「市民活動を抑圧する『威力』概念の増殖」

威力業務妨害における「威力」とは、判例上、「人の自由意思を制圧するに足りる犯人側の勢力」などと定義されてきた。労働組合は、団結した労働者の行動によって、使用者と交渉し、決裂すれば、ストライキによって事業をストップさせるわけであるから、もともとその行動は「威力」に当たりうる。
しかし、日本国憲法は憲法28条で、労働者の団結権・団体交渉権・争議権を憲法上の基本的人権として保障している。労働基本権の保障は、労働者の団結および団結活動に支配・干渉してはならず、団結活動に対して刑罰権を発動してはならないという保障を含んでいる。労働組合法1条2項は、このことを確認して、刑事免責の原則(刑事責任からの解放)を定めている。
沖縄の例のように、市民による環境保護のための活動も威力業務妨害に問われる場合がある。このような場合に比べても、労働組合に対する同罪の適用は、労組法の刑事免責の主旨を尊重し、慎重な上にも慎重な配慮が必要である。

「この弾圧を見過ごしてはならない」

関生支部に加えられている弾圧は、現時点では共謀罪が直接に適用されてはいない。しかし、労働組合の日常的な活動の一部を「犯罪」事実として構成し、これに関与した組合員を一網打尽で検挙し、デジタル情報の収集によって関係者間の共謀を立証することで犯罪としようとしている点において、共謀罪型弾圧の大規模な開始を告げるものだ。
組織的威力業務妨害罪は共謀罪の対象犯罪である。このような共謀罪型弾圧がが、仮に見過ごされ、捜査手法として定着してしまうと、将来、秘密保護法違反などの事件が起こった際に、同様の共謀罪型弾圧がなされ得る。この重大事件について、産経新聞などが警察発表をそのままにしたような報道をしているほか、一般のメディアは黙殺して報じない。
確かに、ほとんどの労働組合がストライキをしなくなっている現代の日本では、関生支部の(本来は労働運動として当たり前であるはずの)活動は珍しい存在になっているかもしれない。今回の弾圧は、労働組合と中小企業協同組合が連携して、ゼネコンと対等に渡り合うような産業別労働運動を敵視し、これを解体しようとする政治的な性格を帯びている。戦前の治安維持法による弾圧も、最初は共産党員とその周辺団体から始まり、新興宗教、社会主義運動、既成宗教、さらには満鉄調査部や企画院のような公的機関、ジャーナリストにまで拡がっていった。「過激な労働組合」がやったことで自分たちには関係ないと見過ごしていると、戦前のように、同様の弾圧が他の労働組合や原発反対・環境保護のための市民運動などにも飛び火しかねない。関生支部の労働運動については、様々な意見があり得る。しかし、政治的な系列や労働運動上の方針の違いを乗り越えて、最初に共謀罪型弾圧のターゲットにされた生コン支部を幅広い勢力によって支援することが、弾圧拡大を食い止める上で、決定的に重要である。
逮捕された組合員には7ヶ月以上の長期勾留にさらされている者もいる。すでに、大阪、東京で、関生支部を応援する市民集会が開かれている。今も勾留されている組合員の速やかな釈放と公正な裁判を求める声を広げていきたい。

海渡雄一(かいど・ゆういち)
1955年生まれ。弁護士。日本弁護士連合会秘密保護法対策本部副本部長。著書に『秘密保護法 何が問題か』(岩波書店、共著)、『何のための秘密保全法か』『共謀罪とは何か』(岩波ブックレット、共に共著)など多数。

本日18:30~20:30
学働館・関生4Fホール
権力はなぜ、関生支部を弾圧するのか?
熊沢 誠さん(労働研究家・甲南大学名誉教授)

 

 

 


5月15日8:00~18:00
大阪地方裁判所前公園(西天満若松浜公園)
5・15労働組合つぶしを許さない座り込み集会

 

 

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ
PDF

署名のお願い
滋賀県警本部長あて〈団体署名〉PDF
大津地方裁判所長あて〈団体署名〉PDF
大津地方裁判所長あて〈個人署名〉PDF
◆署名の理由PDF
大阪府警本部長あて〈団体署名〉PDF
大阪地方裁判所長あて〈団体署名〉PDF
大阪地方裁判所長あて〈個人署名〉PDF
◆署名の理由PDF
※PDFのところをクリックしていただき署名用紙をダウンロードしてください。
●署名の集約
第3次集約 5月末日(6月中旬提出)
●署名の送り先
〒111-0051
東京都台東区蔵前3-6-7 蔵前イセキビル4F
全日本建設運輸連帯労働組合中央本部
●電話番号:03-5820-0868

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いま、まっとうな労働運動に加えられている資本による攻撃と「共謀罪のリハーサル」ともいえる国家権力による弾圧の本質を明らかにする!
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