「持続可能性に配慮した調達コード」に係る通報(2回目)・住友大阪セメント大阪支店
関生支部は2025年8月19日、万博協会(咲洲庁舎)に「持続可能性に配慮した調達コードに係わる通報」(2回目)を行いました。
「住友大阪セメント大阪支店は取引先の責任を果たすべき」
住友大阪セメント株式会社大阪支店の取引先である生コン製造販売会社の数社が、大阪府労働委員会や東京・中央労働委員会から労働組合法違反の「不当労働行為と認定」され「救済命令」が出されています。
国連・ビジネスと人権の指導原則や経産省・人権尊重に責任あるサプライチェーンガイドラインに基づき、住友大阪セメント株式会社大阪支店は取引先の責任において指導をおこなうべきではないでしょうか。
「2回目の通報」
前回の1回目(25年1月23日付け)では、「博覧会協会が設置する通報受付事務局では処理手続を開始しない決定がなされたことをお伝えする」との回答でした。
本件について、博覧会協会が設置する通報受付事務局では処理手続を開始しない決定がされたことは残念でした。しかし、博覧会協会は、国連ビジネスと人権に関する指導原則とSDGsを実践し、調達物品等にかかるサプライチェーンの情報収集やゼネコン8社及び民間パビリオン運営主体14社に対し情報開示依頼して回答を得るなど、適切なプロセスを経て真摯に取り組んだことは評価できます。
7回にわたる通報に面談も行うなど真摯に対応してくれた、持続可能性に配慮した調達コードの担当者に感謝します。
「処理手続きの開始を」
今回、2回目となる「持続可能性に配慮した調達コード」についても、博覧会協会が真摯に取り組むことでしょう。そして、処理手続きを開始することを願っています。
※通報文書(一部省略)
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
持続可能性に配慮した調達コードに係わる通報
「通報フォーム」
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会様
1.通報者
(1)全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部・武谷新吾
(2)大阪府大阪市西区川口2-4-28
(3)090-1075-3398
(4)web@rentai-union.com
(5)処理過程において匿名を希望するか? いいえ。
2.被通報者に関する情報
(1)住友大阪セメント株式会社大阪支店
(2)住友大阪セメント株式会社大阪支店の所在地
→大阪市北区堂島浜1-4-4 アクア堂島東館11階
(3)通報者と被通報者との関係→ステークホルダー
(4)万博会場に建設資材・生コンクリートを納入。その生コンクリートの原料(セメント)が使用されている事実
→9社(※社名は省略)
3.博覧会協会又はパビリオン運営主体等が調達する調達物品等を特定するに足る情報
(1)生コンクリート、セメント
(2)製造や納入の時期、ロット番号等→不明
(3)大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域生コン協組)について。
大阪広域生コン協組(大阪市住之江区南港北)は、中小企業等協同組合法に基づく協同組合である。大阪府、兵庫県の生コンクリートの製造販売を生業とする中小企業が加盟しており、大阪、兵庫の164社、189工場が構成している。
大阪広域生コン協組に加盟していない生コン企業は、わずかに4社のみであり、大阪府、兵庫県では100%近い組織率となっている。
大阪広域生コン協組に加盟している生コン製造企業は、生コンの原料であるセメントをセメントメーカー(住友大阪セメント、太平洋セメント、宇部三菱セメント、麻生セメントなど)から仕入れている。
大阪広域生コン協組と全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(関生支部)は、2018年を起点に対立している関係にある。
大阪広域生コン協組が、2018年1月23日付けで加盟企業に発出した「連帯労組と接触・面談の禁止」と題する書面(別添資料)によって、関生支部の組合員が所属する大阪広域生コン協組に加盟する企業と労使争議が頻発した。事案は、組合員の解雇、雇い止め、組合脱退強要などである。
関生支部は、大阪広域生コン協組加盟企業が行った解雇や雇い止めなどについて、大阪府労働委員会に不当労働行為救済の申立を行った。
