従事してきたミキサー車運転業務から外し、屋外炎天下でのブロック製造業務にただ1人専業で従事させるという嫌がらせを続けている。

「これまでの支援に感謝」

不当解雇、不当逮捕からのこの4年間、私自身、悔し涙を流したことは一度や二度ではないが、Y組合員、F組合員の決して諦めない姿に何度も励まされた。これまで裁判の傍聴支援をして下さった皆様にも、この場をお借りして感謝申し上げたい。
Y組合員、F組合員がミキサー車乗務に2人揃って復帰するその日まで、微力ながらともに闘いたい。

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。
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2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
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待望の新刊
検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性

A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。

[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)

割引価格あり。

お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで。