徴用工判決と日韓請求協定の問題 後編
前回からのつづき…

「安倍政権は判決を『国際法違反だ』と非難しているが」

韓国での徴用工裁判は、民間人が日本企業という民間を訴えた裁判です。日本政府は裁判の当事者ではありません。ところが2018年の大法院判決が出ると安倍政権は11月1日の衆院予算委員会で、「国際法に照らせば、あり得ない」と判決を全面拒否し、韓国政府に「前向きな対応」を要求。その後、日本政府は韓国に経済的な措置を取り、深刻な国家間の対立になりました。
日本政府の対応は、日韓両国が依拠する「法の支配」、三権分立の原則から見ても問題があります。
三権分立のもと、行政府は司法府の法解釈と判断を尊重しなければならないとされています。韓国政府も大法院判決を尊重すべき立場にあります。その韓国政府に対して、大法院判決に反する対応を求めているとすれば問題です。
安倍政権が「国際法違反」だとする根拠は、1965年の日韓請求権協定です。その第2条で請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と合意しており、判決はそれに反するというのです。
しかし問題は、それほど単純ではないのです。日本政府は「協定で放棄されたのは国の外交保護権(国としての請求権)であり、個人の請求権は消滅していない」という解釈をしてきました。
個人の賠償請求権が消滅していないのですから、大法院判決がそれを認めたとしても、協定違反とは言えないことになります。
なお、日本政府は後に、「個人の請求権はあるが、裁判で救済されない」という解釈に変わりました。
しかし、裁判で救済されないというのは、基本的人権を侵害された「すべての者」が「国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する」と定めた世界人権宣言(1948年)8条に反するのではないでしょうか。

「日本企業の反人道的行為への慰謝料請求権」

韓国側は請求権協定を否定しているわけではりません。大法院判決の多数意見の論立ては次のようなものです。
『1951~1965年の日韓会談で請求権問題は議論されたが、会談で合意されなかった論点もあった。原告が要求したのは「日本政府の不法な植民地支配と侵略戦争遂行に直結した、日本企業の反人道的な不法行為に関する日本企業への慰謝料請求権」だ。しかし、この論点は合意されなかった。だから請求権協定の「完全かつ最終的に解決された」とされる「請求権」には含まれない』
日韓会談で韓国側は「日本の植民地支配は不法であり、その賠償請求は可能だ」と主張しました。しかし日本側は「植民地支配は合法であり、賠償は問題外だ」と反論しました。植民地支配の不法性、不当性について合意に至りませんでした。
だから日韓会談で「日本政府の植民地支配に直結した反人道的不法行為に関する日本企業への慰謝料請求権」は、請求権協定の対象外とされたのです。

「日本政府は請求権協定に基づき韓国に5億ドルを供与・貸与した。賠償は解決済みという人もいますが」

請求権協定第1条で「無償で3億ドル、有償で2億ドル」を供与・貸与すると合意しました。これについて1965年11月の参院本会議で椎名悦三郎外相は「これは経済協定であり、韓国の新しい出発を祝う祝い金だ。『請求権が経済協力に変わった。これは賠償の意味を持つ』と考える人がいるが、賠償とは何ら関係はない」と答弁しています。
今回の判決は突然出てきたものではなく、2012年5月の大法院の判決が土台になっています。
先に述べた2005年以降の韓国の裁判では、ソウルの中央地方法院と高等法院で訴えが棄却されました。そこで原告は2009年9月、大法院に上告しました。大法院がその差し戻しを命じたのは2012年の判決です。それに対して被告企業が上告。その結論が出たのが今回の大法院判決なのです。
正当な判決には従うのが当然ですが、日本政府は日本企業に対して説明会を開き事実上、企業が被害者との話し合いに応じないように牽制しています。

「人権侵害の救済を日本政府は妨害するな」

2012年の判決出たとき、原告の弁護団は企業や政府を回り、判決確定前に和解などをするように呼びかけました。当時は新日鐵も経団連も和解などによる早期決着に関心を示していました。現在の日本政府には「最低限、民間同士の解決に向けた協議を妨害しないでほしい」と原告弁護団は述べています。

…おわり

※日弁連・日韓弁護士会戦後処理問題共同行動特別部会長・川上詩朗氏-(引用)
(中国人戦争被害者訴訟弁護団で活躍。2010年以降、韓国人徴用問題に取り組む。著書に『徴用工判決と日韓請求協定-韓国大法院判決を読み解く』(共著)

6/21 シンポジウム ~今、見逃せない労働組合弾圧~ (IWJ)

全国のみなさまへの御礼に代えて PDF

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ 
PDF

デモクラシータイムス
【竹信三恵子の信じられないホントの話】
ヘイトの後に警察が来た~関西生コン事件
←ココをクリック
関西生コン事件ニュースNo.38 ココをクリック
「関西生コン事件」国家賠償請求訴訟 関連記事
OURPLANET(動画)「労働組合の自由を奪われた」関西生コン労組が国賠訴訟←ココをクリック
IWJ 国家賠償請求提訴についての記者会見 2020.3.17←ココをクリック
関西生コン労組、違法捜査と国など提訴 執行委員長ら恐喝容疑巡り「長期勾留は恣意的」 2020年3月17日 20:42 京都新聞←ココをクリック

大阪府労委で組合側の完全勝利命令!←藤原生コン運送不当労働行為事件

またもや、組合側勝利命令!←吉田生コン地位保全等仮処分申立事件

公判が日程変更や中止になっています。確認お願いします。

労働組合やめろって警察にいわれたんだけどそれってどうなの(憲法28条があるのに…) 単行本 – 2020/3/6
連帯ユニオン、葛西 映子、北 建一、小谷野 毅、宮里 邦雄、熊沢 誠、海渡 雄一、鎌田 慧、竹信 三恵子(著)

内容紹介
戦後最大の「労組壊滅作戦」が進行。
警察・検察・裁判所による弾圧。
権力と一体となった業界あげての不当労働行為。
関西生コン事件の本質を明らかにする!
ストライキやコンプライアンス活動を「威力業務妨害」「恐喝未遂」として89人逮捕、71人を起訴。
委員長と副委員長の拘留期間は1年5か月超。
取り調べで「組合をやめろ」と迫る警察。
家族に「組合をやめるよう説得しろ」と電話をかける検察。
組合活動の禁止を「保釈許可条件」とする裁判所。
いったい誰が、なんのために仕掛けているのか「?関西生コン事件」の真相。お問い合わせは、連帯ユニオンまで TEL:06(6583)5546 FAX:06(6582)6547
アマゾンでも購入することができます。

こちらから