働く者の地位向上への指標

関西地区生コン支部が一貫して政策闘争を推進してきたのは、政策そのものが目的でなく、私たちの闘いの進むべき道筋を明らかにし、働く人々の労働条件や社会的地位を高めることにあります。
「バブル崩壊」による不況と業界の構造的矛盾を背景に、関西の生コン業界は1990年代に入って業界そのものが崩壊の危機に立ち至りました。とりわけ、1992年後半から94年のわずか2年で大阪を中心として、41もの生コン工場が倒産・閉鎖を余儀なくされました。1953年、関西に生コン産業が誕生して以来、初めての異常事態です。
「業界ぐるみ倒産」の崖っぷちの危機を端的に示すのは、生コン産業を襲った販売価格の値崩れです。「バブル崩壊」ののち、値崩れの波はまたたく間に全国へ広がり、特に札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡をはじめとする大都市では、1980年代を通じて1万3千円台で推移してきた生コンの販売価格が、90年代に入ると、あっという間に1万円台を割り込む異常事態となったのです(※下記資料参照)。
しかもこれは、積算資料の物価版の数字なので、実際にはゼネコンの買い叩きによって、ここからさらに1㎥あたり千円以上の値引きが行われていました。その結果、生産原価を大幅に割り込む販売価格が続いていたのです。後に、大阪広域生コンクリート協同組合設立準備委員会が94年に公表した生産原価が1万4330円なのに、販売価格は9740円、実に4600円もの原価割れだったのです。

過当競争による安値乱売合戦で業界崩壊の危機に

こうした過当競争による生コンの値崩れの結果、①全国各地で倒産や工場閉鎖が相次ぎ、特に大口需要地である大阪・兵庫地域での倒産件数が際だった(41件)こと。②関連労働者の雇用と生活を脅かしていること。③生産原価割れという異常事態によって品質の悪い骨材を使用したり、セメント使用量のごまかしや過積載、不法加水といった手抜き工事が横行。こうした手抜きや品質不良がどれほど深刻な建造物被害をもたらすかは、その後に発生した阪神淡路大震災で衝撃的な形で示されました。
生コン産業の危機は、この産業に直接関わる企業や労働者、行政のみならず、国民生活と街づくりにとって大きな社会的脅威をおよぼす事態になっていたのです。
なぜ、こうした産業の危機が進行したのでしょうか。直接的な要因は、バブル崩壊によって生コンの需要が激減したのに、80年代の新規参入ラッシュで生じた産業全体の過剰設備がそのまま残されてきたことにあります。その結果、極度の需給アンバランスが中小企業同士の受注競争に拍車をかけ、歯止めのない安値乱売合戦が繰り広げられたのです。
本来、安値乱売を防ぐために設立された協同組合も各地で崩壊していきました。中小企業が圧倒的多数を占める生コン産業では、70年代以降、独占禁止法の適用除外指定を受け、共同受注・共同販売を目的とした協同組合が全国各地で設立されました。ところが、セメントメーカーの拡販政策による生コン工場の新増設ラッシュによって各地の協同組合の組織率が激減し(大阪や名古屋ではアウト業者の数がイン業者を上回った)、機能停止や解散に追い込まれたのです。

こうした危機に至った背景には、生コン産業の構造的矛盾がありました。もともと生コン産業は、一方ではセメントメーカーの川下の産業として、他方では建設産業の重層下請化政策の手段として戦後に誕生し、60~70年代の高度成長期に急成長した産業です。この間、セメントメーカーは自らの製品(セメント)の販売拡張の手段として生コン産業を育成・支配してきました。また、ゼネコンも現場工事の負担軽減と品質管理責任を免れるとともに、利益追求の調整弁として生コン産業を利用してきました。労務管理や雇用責任を免れるうえでも、生コンを別産業として育成しつつ支配する方式は、セメントにとってもゼネコンにとっても極めて好都合だったのです。

セメント、ゼネコンの巨大資本の狭間にあって

その結果、全国4400社の実に9割以上が中小企業という生コン産業は、形のうえでは独立した産業でありながら、セメントとゼネコンという巨大独占資本の谷間で両者の強い影響力と支配のもとに従属させられた産業であることを強いられることから、重大な矛盾と問題を抱えることとなりました。それは、セメントの購入と生コンの販売という最も重要な取引において、価格・契約形態など主要な取引条件を自ら決めることができないということです。
常にセメントの拡販政策とゼネコンの買い叩きに翻弄され、両者の利益追求のために犠牲を強いられる立場におかれているのです。そして、それは最終的には中小企業の慢性的な経営不安、労働者の雇用不安や劣悪な労働条件として常に弱い者に押しつけられてきました。
さらに、「バブル崩壊」の荒波は、ゼネコン自身が劇的な受注減によって存亡の危機にたたされ、セメントも主要メーカーが軒並み赤字決算という危機に直面し、両者はその矛盾のはけ口をこれまで以上に生コン業界に求めてきたのです。
ゼネコンは利潤確保のために、品質不安をも「黙認」して一層の買い叩きを進め、セメントは生コン各社を乱売合戦の生き残り競争というふるいにかけて、生コン産業に対して自社の系列支配を強めようとしてきました。
セメント、ゼネコンという巨大企業の自己本位な産業政策のもと、①中小企業の経営危機、②労働者の雇用・労働条件の危機、③公共工事の品質不安という、3つの危機を構造的に深化させたのです。
こうして生コン産業は、全国的に広がった過当競争による値崩れ、過剰設備によって危機を進行させ、その要因として①セメントの販売拡張政策による過剰設備体質、②ゼネコンの買い叩きによって自ら価格形成ができない、③大企業に従属的な体質をもち、業界がまとまることができないという悪循環にあったのです。
つまり、生コン業界が置かれている本質は、中小企業が競争にしのぎを削りあって大企業追随の道を従来どおり進むのか、それとも労働者や労働組合と共通課題を明らかにして政策的に協調し、業界のあり方自身をセメントから自立した中小企業と労働者主導型にしていくのかという重大な岐路に立たされていました。

滋賀 恐喝未遂事件
第12回 公判
日時:2019年3月25日 10:00~17:00
第13回 公判
日時:2019年3月26日 13:10(変更)~17:00
第14回 公判
日時:2019年3月27日 13:10(変更)~17:00
第15回 公判
日時:2019年3月28日 13:10(変更)~17:00
場所:大津地方裁判所
大阪 威力業務妨害事件
第2回 公判
日時:2019年5月15日 10:00~
場所:大阪地方裁判所 大法廷 201
滋賀 大津生コン協組 威力業務妨害事件
第2回 公判

日時:2019年4月2日 11:00(変更)
場所:大津地方裁判所

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