大阪府労働委員会は、ナニワ生コン社、藤原生コン運送社、五一社、タイコー社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社を不当労働行為と認定し、救済命令を出した。救済命令を出された企業は、いずれも大阪広域生コン協組加盟企業である。
そして、藤原生コン運送社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は、住友大阪セメント株式会社大阪支店の取引先企業である。
上述した企業は、大阪府労働委員会から出された救済命令を履行していない状態が続いていた。
2018年1月22日、大阪市西区に所在する関生支部の組合事務所が襲撃され、暴力団関係者らが関生支部の組合員に暴行するという事件が起こった。関生支部組合事務所襲撃には、大阪広域生コン協組の理事長や副理事長、職員らが参加していた。
同年1月25日には、和歌山県内で関生支部組合員の宣伝活動を妨害し、車両(宣伝カー)を損壊するという事件が起こった。この事件の現場にも、大阪広域生コン協組の理事長や副理事長、職員らが参加しており、一人の副理事長は現場に駆けつけた警察官を押しのける行為を働いていた。
また、関生支部は2018年7月ころから、ストライキやコンプライアンス活動、抗議行動などの正当な組合活動に対して、大阪府警、滋賀県警、京都府警、和歌山県警から、威力業務妨害罪や強要未遂罪などの不当な刑事弾圧を受けた。
和歌山事件は2023年3月6日の大阪高裁判決で3人の無罪が確定している。滋賀事件は、2024年2月6日の大津地裁判決で7人の無罪が確定している。2025年4月17日の大阪高裁判決(最高裁による高裁差し戻し審)でも1人の無罪が確定している。2025年2月には、京都地裁が2人の無罪判決を言い渡した(検察側が控訴)。
4.現実に生じた負の影響又は将来発生する相当程度の蓋然性があると考えられる負の影響の具体的内容
(1)都道府県労働委員会の救済命令の履行義務。
大阪高裁判決(2007年9月26日付、平成18年(ネ)第1211号南労会事件)。
「被控訴人(南労会)は、本件救済命令及び中労委の履行勧告を無視し、本件団交拒否に及んでいるものである。もとより、都道府県労働委員会の救済命令に関しては、これに異を唱えて再審査を申立て、或いは救済命令の取消訴訟を提起することは控訴人の補的権利である。しかしながら、救済命令の実効性の確保という観点から設けられた労働組合法27条の15第1項ただし書き及び行政事件訴訟法25条第1項によれば、都道府県労働委員会の救済命令に関しては、再審査や取消訴訟の提起に命令の効力を停止する効果はない。従って、命令を受けた当事者がその命令に従うべきことは、命令に関しての履行確保規定や命令違反に対する制裁規定の有無にかかわらず、不当労働行為救済制度として定められた労働組合法上の義務であると言わねばならない。しかるに、被控訴人は一貫して府労委による本件救済命令や中労委の履行勧告に従わず、これを無視し続けているものであり、このような被控訴人の態度は、労働法制の根幹を否定する違法、不当なものと言うほかはない。」
(2)上記の高裁判決にも示されているように、使用者にも都道府県労働委員会の命令に対して、不服を申し立てる権利(再審査申立)が保障されているが、都道府県労働委員会の救済命令を履行したうえでの再審査申立するのが労働組合法上の義務である。
(3)2025年の参議院厚生労働委員会で大椿裕子参議院議員は「労働委員会の救済命令が形骸化している問題について、労働委員会の命令には『公定力があるのではないか』『守らないのは違法ではないか』」との問いかけに、厚生労働大臣は「労働委員会の命令は履行する義務がある」と答弁している。
ナニワ生コン社、藤原生コン運送社、五一社、タイコー社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社が、大阪府労働委員会の命令を履行しないことから生活権を侵害していると言える。これは、日本国憲法25条に規定されている生存権の侵害に該当する。
また、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は、関生支部労働組合との団体交渉を拒否し続けており、憲法28条の団結権、団体交渉権を侵害している。
コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は東京・中央労働委員会からも救済命令(会社側の再審査申立を棄却)が出されており、その命令を履行していない。
