従軍慰安婦問題は、人権侵害であり、戦争犯罪

菅政権は、中学校の歴史教科書に記述された「従軍慰安婦」という用語は「誤解を招く恐れがある」ので、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切である」との答弁書を4月27日、閣議決定しました。
きっかけは、維新の会の馬場伸幸幹事長が4月16日、衆議院に提出した質問趣意書ですが、「従軍」をとることで日本軍の関与や強制性を否定しようというものです。

「教科書の記述を書き換えさせる」

5月10日の予算委員会で菅首相は、「教科書の検定基準は、閣議決定、政府の統一見解を記述すること」と述べるなど、検定の見直しまで言及しています。さらに、荻生田文科相も、検定に合格して「すでに使用されている教科書の記述を書き換えさせる」という趣旨の答弁を繰り返しています。

「従軍慰安婦問題は、人権侵害・戦争犯罪」

日本軍による「慰安婦」問題は、日本が戦争中アジア太平洋各地に「慰安所」を設置し、植民地にしていた朝鮮や台湾、軍事侵略していた中国などから女性たちを強制的に連行し「性奴隷」とした、重大な人権侵害であり、戦争犯罪です。
韓国の金学順(キムハクスン)さんが1991年、勇気ある実名での告発後、日本政府は調査をもとに1993年8月4日、当時の河野洋平内閣官房長官が「談話」を発表しました。そのなかで、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいもの」「当時の軍の関与の下に多数の女性名誉と尊厳を深く傷つけた」と被害者に謝罪し、政府の責任で措置をとること、歴史の教訓として次世代に伝えていくことを約束しました。
「いわゆる従軍慰安婦問題について」としたこの「河野談話」について、歴代政府は継承を表明、今回の閣議決定後の国会質疑でも、「継承している」と答えています。

「犯罪事実を認定した重要な文書」

この間の裁判の判決文でも、2004年の最高裁では「軍隊慰安婦」、1998年の山口地裁下関支部では「従軍慰安婦制度」などの表現が事実認定として使われてきました。
また、6月初旬に、1936年に女性たちがだまされて中国・上海の「海軍指定慰安所」に送った事件の裁判の概要が記された法務省が作成した文書を、共産党参院議員が公開しました。「強制連行を記述している文書はない」と政府は主張してきましたが、日本軍の「慰安婦制度」を認め、強制動員の「犯罪事実を認定」した重要な文書です。

「被害者の尊厳と人権を回復するまで責任は問われる」

「国連女性差別撤廃委員会」をはじめとする国連や国際機関は日本政府に対して、「被害者が受け入れられる解決」を繰り返し勧告しています。
加害者側が事実を認めて真摯に謝罪し、賠償し、教育などを通じての再発防止に取り組み、被害者の尊厳と人権を回復するまで、問題は「解決した」と言えず、責任を問われ続けるのです。

「政府に責任を取らせるための行動を展開しよう」

昨今、世界中で、奴隷貿易や先住民虐殺など、かつての植民地支配の責任を問い直す動きが広がっています。
ところが菅政権は、日本軍「慰安婦」など侵略戦争の加害の事実を否定し、植民地支配の責任に向き合わず、改憲と戦争のための大軍拡に突き進んでいます。
私たち労働組合には、菅政権が「従軍慰安婦」問題について、日本軍の関与や強制性を否定する画策を許さない闘いが求められています。
改憲と戦争に突き進む菅政権を打倒し、日本政府に加害の責任を取らせるための行動を展開しましょう。

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「関生事件」が揺るがす労働基本権
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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20

業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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