逮捕された刑事事件の被疑者(容疑者)や起訴内容を認めない被告人が長期間拘束されて取り調べを受ける実態は、「人質司法」と批判されてきました。保釈されず、拘束が数ヶ月におよぶことも、冤(えん)罪の原因になることもあります。改善策はあるのでしょうか。

「人質司法」とは
逮捕・勾留された被疑者を、自白するまで釈放しないという警察・検察の悪しき慣習。早く釈放されたい一心から、嘘の供述をしてしまう可能性が高く、冤罪事件の温床に。

冤罪事件がテーマの映画が話題に

痴漢の冤罪事件を取り上げた映画では、被疑者の身柄を人質のように長期にわたって拘束し、自白を強要する不条理な司法のあり方、すなわち「人質司法」の実態が明確に描かれていました。
たとえば、通勤時の労働者が電車の中で痴漢に間違われて、警察に突き出されたとします。「やっていない」と否認すると、勾留されて、20日間は身柄を拘束されます。「やった」と認めればすぐに釈放されて、罰金だけで済むケースが多いのです。
会社に知られなければ、クビ(解雇)になることもない。真実を貫いて否認するより、ウソの自白をする方が、はるかに不利益が少ないのです。被疑者がこの現実を知れば、「罪を認めたほうがましだ」となるのが普通です。
勾留期間中は、警察官や検事の取り調べを受けます。勾留の本来の目的は、証拠隠滅や逃亡を防ぐことですが、実際には密室での取り調べが続き、被疑者に自白を迫っています。痴漢事件で証拠を隠滅しようとすれば、被害者を脅して、唯一の証拠となる証言を変えさせるぐらいしかないはずです。家族や会社がある人が逃亡する恐れも低いにもかかわらず、「否認」していると勾留が続きます。

「人質司法」の問題を是正するため立ち上がるが…

痴漢事件だけに限らず、後に「無罪判決が確定」した元厚生労働事務次官の村木厚子さんは、虚偽有印公文書作成などの罪で逮捕・起訴された際、否認したため「勾留が5ヶ月以上」も続きました。3ヶ月を超える勾留は珍しくないのです。
こういった「人質司法」の問題を是正する必要があるという良識ある人たちが、検察不祥事を機に刑事司法改革のために設置された「法制審議会特別部会」に委員として臨みました。その法制審議会特別部会に出席した委員によると、良識ある委員からの指摘があっても、警察や検察出身の委員、裁判官出身の委員は強硬に、「被疑者や被告人の身柄拘束は、刑事司法に基づいて適正に運用されている」の一点張りで、議論は平行線のままだったそうです。特に、裁判官の委員は、感情的になり「適正な運用」を主張して譲らなかったそうです。
また、ある裁判官は「万が一、釈放された被疑者が逃亡したり証拠隠滅したりしたら、事件をつぶしてしまう。自分の判断で事件がつぶれたと批判されるのはイヤですからね」という趣旨の発言をしており、このあたりに、多くの裁判官の本音があるのではないでしょうか。

保釈するケースが増

法制審は2014年に出した答申に、「身柄拘束に関する判断の在り方についての規定の新設」を盛り込みました。2016年の「刑事訴訟法の改正」では、裁判所の裁量による保釈の際に「考慮すべき事情」が明文化されました。しかし、制度を改革する側も、判断を下す側もそろって消極的ですから、どこまで実効性があるかは疑問です。
それでも、最近は痴漢事件で否認している被疑者にも勾留を認めず、釈放するケースが増えているようです。良識のある裁判官もいるのでしょう。さいたま地裁では、若手の裁判官たちが数年前に勾留のあり方について勉強会を開催し、議論して以降、勾留却下率が上昇し、「以前は1%だったのに月によっては11%以上になった」という話しも報道されました。

先述した映画の監督は言います。「こうした流れが拡大し、不必要な勾留が減れば、取り調べに過度に依存している現在の捜査のあり方も変わっていくはずです。人質司法の問題は、法律家のみならず、社会全体の議論にしていかなければ、何も動かないのではないでしょうか。世論を喚起することが重要です」と。私たちには、そのために必要な具体的行動が求められています。

滋賀 恐喝未遂事件
第11回 公判
日時:2019年2月27日 検察側の証人の都合により中止
第12回 公判
日時:2019年3月25日 10:00~17:00
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大阪 威力業務妨害事件
第2回 公判
日時:2019年5月15日 10:00~
場所:大阪地方裁判所 大法廷 201
滋賀 大津生コン協組 威力業務妨害事件
第1回 公判

日時:2019年2月28日 11:00~12:00
場所:大津地方裁判所
ストライキが犯罪か!
労働組合つぶしの大弾圧許さない!
3.10集会
日にち:2019年3月10日(日)
時 間:14:00~16:00 開場:13:30
場 所:大阪市立西区民センター

労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会

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