1995年1月17日早朝、突然の出来事
1995年1月17日の早朝、直下型地震が関西地方を襲いました。住宅やマンションがつぶれ、大火災が追い打ちをかけ、死者5000人を超え、損壊家屋は11万戸におよびました。
山陽新幹線、阪神高速道路など、「絶対に壊れない」といわれた公共建造物の多くも無惨に倒壊。高度成長路線を突っ走り、「安全神話」を誇った戦後日本の真の姿を私たちに突きつけました。
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「公共建造物ほど被害が大きかったのはなぜ?」
関生支部が倒壊原因を独自で調査した結果、手抜き工事が明らかになりました。
震災直後から新幹線、高速道路、病院など倒壊現場を連続して調査したところ、目を疑うほどの「手抜き・欠陥工事」が原因であることを突き止めました。
新幹線の橋脚に手抜き工事の証拠として、コンクリートの接合箇所が一体化しておらず、強度不足だったことが判明したのです。さらに、新幹線の高架下の接合部分に発泡スチロールとモルタルを詰め込んだ跡がありました(1995年2月3日の調査で判明)。
同年2月15日、「山陽新幹線の倒壊原因は手抜き工事」と、崩壊した橋脚下で設計図をもとに社会党国会議員調査団に説明。
同時に、大企業の利益最優先した大量生産志向の建設投資政策と生産構造の重層下請化が根底にあると指摘したのです。
生コン産業は、谷間(たにま)産業と言われています。生コン企業は、ほとんどが中小零細企業です。ゼネコン(土木・建築工事の一切を請け負う、大手の総合建設業者)からは、生コン価格を買い叩かれ、セメントメーカーからは、原料のセメントを一方的な価格で買わされているのです。
ゼネコンや商社から、生コン価格のダンピング(採算を度外視した廉価で商品を投げ売りすること)を強いられることで、常に生コン企業は価格競争にさらされているのです。
価格競争によって、生コン会社の経営者は生コンに加水(余分な水を生コンに入れること)労働者に指示するのです。加水することによって、コンクリートの品質が大きく低下することがわかっているにもかかわらず、少しでも利益を確保するために効率化(少ないミキサー車と運転手で搬入していることから、工事現場では迅速に生コンを降ろさなければならないため)しなければならないからです。
生コンを運搬する車両(ミキサー車)には、積めるだけ積み込む「過積載」によって、交通事故の危険性を呼び、目一杯積み込んでいることからミキサー車からこぼれ落ちる生コンで道路を汚すなど、公道や生活道路の環境を悪化させています。
また、骨材(砂や砕石)も安く仕入れる必要があることから、川砂ではなく、塩分が多い海砂を購入し、しっかり塩分を洗い流すことなく使用しなければならないことから、コンクリート建造物の骨格である鉄筋が錆びやすくなるのです。
生コンを打設して、固まったあとでも、加水した塩分が多く含まれている骨材を使用した建造物は、鉄筋が錆びて膨張するので、内部から亀裂が入り地震があれば壊れてしまうのです。
さらに、会社を運営していくために、セメントの量を少なくして生コンの品質を悪くするので、建造物の耐久性がおびやかされます。
このように、生コン企業は、ゼネコン・商社・セメントメーカーなどの大企業が利益を優先するための重層下請け構造になっていることから、「粗悪生コン」をつくらざるを得ない環境にあるのです。
このような構造となっていることから、生コン企業で働く労働者は、低賃金・長時間労働・サービス残業など劣悪な労働条件になっています。
また、出入り業者(セメント輸送会社、ミキサー輸送会社、ダンプ事業者)には、まともな運賃を払えない悪影響をおよぼしています。
「大企業の利益優先=重層下請構造と価格競争の規制を訴え」「公共工事のあり方の見直しを提言」
国・自治体・大手ゼネコンに「公共工事のあり方見直し」を提言、実行を申し入れました。
1995年2月21日、首相官邸にて村山首相(当時)に調査結果を報告したところ、村山首相は「下請けまかせの手抜きが原因じゃな」と理解を示していただきました。
同年2月13日には、再発防止のため「適正価格、安定供給、品質保証」を実現する生コン業界が必要と、通産省に申し入れしました。
同年3月24日、亀井静香運輸大臣(当時)に調査報告。亀井運輸大臣は「わかった。組合の意見を聞く。調査データも公表する」と約束しました。
「検証シンポジウム、公共建造物はなぜ壊れたのか」
1995年6月24日に開催した「検証シンポジウム・公共建造物はなぜ壊れたのか」には、被災した市民も多数参加しました。