特に、大浜資材社は、労働委員会や裁判所から2人の組合員の自宅待機命令が違法と指摘されているにもかかわらず、2人の自宅待機命令を2年4ヶ月(2023年4月から2025年8月現在)にわたり維持し続けており、2人の労働者への精神的な負担を強いている。
(4)国連人権理事会、ビジネスと人権に関する指導原則や、人権作業部会の勧告では、「企業が人権を尊重することを確実にするための公正で合法的な職場慣行を促進する上で、労働組合は不可欠な役割を担っている」と強調していることからも、住友大阪セメント株式会社大阪支店の対応が問われている。
5.通報者が考える不遵守の具体的事実及び当該不遵守の対象となる調達コードの条項
(3)人権
3.1国際的人権基準の遵守・尊重
3.2差別・ハラスメントの禁止
(4)労働
4.1国際的労働基準の遵守・尊重
4.2結社の自由、団体交渉権
6.調達コード不遵守と負の影響の因果関係
「4.2結社の自由、団体交渉権」に、「サプライヤー等は、調達物品等の製造・販売等に従事する労働者に対して、組合結成の自由及び団体交渉の権利といった労働者の基本権を確保しなければならない」と示されているが、ナニワ生コン社、藤原生コン運送社、五一社、タイコー社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は、これを不遵守している企業である。
都道府県労働委員会の救済命令を履行しない、労働組合が求める団体交渉を開催しない両社の行為は、労働者で組織される労働組合の権利を侵害している。
憲法で保障されている結社の自由、労働基本権が侵害されたままであれば、他の労働組合への負の影響を及ぼすことは明らかである。
藤原生コン運送社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は、住友大阪セメント株式会社大阪支店の取引先企業であることから、住友大阪セメント株式会社大阪支店は人権デューデリジェンスを実践するべきである。
7.通報者が期待する解決策
(1)住友大阪セメント株式会社大阪支店は、サプライチェーンとステークホルダーに基づき、関生支部との協議を行うこと。
上記4.の(4)で記しているように、国連人権理事会、ビジネスと人権に関する指導原則や、人権作業部会の勧告では、「企業が人権を尊重することを確実にするための公正で合法的な職場慣行を促進する上で、労働組合は不可欠な役割を担っている」と強調していることからも労働組合(関生支部)との協議は不可欠。
(2)藤原生コン運送社、泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社および大阪広域生コン協組に対して、大阪府労働委員会(初審命令の履行義務)と中央労働委員会の命令(命令確定)を速やかに履行し、円満な労使関係を構築する姿勢も見せることを、住友大阪セメント株式会社大阪支店が働きかけること。
8.被通報者との対話の事実
ナニワ生コン社と藤原生コン運送社は、命令履行、命令一部履行(ナニワ生コン社)として関生支部と団体交渉を開催してきたが、円満な労使関係を構築する姿勢は見えない。
泉北ニシイ社、コーシンコーポレーション山政生コン社、中央コンクリート社、大浜資材社は、労働委員会の命令履行などを求めた団体交渉を頑なに拒んでいる。
現在、コーシンコーポレーション山政生コン社は、2度目の不当労働行為救済命令が出されている。そして3回目の不当労働行為救済申立事件が進行している。
9.他の紛争処理手続において係争中の案件又は本通報受付窓口業務における手続が行われている案件に該当するか否か(該当する場合はその具体的内容)
持続可能性に配慮した調達コード(第2版)の「1.趣旨」に記されている、この「持続可能性に配慮した調達コード」においては、上記目的の下、持続可能性に関わる各分野の国際的な合意や行動規範(「持続可能な開発目標」、「国連グローバル・コンパクト」、「パリ協定」、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」、「世界人権宣言」、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」、「ILO多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(ILO中核的労働基準を含む)」、「OECD多国籍企業行動指針」など)を尊重し、法令遵守を始め、地球温暖化や資源の枯渇などの環境問題や人権・労働問題の防止、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現、公正な事業慣行の推進や地域経済の活性化等への貢献を考慮に入れた、持続可能な社会の実現に向けて実行可能で最良の調達を実現するための基準や運用方法等を定める。
