カリフォルニア大学 ストライキの現段階とその意義

カリフォルニア大学当局とアカデミック労働者は、12月16日、労働協約に達したと暫定的に発表しました。

社会的弱者らの要求は無視

しかし、組合員の中でまだ意見の一致に至っていない状態だそうです。その理由は大学から提示された内容は不平等であり、社会的弱者らの要求は無視されているからです。

アカデミック労働者には、ティーチングアシスタント(TA)、研究者、チューターなどさまざまなタイプが含まれています。彼らの多くは安い給料で、高級取りの教授と同様に授業を担当し、試験の監督や採点、成績評価まで行っています。

1ヵ月以上のストライキ 歴史的な偉業

カリフォルニア大学は、30万人の学生が在籍する大規模な公立(州営)の名門大学であり、UCLAやバークレー校など、カリフォルニア州の各地に10のキャンパスから成り立つ大学です。この全米でも有数なカリフォルニア大学での今回の激しい労働争議は、労働条件の改善を強く要求した4万8千人の職員が1ヵ月以上のストライキを継続した歴史的な偉業と言っても過言ではありません。

UAW(全米自動車労組)は、もともと自動車産業で働く労働者の組合ですが、今回のカリフォルニア大学でのストライキに共感し、経済的正義という共通の目的のために、彼らを支援しました。工場労働者と大学研究者という2つのグループは、主に労働者階級と中流階級という別の階層に属し、アメリカの歴史的にもこれらの異なる階層の人々が共に行動するという事はあまりないことです。

大学当局から提示された協約をアカデミック労働者側はまだ同意していませんが、この協約が締結されれば、大学労働者の受け取る報酬は大幅に改善される見込みです。

最も低所得の教職員の年収は約23,000ドルから、今後2年半の間に55%の賃上げ、物価高騰の激しいロサンゼルスやサンフランシスコ地域のキャンパスで学び働く一部の労働者もさらに多くの給与と健康保険、育児手当なども大幅に増額されることになります。

労働者には組合に加入する権利がある

アメリカでは過去50年間に労働組合に所属する組合員は大幅に減少し、現在では、労働者の10%程度に過ぎません。しかし、アメリカ人の労働組合に対する意識は、近年変わってきています。今年2022年、労働組合に関する世論調査の結果を見ると、多くの人が組合の価値を信じ、労働者には組合に加入する権利があるという意見を持ち、約70%のアメリカ人が組合に対して肯定的な態度を示しています。1965年以降、今年2022年ほど人々が労働組合の価値を再認識し、また組合活動に意義を見出した時はないと言えます。

注)日本の大学院生と違い
アメリアの大学院生の中には学生として授業に参加するだけではなく、教授の見習いとして授業を行い、試験の監督や採点も行います。私の時代(1990年代)のアカデミック労働者は殆どこのような教授と同等の仕事をこなす大学院生、ティーチングアシスタント(TA)でした。TAという言葉は、最近日本の大学でも使われていますが、私の時代(1990年代)はまだアメリカでも「労働者」という定義には含まれず、「実習生」と位置づけられており、大学院生が授業を受け持つことは、「教育」や「トレーニング」の一貫として、安い賃金で教授と同等の仕事を任されていました。裕福な親を持つ学生が豊かな生活をしている一方、労働者階級出身の白人や、黒人、女性、障害を持つ学生らは奨学金とTAの安い賃金では生活が成り立たず、経済的に困っている人が多かったです。
カリフォルニア大学労組出身、愛知連帯ユニオン
ジョセフ・エサティエ

2022年12月20日
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

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2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

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