シンポジウムでは、読売新聞社会部・山室寛之氏、千葉工大・小林一輔教授、元建設省技官・戸谷英世氏の各氏が、手抜き・欠陥工事の実態と原因を明らかにしました。
公開シンポジウム、学者やジャーナリストとまとめた提言の出版『阪神大震災の教訓、検証・建造物はなぜ壊れたのか』は、各界に反響を呼び、建設省「建設産業政策綱領」(95年4月)にも反映されました。
「品質・安全の確保」「適正価格と業界再建」「労働条件の統一」は三位一体
「品質・安全」「適正価格・経営安定」「雇用安定・労働条件統一」を三位一体で実現すべきと訴える政策提言が、生コン業界再建運動を加速しました。
「公共工事の抜本見直しと信頼回復に向けて」
第1、公共建造物のうち、コンクリート構造物を対象として、施工に関わる問題点と被害原因の関連について徹底検証すること。
第2、国と自治体の相互協力にもとづいて既存不適格建造物にたいする緊急調査を実施するとともに簡便なチェックシートや補修基準の作成補修費用にたいする融資制度など施策を確立すること。
第3、コンクリート構造物で進行する第二の危機にたいする歯止め措置を迅速に実行すること。
○生コンクリートの施工実態、業界動向と価格・品質管理に関して発注者による緊急実態調査の実施
○生コンクリート業界の正常化に関する関係者合意の形成
○「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」の再検討
第4、公共工事における請負施工のあり方を抜本的に見直すとともに、新たな品質管理・保証制度を確立すること。
○設計と施工の乖離をなくすために、公共工事元請業者による直営施工を原則とする。
当面、元請業者にたいする「下請額制限」や「受注総額制限」など諸外国の制度を参考に導入していく。また、産業政策として、建設生産の主体を大規模開発型の大手ゼネコン型から地域密着型の中堅・中小企業型に転換していく。
○会計法を見直して現行の積算方式を改善し、生コンクリートなど使用材料が品質確保に支障のない適正価格で安定供給されるよう措置していく。
○コンクリート施工において、鋼構造物で部分実施されている「第三者検査」制度を導入するほか、安全・品質確保のために発注者、ゼネコン、製造・納入業者、労働組合の現場協議制度を導入すること。
○ゼネコンによる品質保証制度を抜本的に見直すこと。
第5、建設•生コン産業を近代化し、公共工事の担い手としての労働者の雇用・労働条件と社会的地位の向上をはかること。
○三省協定賃金(公共工事労務費)と現場労働者の賃金実態の乖離をなくすために必要な措置をすすめていく。
○ILO94号条約を批准し、すべての建設、生コン、ダンプカー労働者の賃金・労働条件が、主要大企業平均を上回るよう必要な措置をすすめていく。
○公共工事発注額のうち一定額を物件ことに徴収し、建設•生コン産業における技術者育成、品質管理研修制度を確立する。
○労働基準法、労働組合法に違反した企業(建設業者のみならす建設資材納入業者をふくむ)は、公共工事のすべてのレベルで参加させない原則を確立する。
関生支部が推進する生コン産業政策運動は、「産別賃金、産別雇用、産別福祉」を実現するための産業別労働運動です。
生コン産業再建運動は、中小企業の生コン企業を協同組合に結集させ、ゼネコン・商社・セメントメーカーと対等な取引をおこなうことで、生コン価格の競争ではなく、適正な生コン価格を収受することです。
適正な生コン価格でなければ、前に述べたように「粗悪生コン」によって建造物に悪い影響を与えるのです。
また、適正な生コン価格を実現することで、生コン企業の経営が安定し、労働者の劣悪な労働条件の改善と雇用が確保され生活が安定するのです。さらには、出入り業者には適正な運賃を支払うことで、出入り業者の経営を安定させ、その労働者の労働条件を改善することになるのです。
関生支部の産別運動、生コン産業政策運動は、労働条件の向上だけではなく、社会公共の利益となるものです。
第5回 公判
日時:2019年1月18日 10:00~17:00
第6回 公判
日時:2019年1月25日 13:30~17:00
第7日 公判
日時:2019年1月28日 10:00~12:00
場所大津地方裁判所
第1回 公判
日時:2019年2月1日 13:30~
場所:大阪地方裁判所 大法廷 201
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ
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