沖縄市で起きた憲兵パトロールと「依存意識」の清算

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主権の空洞化を招く病根

11月23日、沖縄県沖縄市内の民間地で発生した米軍憲兵隊(MP)による民間人への不当な警察権行使という事態は、単なる一時の誤りでは片付けられません。4人の米軍憲兵が男性を地面に押し倒し、手錠をかけようとする衝撃的な事件は、日本の主権と地域の治安を蝕む構造的な病根を露呈させました。

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この事件を受け、米軍は単独パトロールを一時停止しましたが、これは根本解決の道筋ではありません。民間人が米軍人に誤認され、暴力的に拘束される事態は、被害者の恐怖だけでなく、この運用自体が地域の安全を脅かす恒常的な原因であることを示しています。

治安悪化の「結果」ではなく「原因」

憲兵によるパトロールは、米兵の基地外での行動を規制するリバティー制度の遵守を徹底し、違反者を規制・拘束することを目的としています。しかし、この仕組みは、その存在を通じて治安を悪化させる根本的な原因として作用しているのです。
そもそも、憲兵が常時監視しなければならないという事実は、米軍関係者が日本の法の下にある一般市民と同じ規律で生活していないこと、すなわち治安悪化の潜在的なリスクが高いことを何よりも雄弁に物語っています。さらに、このパトロールは、日本の法秩序に対する信頼を根本から揺るがしています。憲兵が「身分証明書を見せない日本人も拘束できる」と述べていることは、彼らが日本の警察権の外で、際限なく権力を振るえるという極めて危険な認識を持っていることを示唆しており、これは不当な権力行使の温床となっています。また、迷彩服の憲兵が民間地を闊歩する姿は、住民や観光客に恒常的な威圧感や恐怖心を与え、地域の平和な環境を破壊し、社会的な緊張を助長しているのです。今回の誤認拘束は、明らかに憲兵の勇み足、すなわち基地外での過剰な警察権の行使であり、民間人の人権を脅かす新たな治安問題を現実化させました。

パトロール中止は対症療法に過ぎない

この事態を受け、県議会では溜政仁(たまり まさひと)知事公室長が、報道された民間人拘束の件について「事実関係を速やかに確認する」と述べ、県として米軍に対し説明責任を果たすよう求める姿勢を示しました。米軍は当事者への謝罪と詳細な経緯の報告が当然求められます。
しかし、ここで最も強く訴えるべきは、単独パトロールの一時停止や中止は、問題解決の出口ではないという点です。
憲兵のパトロールという現象の是非を議論するだけでは、事件や不祥事を引き起こす根本的な要因、すなわち日米地位協定によって保障された米軍の特権と、それに伴う日本の警察権の制限という問題に触れることはできません。パトロールを中止したとしても、基地の外で米兵の犯罪が確認された場合に、日本の警察が主体的に身柄を拘束し、日本の法律で裁くことができるという主権の原則が確立されなければ、治安の恒久的な回復はあり得ないのです。

根源的解決は「主権意識」の変革から

真の解決は、日本の主権と法秩序をゆがめているいびつな体制そのものを是正することに尽きます。
日米地位協定がこれほどまで不平等性を温存してきた背景には、日本国内の一部に長らく根付いてきた「アメリカのおかげで平和が守られているのだから仕方がない」という安全保障への依存意識があります。この主権意識の欠如こそが、政府レベルでの地位協定改定要求が強くならない根本的な原因であり、米軍の特権的な運用を許容してきました。

現行の地位協定と「刑事裁判管轄権に関する合意事項」は、民間地域での米軍関係者の逮捕を原則として米側が行うという、主権国家として容認しがたい構造を定めています。
日米両政府は、まず日本側が主権意識を確固たるものにし、憲兵による不当な警察権行使という事態を招いた現行の合意事項を直ちに見直し、民間地における治安維持は日本側が主体となり、米軍が協力するという形で、日本の警察権を着実に行使できる体制へ移行しなければなりません。真の治安回復は、米軍特権の象徴である日米地位協定の抜本的改定を視野に入れた、根源的な取り組みによってのみ達成

真相はこれだ!関生事件 無罪判決!【竹信三恵子の信じられないホントの話】20250411【デモクラシータイムス】

ご存じですか、「関西生コン」事件。3月には、組合の委員長に対して懲役10年の求刑がされていた事件で京都地裁で完全無罪判決が出ました。無罪判決を獲得した湯川委員長と弁護人をお呼びして、竹信三恵子が事件の真相と2018年からの一連の組合弾圧事件の背景を深堀します。 今でも、「関西生コン事件」は、先鋭な、あるいは乱暴な労働組合が強面の不法な交渉をして逮捕された事件、と思っておられる方も多いようです。しかしそうではありません。企業横断的な「産別組合」が憲法上の労働基本権を行使しただけで、正当な交渉や職場環境の改善運動だったから、強要や恐喝など刑事事件には当たらないものでした。裁判所の判断もこの点を明確にしています。では、なぜ暴力的組合の非行であるかのように喧伝され、関西全域の警察と検察が組織的に刑事事件化することになったのか、その大きな背景にも興味は尽きません。 tansaのサイトに組合員お一人お一人のインタビューも連載されています。ぜひ、どんな顔をもった、どんな人生を歩んできた人たちが、濡れ衣を着せられ逮捕勾留されて裁判の法廷に引き出されたのかも知っていただきたいと思います。
動画閲覧できます ココをクリック

増補版 賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国

竹信三恵子 (著) 旬報社 – 2025/1/30

勝利判決が続く一方で新たな弾圧も――
朝⽇新聞、東京新聞に書評が載り話題となった書籍の増補版!関生事件のその後について「補章」を加筆。
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけだ。そんな中、関西生コン労組は、労組の活動を通じて、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も、実現した。そこへヘイト集団が妨害を加え、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合潰しが行なわれているのか。迫真のルポでその真実を明らかにする。初版は2021年。本書はその後を加筆した増補版である。
◆主な目次
  はじめに――増補にあたって
  プロローグ
  第1章 「賃金が上がらない国」の底で
  第2章 労働運動が「犯罪」になった日
  第3章 ヘイトの次に警察が来た
  第4章 労働分野の解釈改憲
  第5章 経営側は何を恐れたのか
  第6章 影の主役としてのメディア
  第7章 労働者が国を訴えた日
  エピローグ
  補章 反攻の始まり
  増補版おわりに

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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