関生支部の産業別労働運動⑪

「産業別労働組合としての活動の展開」

関生支部の活動は、典型的な産業別労働組合の活動でした。交渉の相手は組合員が雇用されている生コン企業だけではありません。雇用関係の有無にかかわらず生コン企業と取引関係のある大企業も交渉相手であり、また、生コン製造、生コン輸送、生コン打設にかかわる監督官庁等も要請活動の相手です。
これは、ウェッブ夫妻「産業民主制論」が対象とする19世紀、20世紀のイギリスの職業別労働組合の「集合取引」に該当します。現代日本にあっては「団体交渉」という用語は企業別労働組合が雇用関係のある企業との1労働組合と1企業との交渉というイメージが強いのですが、憲法28条が保障する「団体交渉」は上記意味の「集合取引」にあたります。職業別あるいは産業別に結集した労働者は、職業別あるいは産業別に、労働力の安売り競争を防止し、賃金等の労働条件を向上させるため雇用主だけでなく、雇用主の取引相手たる主として大企業とも交渉を行って雇用主と取引先企業(大企業)との取引条件を改善させ、賃金等の労働条件の向上をはかる経済的基盤の確立を図るのです。
一般に企業は、憲法22条の営業の自由を保障され、仕入れ、または販売において取引を行いますが、どこから仕入れ、どこに販売するかは、企業の自由です。自企業に必要な製品の製造元には販売してもらうためあらゆる手段を使って交渉し、また、自企業の製品を販売するためあらゆる手段を使って卸売商人や小売商人に営業活動を行います。製造元が販売する義務はないし、また、卸売商人や小売商人がその製品を購入する義務もありません。そのような義務がない製造元や卸売商人や小売商人に対し、義務がなくても販売させ、購入させる活動を企業は日々行っているのです。
複数の企業が連合して、独占目的のため、価格や生産計画や販売地域等について協定(カルテル)を結ぶことがあります。このようなカルテルは、健全で公正な競争状態の維持を阻害するものとして、世界各国の法令で禁止されています(日本では独占禁止法で規制)。
これに対し、労働基本権は憲法25条に現れている生存権を実効的に保障するための具体的権利です。企業においては一定の集団的な取引活動(カルテル)は、経済活動の自由を実質的に保障するために禁止されますが、労働者の団体が労働力を安く売らないための集団的な活動は、労働者の生存と地位の向上のために憲法上保障されています。関生支部が行ってきた雇用企業や大企業との交渉は、労働者の生存と地位の向上を目的とするものであり、憲法28条が保障するところのものなのです。
生コンという製造現場から使用現場まで90分以内という特殊な商品を扱う生コン産業においては、労働者が全国的に結集しなくても、地域的に結集すれば、それによって雇用企業だけでなく、雇用企業と取引関係にある大企業との交渉によって、労働者の生存と地位の向上に結びつく実効的な「取引」を行うことが可能なのです。それは憲法28条によって保障されるものですが、関生支部は上述した意味での取引、産業民主制論でいう「集合取引」、現代日本でいうところの「団体交渉」を追及し、実際に成果を上げることができたのです。

「1981年春闘、工業組合との協定内容」

1981年春闘では、関生支部ら3つの労働組合(関生支部、全港湾、同盟)が関西生コン産業政策委員会を結成して交渉主体となり、他方、大阪兵庫工業組合が、生コン業者側を代表する交渉主体となりました。その結果、大阪兵庫工業組合が、連帯して雇用責任を負うことを確認しました。
1981年3月12日に成立した工業組合との協定の内容は、❶工業組合との団交は労組法に基づく交渉権の行使である、❷合意事項は労働協約として、工業組合加入企業、生コン輸送業、関係労働者に適用すること、❸交渉事項は雇用・労働条件・福祉・合理化などの事項とすること、❹共同交渉が原則であり個別交渉はしないことなどでした。

― お知らせ ―              
MBSドキュメンタリー映像24
労組と弾圧~関西生コン事件を考える~(仮)
3月31日深夜0:50~放送 ココをクリック

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
お問い合わせはコチラ ココをクリック

関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。
動画 動画閲覧できます ココをクリック

ー 公判予定 ー

3月はありません

関西生コン事件ニュース No.98ココをクリック
関西生コン事件ニュース No.97ココをクリック

関連動画 「関西生コン事件」報告集会 ココをクリック