徴用工判決と日韓請求協定の問題 前編(全2回)

今般、国際社会からは、強い日本が貿易などのカードを切り、韓国をいじめているように映っています。
徴用工の問題は、労働者の人権侵害という側面があることから、ていねいに扱わないと、日本の人権感覚が国際的に疑念を持たらすことになるのではないでしょうか。

韓国の元徴用工(強制動員被害者)への損害賠償を新日鐵住金(現在の日本製鉄)に命じた韓国大法院(最高裁)判決(2018年10月30日)から1年が過ぎました。
安倍晋三首相は2019年10月24日、韓国のイ・ナギョン首相に対し、「判決は国際法に明確に違反している」と重ねて非難しました。

「この裁判の流れ」

新日鐵住金の裁判では、原告2人が当時の日本製鉄大阪製鉄所で徴用工として働かせれていました。このときの強制労働に対する損害賠償を求めて1997年12月、大阪地裁に提訴したのが、この裁判の始まりです。日本の裁判では、企業だけでなく日本国も被告となりましたが、2003年10月に最高裁で棄却されました。
そこで、この2人に加え、もう1人と八幡製作所のもう1人の計4人が原告となり、2005年2月、ソウル中央地方法院に提訴し、韓国の裁判が開始され、原告側の勝訴で決着したのが、2018年10月末の韓国大法院判決です。日本での提訴から21年目に勝ち取った判決でした。1人あたり1億ウォン(約910万円)の賠償金の支払いが命じられました。
この事件は、2018年の大法院判決と基本的に同じ判断が、2012年5月に大法院で示されていたのです。2018年の判決は、ムン・ジェイン政権ができてから突如、出たものではありません。
この他に大法院は、三菱重工の名古屋女子勤労挺身隊事件と広島三菱重工事件でも2018年11月、原告の訴えを認め、企業の損害賠償責任を認めた判決を出しています。
韓国では現時点で、900人を超える原告が80社以上の日本企業を相手にして徴用工裁判が行われています。被害者は約13万人といわれますが、実際に裁判できる人は限られるので、原告以外の人も救済できる策を見いだす必要があります。

「判決は、日本の植民地支配の不法行為を裁いた」

韓国大法院判決のポイントは、①日本の裁判で原告の敗訴が確定していても、その判決は日本植民地支配が合法的だとの認識を前提にしており、それをそのまま承認することは韓国の社会秩序に反する。②旧日本製鉄が解散されていても、賠償義務は新日鐵住金に承継される。③強制動員被害者の日本企業への慰謝料請求権行使は、日韓請求権協定に反しない。④時効消滅は該当しない。⑤慰謝料額は裁判所が確定できる。したがって新日鐵住金の上告を破棄する。

「そもそも徴用工とは?」

日中戦争の泥沼化で日本の男性労働者が徴兵され、日本国の炭鉱や製鉄所などの労働者が不足しました。そのため、当時、植民地だった朝鮮の人々を動員して本国で働かせたのが徴用工(女性は勤労挺身隊です)です。
2018年10月の大法院判決の事実認定では、大阪製鉄所に送られた2人は、1943年に動員されました。このとき、Aさんは17歳、Bさんは19歳でした。
「本土の製鉄所で2年間、訓練を受けて技術を身につければ、朝鮮に戻り技術者として働ける」という求人に応募し、大阪に行きましたが、これは全くのウソだったのです。現在、日本で起きている「外国人技能実習生」問題とよく似ています。
寮は舎監に監視され、外出は許可制でした。Aさんの仕事は、鉄パイプの中に入り、投入された石炭をかき混ぜ、石炭ガスを取り出す重労働でした。Bさんは起重機の操作でした。
休日は月1~2回で、食事は貧弱でした。賃金は「貯金する」といって舎監が管理し、月2~3円の小遣いが渡されただけです。給与は結局、最後まで支払われませんでした。
2001年の大阪地裁の判決も、この労働実態は「強制労働に該当し、違法」だと認定しました。「賃金不払い」という「債務不履行」、「強制労働」という「不法行為」により、日本製鐵に損害賠償責任があることを認めました。

「国家間の対立ではなく、労働者個人の人権救済」

徴用工問題は国と国の対立のように描かれていますが、根底にあるのは、人権を侵害された被害者が自らの救済を求めている問題です。「国対国」でなく、人権侵害を受けた被害者個人を中心に考えることが重要です。

…つづく

※日弁連・日韓弁護士会戦後処理問題共同行動特別部会長・川上詩朗氏-(引用)
(中国人戦争被害者訴訟弁護団で活躍。2010年以降、韓国人徴用問題に取り組む。著書に『徴用工判決と日韓請求協定-韓国大法院判決を読み解く』(共著)

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