パワハラ指針、批判受け修正したがまだまだ範囲が狭い

職場での発言やふるまいがパワーハラスメント(パワハラ)かどうかを判断するための厚生労働省の指針案が昨年11月20日、大筋で固まり年内にも最終案をとりまとめ、2020年6月から大企業、2020年4月から中小企業にパワハラを防止する対策をとるよう義務づけます。労働側の関係者からは「パワハラとして認める範囲が狭い」との批判の声があがっています。

19年5月に成立した改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)は、パワハラを
①優越的な関係を背景にした言動
②業務上必要な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されること

と定義しました。
具体的にどんな行為がパワハラにあたるかは指針で定めることになっており、労使代表らで構成される労働政策審議会の分科会で検討されました。厚労省は昨年10月の会合で素案を示したましが、ハラスメント被害者の支援団体や労働組合などからの批判を受けたあと、昨年11月20日の修正案を労使が大筋で了承しました。

修正後の指針案は素案と同様、「身体的な攻撃」や「過大な要求」など、厚労省が定めたパワハラ6類型に沿ってパワハラに当たる例と当たらない例を挙げ、仕事から外して長期間、別室に隔離することはパワハラに当たるとする一方、新規採用者の育成のために短期間、集中的に別室で研修させることはパワハラではないとしています。
性的マイノリティーなどの性的指向・性自認や不妊治療などの個人情報を本人の了解を得ずに周囲に伝えることもパワハラにあたるとしました。素案段階でも盛り込まれていましたが、「表現の不十分さ」が指摘され、修正案ではこうした例がパワハラになると周知・啓発することを企業に義務づけることが明記されたのです。

素案段階から削除された項目としては「経営上の理由により、一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせる」ことはパワハラに当たらない、が削除されました。「退職を促す『追い出し部屋』を許容している」といった労働側の批判があったからです。
また、素案では「誤って物をぶつけるなどしてけがをさせる」ことはパワハラに当たらないとしていましたが、批判を踏まえて削除しました。
パワハラかどうかの判断基準として、素案では「身体的または精神的な苦痛の程度などを総合的に考慮」するとしていましたが、「相談した労働者の心身の状況や受け止めなどの認識にも配慮」する、との一文を加えました。野党が求めた参院の付帯決議「労働者の主観の配慮」が反映されました。

…後編につづく

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