「崩れた『安全神話』」

1995年1月17日午前5時46分、兵庫県南部を震源にマグニチュード7.2の大震災が発生。神戸市や淡路島などで震度7の激震を記録。神戸の街は一瞬に崩壊し、日本の「安全神話」も崩れ去りました。
高速道路や新幹線の高架橋が落下し、ビルや住宅が無惨に下敷きになりました。そして、被災地から数々の手抜き工事や欠陥工事が報告され、目を覆うばかりの実態に人災という指摘が広がりました。
阪神淡路大震災では、多くのコンクリート構造物が破壊されました。震災直後から被害の甚大さを伝える現象面でのレポートは数多くありますが、具体的事実に基づき謙虚に被害原因を検証しようとする作業は、一部の学者やジャーナリストを除いてほとんどなかったのです。大震災がかつてなく大きな都市直下型地震であったとしても、公共建造物の被害原因をすべて地震の大きさのせいにすることはできないのです。連帯関生支部は、現場に携わる関連労働者の責務としていち早く、被害を拡大させた原因究明へ調査活動を始めました。
被害現場に足を踏み入れると、いきなり奇妙な現象に目を奪われました。公共工事の安全神話を象徴してきた山陽新幹線や阪神高速道路が、隣接するビルや民家がほとんど被害を受けていないのとは対照的に、随所で無惨な倒壊・崩壊現象を示し、衝撃を与えました。

「施工・品質不良の驚くべき実態(山陽新幹線の現場から)」

調査は、震災以前から連帯関生支部が「施工・品質不良」を指摘してきた山陽新幹線や阪神高速道路の崩壊現場から着手しました。神崎川に隣接する最も大阪府に近い尼崎市の食満(けま)地区。活断層からほど遠いこの地区では、周辺住宅で全壊・半壊した建造物は一軒もないのに、新幹線の橋脚のみが激しく損壊し、レールが浮いて橋台が落下していました。橋脚の崩壊箇所を点検すると、橋台を支える梁下約30センチの付け根部分が横一線に切ったような平面が随所で確認されました。これはその後、小林一輔・千葉工業大学教授が記者会見で発表したように、建設当時の突貫工事のもとコンクリートが規定通りに打設されず、橋脚と橋台が一体化されていなかったという重大な施工不良を示すものでした。しかもこの施工不良は、全線におよんでいると想定されるお粗末さです。橋脚のコンクリートも随所で不良箇所が確認されました。かぶりが薄く内部の鉄筋が露出して、サビが表面に浮き上がっていたり、ひび割れしている箇所が異常に多い。使用された鉄筋の種類や圧接、配筋ムラにも施工不良が多く、鉄筋が圧接部分でいとも簡単に弾けていたのです。山陽新幹線の建設当時、海砂を洗浄・除塩せずに大量に使用していたことも関係者の証言で明らかになりました。塩化物使用規制の建設省通達(1975年10月)まで、川砂に比べて安価なことから塩分を含んだ海砂が大量使用されたこと。24時間体制の突貫工事のもと、現場のチェック体制が全くなく生コンに大量の水を加えた「シャブコン」が常態化し、打設時間を短縮していたことも関係者の証言や破壊されたコンクリート片の検査結果から明らかとなりました。高架橋が崩壊した7地点は、いずれも山陽新幹線が開通する直前の突貫工事による急速施工区だったのです。
重層下請けの建設現場での責任の分業化と突貫工事、「安かろう、悪かろう」の建設資材を大量使用したことが被害を拡大させた要因であったことが、調査によって明らかとなりました。また、大震災で崩壊した建造物や新幹線、高速道路を調査した日本建築学会の二村誠二・大阪工業大学講師(建築材料学)も、コンクリートを劣化させる「アルカリ骨材反応」が広範囲に発生していたことを発表。「頑丈とされる公共建造物が壊れたのは、地震の強さのせいだけでなく、品質管理の悪さも一因だった」と指摘しました。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ
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