和歌山広域協組事件第9回公判、11月18日、和歌山地裁

連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が11月18日、和歌山地裁で開かれました。当日の公判は、弁護側の証人尋問と関生支部・執行委員2人の被告人質問でした。

「和歌山広域協組事件とは」
和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、関生支部事務所を高級車で周回して、組合員らを脅すなどした行為に対して2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。

「検察側の元暴力団ら2人の証人尋問が取り消しに」

第9回公判の冒頭、検察側が予定していた2人(元暴力団H氏、元関生執行委員M氏)の証人尋問を取り消す決定が、裁判官から発せられました。元暴力団H氏は、高級外国車で関生支部の事務所を周回したり、関生支部の組合員に「武谷おるか、在籍確認や」などと発言した人物でした。

「多数の経営者とM氏も参加した関生支部事務所襲撃事件は『不起訴』となった」

弁護側の証人尋問では、K執行委員が証言しました。内容は、2018年1月22日の関生支部事務所襲撃事件についてです。
K執行委員は弁護人の「①当日は、アポなしで集団で押しかけたてきたこと。②組合事務所の入り口で、押しかけてきた集団らが関生支部の組合員に暴力を振るったこと。③その集団は、元在特会のレイシストらのほか、大阪広域協組の副理事長ら数人とや和歌山広域協組のM理事長も参加していたこと。④押しかけてきた集団らが『武を出せ』『武谷を出せ』と叫んでいたこと。⑤2017年8月18日に、元暴力団らが高級外国車で関生支部の事務所にきて『武谷の在籍確認や』などと言い、混乱させたこと」などの尋問に、落ち着いて証言していました。
また、弁護人の「組合事務所襲撃事件について、威力業務妨害などで告訴したがその結果は?」との尋問に対して、K執行委員は「不起訴処分になりました」と証言しました。
検察側の反対尋問に対して、K執行委員は「襲撃側のS氏(日本第一党顧問)が自分に向かって『和歌山の件できた。湯浅生コンの件だ』などと発言していた」などと、しっかりと証言していました。
主尋問、反対尋問が終わり、裁判官が当日(2018年1月22日の関生支部襲撃事件)の映像の取り調べを命じ、証拠として採用されることになりました(この証拠採用された映像は、裁判官、弁護側、検察側のみに映し出されて、法廷の傍聴席には映し出されませんでした)。

「被告人質問、O執行委員『8月22日の抗議行動のあと、高級外国車の組合事務所周辺の徘徊が、ピタッとなくなった』」

続いて、O執行委員の被告人質問です。主尋問では「①当日(2017年8月22日)のこと。②その4日前(8月18日)に、元暴力団らが高級外国車で関生支部事務所にきたことや、その日以前から関生支部の組合員を『つけ回していた』こと。③歴史的に労働組合が使用者側の意向を受けた反社会的勢力と対峙すること」などをO執行委員は、しっかりと証言。最後に、弁護人の「8月22日以降、組合事務所周辺の高級車の徘徊などはどうなったか?」の尋問にO執行委員は、「8月22日の抗議行動のあと、高級外国車の組合事務所周辺の徘徊がピタッとなくなった」と証言しました。

「反対尋問、O執行委員は沈着冷静に証言した」

反対尋問での検察側の尋問に対して、O執行委員は、「映像を見れば明らか」などと、落ち着いた様子で冷静に証言していました。このO執行委員の証言に検察官が描いていた証言が得られなかったようでした。

