「国際人権から見た関西生コン弾圧」講演集会に70名 12月3日/名古屋
名古屋市の東別院会館で「関生弾圧を許さない東海の会」が主催したこの集会では、エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんの講演が行われました。
「国連特別報告者日本調査の実現に尽力を尽くす」
藤田さんは特定秘密保護法案(2013年)、共謀罪法案(2017年)を英訳して国連に通報し、その危険性を周知、2016年の国連特別報告者(表現の自由)日本調査の実現に尽力した方。本年7月28日に国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会の専門家2名が連帯ユニオン関生支部事務所を訪問し、「国連ビジネスと人権の作業部会ミッション終了ステートメント」中で関生弾圧を念頭に「労働組合員の逮捕や訴追の事例などについて、懸念を抱いています」と指摘されたことの意義などを解説しました。
今回の集会はこれまで関西生コン弾圧をテーマにした集会には参加したことのない多くの市民が参加し、運動の広がりを感じさせるものでした。
集会冒頭、主催者として石田共同代表が、「これまで弁護士や労働法学者、この問題を取材しているジャーナリストをお招きして集会をもってきたが今回は少し離れたところから講師をお迎えした。裁判だけでは限界があり、これをどう超えていけるのか、一緒に考えていきたい」と集会の趣旨を説明しました。
「裁判官が憲法を無視してこの事件を判断小としている」
続いて、関生ビラまき弾圧事件の当該組合員が発言に立ちました。組合員は、「コンプライアンス違反を指摘するビラを撒いたことが恐喝だとされ、組合つぶしのために2019年2月に被告となっている4名が警察に不当逮捕された。テレビドラマで裁判官が両方の意見を聞くシーンがあるが、実際の裁判では検察側証人10数名が延々と証言し、弁護側は労働法学者の証人が却下されて数名しか採用されず、労働法を知らない裁判官が憲法を無視して刑法だけで判断しようとしている。これは労働者・市民の武器を奪うものだ」と発言しました。
「法律は同じでも時代状況によって解釈は変わる」と裁判官の発言
ビラまき弾圧当該でもある関生支部の西山執行委員は日頃の支援に謝意を表明、「現在、地裁ではビラまき弾圧など2件が残っている。証拠はビラを撒いている映像だけで、撮影したのは元大阪府警警察官。組合を離れていくメンバーもいたが、役員でもない組合員が最後までこの弾圧に頑張り抜いたことは大きな成果。警察は組合員の家族を訪問して黙秘を止めるように言ってくれと頼むなど無法な弾圧だった。検察調べでは組合を辞めたら刑を軽くする、不起訴にする等と言った。組合脱退を強要する取り調べの証拠も残っている。裁判だけをやっていても前には進まない。現場を潰させてはならない。政治の影響も大きい。民主党政権時代の139日間のストへの弾圧と安倍政権の2017年12月ストの弾圧を全然違う。裁判所も追随し、「法律は同じでも時代状況によって解釈は変わる」と判決している。現在、労働委員会の行政命令を履行させる取り組みをしているが、使用者側弁護士が労働委員会に勝利命令の損害賠償を請求することまで起きている。ゼロから、何年かかるか解らないが、産別労働組合運動を再建していく。未組織の労働者が労働組合に悪いイメージを持っていることも変えていかなければならないと思う」と発言しました。
「日本ではストライキ権は死語に」
藤田さんは冒頭、「今、イギリスはストライキブーム、教員・鉄道労働者・弁護士・医療労働者までストライキを行っている。人々はもちろん迷惑も被るが、彼らの権利だから、と理解を示す。日本ではストライキ権は死語になっている。帰国後、沖縄を出発点に講演会を行っている。沖縄戦で多くの犠牲者を出したチビチリガマと犠牲者を出さなかったシムクガマがある。シムクガマではハイチ移民だった人が国際法規の交戦規程に一般市民の殺害を行ってはならないとあることを知っていて集団自決を思いとどまらせた。国際人権が使えることを理解してもらいたい。シングルイシューについて頑張っている人もいるが、全体が繋がっていて根底が一緒だと言いたい。木をみて森を見ないではいけない。」と講演の趣旨を説明されました。
「人権は人間らしく生きるのに不可欠なもの」
続けて、藤田さんは国際人権に関する概要を説明しました。日本では人権は「思いやり」のように言われるが、国際人権基準では、人権は人間らしく生きるのに不可欠なもので、政府は尊重・保護・充足の義務を負うと考えられている、闘争的な側面があることも認められているとしました。国連には人権条約機関と人権理事会とがあり、人権条約には社会権規約と自由権規約があり、日本も9つのうち8つを批准しおり、締約国は条約機関から実施状況の審査を受け、審査では政府からの報告と共に市民団体からの報告も参考にする、条約機関には個人通報制度もあり、多くの国がこれを利用できるようにしているが選択議定書に調印していない日本は個人通報制度が利用できず、最高裁の「次」を争うことができない、人権理事会にはボランティアの専門家からなる作業部会や独立報告者が権威あるものとして認知されていると説明されました。
日本政府は憲法98で条約順守義務を規定しているが、様々な機関・報告者から勧告を受けながら、不誠実な対応を続け、国連人権機関の「クリティカル・フレンド」としての役割を理解してこなかった等、解説しました。
今回の「ビジネスと人権」作業部会の関生支部訪問は、日本政府も「ビジネスと人権」原則の受け入れを対外的に表明するなかで迅速に進んだ経緯があり、様々努力が実を結んで実現したと思われると解説しました。
質疑応答に入り、多くの質問が出され、熊沢誠共同代表からは「産業民主主義は制度ではなく権利を行使する行動であって、その行動が免責されることで保障されているが、日本ではピケが認められず免責がなされていない」との発言がありました。
最後に司会の植木事務局次長から集会後17:30からの「ガザ緊急アクション名古屋」が呼びかける「STOPO イスラエルのジェノサイド」デモが紹介され、集会を準備した多くの仲間がこのデモに参加しました。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで