関生支部の産業別労働運動⑤
…前回からのつづき
「政府による分断政策」
政府は、1945年労組法を1949年労組法に全面改正し、労働組合の団体交渉力を制限し、期限の定めのない労働協約を無効とし、労使の協約自治を制限しました。
政府が一方で、中小企業の組織力の強化を図り、他方において労働組合の弱体化をはかるようになったのは、「労働者はもちろん業者をも含めて中小企業防衛という体制に対して、業者をその体制から引き離そうとする」政府の分断政策の一つの表現だったのです。これは、中小企業が組織化された協同組合と労働者が組織化された労働組合とが、連携して大企業に対する交渉力を強めることは、傾斜生産方式(1946年12月27日閣議決定「昭和21年第4、四半世紀起訴物資需給計画策定並実施要領」)によって鉄鋼、石炭等の大企業に集中的に資材、資金を投入するという経済政策の遂行のために好ましからざるものと見なされたからです。
ここに現在に至る中小企業協同組合と労働組合が連携する基盤がありながら、容易に連帯させず、対立させてきた要因が存在します。
1949年成立の中小企業等協同組合法で定めた「団体協約」の権限は「団体交渉」なくしては実効性を持ちません。大企業は、買い叩きによる単価の引き下げを中小企業に強制し、中小企業はこれに抵抗しました。
「中小企業等協同組合法が改正」
1957年、「中小企業団体の組織に関する法律」(中小企業団体法)が制定され、これとバランスを保つため中小企業等協同組合法が改正されました。この改正で中小企業の大企業に対する団体交渉権及び大企業の団体交渉応諾義務が明記され、さらに団体交渉、団体協約の締結を円滑にするために「調停」「あっせん」の定めを設けたのです。
中小企業は、産業構造上、一方において大企業の支配従属下におかれ、他方において労働者を支配する地位にあります。大企業は「中小企業が団体交渉権をもつことは、大企業に対し商取引の応諾を義務づけることにもなり好ましくない」としていました。
労働者は、中小企業等協同組合が大企業に対して団体交渉を行うことを好意的に見るものの、独占的な大企業に利用され、そのしわ寄せが労働者や零細な業者にくるのではないかと心配していました。
「中小企業の経済的地位の改善、向上へ」
改正による団体交渉権は以下のようなものであり、事業協同組合の代表者が、政令の定めるところにより団体協約を締結するため交渉をしたい旨を申し出たときは、当該事業協同組合と取引関係にある事業者(小規模の事業者を除く)は、誠意をもってその交渉(団体交渉)に応じなければならない(同法9条2第12項)。団体協約を締結すると、その効果は、当事者が組合であっても構成員たる組合員たる中小企業に直接に及び(同条14項)、組合員の団体協約に定める基準に違反する契約を締結しても、当該違反部分は無効とされ、当然に上記基準に従って契約したものとみなされる(同条15項)。
中小企業等協同組合の団体交渉権、団体協約締結権は、大企業の支配従属下にある中小企業の地位を具体的に認識して、中小企業の組織力を背景に、中小企業の経済的地位の改善、向上を目的として生存権的基本権なのです。
工業組合、協同組合とも全国の組織があり、全国生コンクリート工業組合連合会には、全国地域をカバーする45工業組合が組織されており、218年度では2279社、2604工場が組合員として加入しています(組織率79.0%)。
また、全国生コンクリート協同組合連合会には、252協組、3県協組連、組合員1890社、2146工場が組合員として加入しています(組織率65.1%)。
近畿においては、工業組合は、大阪兵庫生コンクリート工業組合、和歌山県生コンクリート工業組合など、協同組合は、大阪では各協同組合の団体があり、大阪広域生コンクリート協同組合(1995年3月設立)があります。和歌山県には和歌山県中央生コンクリート協同組合、日高地区生コンクリート協同組合、和歌山県広域生コンクリート協同組合などがあります。
次回は、「セメント、生コンの物流について」を記します。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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ー 公判予定 ー
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comま