「被告人質問、M執行委員『私の提案にM氏は迷っていた』」

続いて、M執行委員の被告人質問。主尋問では、「①8月18日、元暴力団らが高級外国車で組合事務所前に来て『武谷おるか、武谷の在籍確認や』などと発言したこと。②8月21日、Y生コンの組合結成通知と、Y社長が元暴力団らを組合事務所に派遣したのかを尋ねたこと。当日のトラブルのこと。③8月22日、和歌山広域協組事務所での出来事」などをM執行委員は証言しました。
M執行委員は弁護人の尋問に対して、「和歌山広域協組の事務所で仕事をしていた女性事務員は、当初は驚いていたが、怖がっている様子ではなかった。事務所に電話が架かってきたときには、女性事務員の『電話です』との指摘を受けて、会話を止めて電話を終えるのを待ったし、女性事務員は、ふつうに業務をこなしていた。私たちにお茶やコーヒー、灰皿を出したときには笑顔も垣間見られた」と女性事務員は怖がっていなかったことや、和歌山広域協組の業務を妨害していないことをしっかりと証言しました。
弁護人の「M理事長とのやり取りやM理事長の様子はどうだったか」の質問に、M執行委員は「和歌山広域協組のM理事長は、元組合員のK氏の激しい発言に怯えている様子は全くなく、K氏に対して『ムッとしていた』。M理事長は、事実を明らかにするための私の提案(元暴力団ら2人との検証)に対して受けるかどうか迷っていた」と証言。さらに、M執行委員は「私たちと交渉している間、M理事長は、何時に次の予定があるなどの発言もなく、他の用務がある素振りは一切見せなかった」と証言しました。

「反対尋問、検察側はあせりを感じた?」

M執行委員は、検察側の反対尋問に落ち着いた態度で冷静に答えていました。
検察官の「M理事長の関係会社には、労使関係がないことをあなたは知っているので、(今回の事件は)労働組合活動ではないですよね」との質問にM執行委員は「労働組合活動です」ときっぱりと証言しました。検察官の挑発的な厳しい質問が繰り返えされましたが、M執行委員は検察官の挑発に動じず、しっかり証言していました。このM執行委員の整然と証言する態度に、思惑どおりにいかない検察官のあせりが感じられた様子が見られました。

「無罪に向けて大きく前進した被告人質問だった」

公判終了後、弁護団から本日の公判の総括が報告されました。普門弁護士(O執行委員の弁護人)は「想定したとおりの内容だった。2018年1月22日の関生支部襲撃事件は、アポも取らず突然、関生支部事務所に来た。しかし、2017年8月22日の和歌山広域協組事務所への訪問は事前にアポを取って行っている。それなのに、1月22日の関生支部襲撃事件は、威力業務妨害で告訴したのに不起訴となっている。和歌山広域事件は起訴しているが、もともと無理筋な事件だ。本日は、無罪に向けて大きく前進したものとなった」と評価しました。
久堀弁護士(M執行委員の弁護人)は「検察側はM理事長の証言『あうんの呼吸だった』ことを根拠に現場で共謀があったことを立証したかったようだが、M執行委員の証言によって検察側の思惑は崩された。『武谷と話したい』などとM理事長の発言が映像で映し出されているように、検察側の現場共謀の立証には、かなり無理があることが明らかとなった」と検察側の獲得目標が得られなかったことを説明しました。
中島弁護士(武谷書記次長の弁護人)は「関生支部襲撃事件は、威力業務妨害だけではなく関生支部組合員らへの暴行傷害でも告訴したが不起訴だった。和歌山広域協組事件は、事前に訪問時間を双方で確認して臨んでいるのに、逮捕、勾留、起訴されている。この不公平な扱いが裁判官にわかったことは、かなり前進したと言える」と関生弾圧事件の実態を裁判所に示せたことの成果を述べました。

「産業別労働運動の正当性をしっかり主張すべきだ」

傍聴支援に駆けつけてくれた仲間からは「検察は、M理事長の関係会社に労使関係がないことを強調していたが、産業別労働組合の正当な運動をしっかり主張すべきだ」などの意見や指摘がありました。この意見、指摘に対して中島弁護士は「次回の武谷書記次長の被告人質問でしっかり主張する」と答えました。
被告人とされている武谷書記長からは「無罪を勝ち取るために全力を尽くす。引き続きの支援を」と呼びかけがありました。

「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」

午前、午後という長時間にわたる証人尋問に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさんに感謝します。寒さが厳しくなってきたさなか、遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさん、本当にありがとうございました。

次回の第10回公判は、12月9日(木)、10:00から16:30まで、武谷書記次長の被告人質問です。
第11回公判は、2022年2月3日(木)、10:00から11:45まで、検察側の論告・求刑と弁護側の弁論・最終陳述です。
第12回公判は、3月10日(木)10:00から10:30まで、判決言い渡しです。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20
業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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