と示されている。
本件では、特に、「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が主な要因になると思われるので、検討を求める。
また、「3.持続可能性に関する基準」(1)全般の1.1法令遵守、1.2通報者に対する報復行為の禁止、1.3通報受付対応の体制整備、(3)人権の3.1国際的人権基準の尊重、3.2差別・ハラスメントの禁止、(4)労働の4.1国際的労働基準の遵守・尊重、4.2結社の自由、団体交渉権を検討していただきたい。
「4 物品別の個別基準」(3)の調達コードの遵守体制整備の検討を求める。

中島光孝/著
出版社名 白澤社
ページ数 334p
発売日 2025年06月
販売価格 : 3,400円 (税込:3,740円)
目次
第一部 弁論が開かれた最高裁判決(ハマキョウレックス事件、日本郵便〔西日本〕事件―「非正規格差」をどう是正するか
空知太神社事件最高裁判決―政教分離原則違反はだれがどのような基準で判断すべきか
水俣病訴訟―公害企業救済か被害者救済か)
第二部 「戦争」にまつわる判決(大阪・花岡中国人強制連行国賠請求訴訟―国家の「強制」による「加害」を国家はいかに償うべきか
台湾靖国訴訟・小泉靖国訴訟―台湾原住民族はなぜ「靖国合祀」を拒否するか
「アベ的なるもの」との三〇年―フィリピン元「従軍慰安婦」補償請求訴訟/「君が代」斉唱拒否訴訟/安倍国葬違法支出公費返還請求住民訴訟)
第三部 労働組合をめぐる判決(三菱重工長崎造船所〔労働時間〕事件―「労働と労働組合活動」を考える
住友ゴム工業事件・近鉄高架下文具店長事件―「職場の労働組合活動」を考える
関西生コン支部刑事弾圧事件―「労働基本権保障」の意味を考える)
真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】20250411【デモクラシータイムス】
ご存じですか、「関西生コン」事件。3月には、組合の委員長に対して懲役10年の求刑がされていた事件で京都地裁で完全無罪判決が出ました。無罪判決を獲得した湯川委員長と弁護人をお呼びして、竹信三恵子が事件の真相と2018年からの一連の組合弾圧事件の背景を深堀します。 今でも、「関西生コン事件」は、先鋭な、あるいは乱暴な労働組合が強面の不法な交渉をして逮捕された事件、と思っておられる方も多いようです。しかしそうではありません。企業横断的な「産別組合」が憲法上の労働基本権を行使しただけで、正当な交渉や職場環境の改善運動だったから、強要や恐喝など刑事事件には当たらないものでした。裁判所の判断もこの点を明確にしています。では、なぜ暴力的組合の非行であるかのように喧伝され、関西全域の警察と検察が組織的に刑事事件化することになったのか、その大きな背景にも興味は尽きません。 tansaのサイトに組合員お一人お一人のインタビューも連載されています。ぜひ、どんな顔をもった、どんな人生を歩んできた人たちが、濡れ衣を着せられ逮捕勾留されて裁判の法廷に引き出されたのかも知っていただきたいと思います。
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増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国
勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合潰しが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
はじめに――増補にあたって
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
補章 反攻の始まり
増補版おわりに

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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ー 公判予定 ー
10月31日 国賠裁判 東京地裁(判決) | 15:00~ |
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11月18日 大津第2次事件 大阪高裁(判決) | 14:30~ |