「警察から労働組合法について“お説教”された」
釈放されたN執行委員にインタビュー

12月5日(木)昼、N執行委員に大阪地裁の食堂でインタビューした。このインタビューは、大阪ストライキ事件の公判(N執行委員も被告とされた1人)の昼休憩時間におこなったものである。
N執行委員は11月14日、和歌山広域協組事件で不当逮捕されたが、インタビュー前日の12月4日朝、処分保留で21日ぶりに釈放されたばかり。
3回目の逮捕だったが闘志満々。疲れた様子も見せず、違法な取り調べの様子や、逮捕の狙いが何かについて語ってくれた。

和歌山広域協同組合事件とN執行委員の逮捕の経緯

まず、N執行委員が逮捕された和歌山広域協組事件についてみておこう。
2018年春、和歌山県有田郡の生コン工場で働く労働者が関西生コン支部に加入した。これに対し、和歌山広域生コン協同組合の理事長が元暴力団員らを関生支部組合事務所周辺で徘徊させ、組合結成を妨害しようとした。関生支部はただちに抗議行動を組織し、和歌山県の協組事務所周辺で宣伝活動をおこないつつ、理事長に謝罪を要求したことが「強要未遂」と「威力業務妨害」とされている。
この事件では、N執行委員逮捕に先立つ4か月前の今年7月、3人の支部役員が逮捕されている。また、それ以前から多数の元組合員が事情聴取を受けている。11月の時点ではすでに裁判手続きもはじまっていて、いまさら収集しなければならない証拠などあるはずがない。それにもかかわらず、今年9月に大阪ストライキ事件と滋賀コンプライアンス事件による10か月間もの勾留から保釈されたばかりのN執行委員を和歌山県警は11 月14日に逮捕。さらにもうひとり、京都拘置所に勾留中のY副委員長も逮捕したのだった。(Y副委員長、N執行委員は、11月27日の勾留理由開示公判で、この逮捕の不当性について堂々たる意見陳述をおこなったのだ。

しかし、そもそもこの事件、元暴力団員を差し向けて組合加入の妨害を企てた側にこそ非があるのは明白であり、これに抗議する組合活動が「強要」とか「威力業務妨害」などという罪に問われるということ自体が本末転倒というべきデタラメさ。それにもかかわらず、裁判がすでにはじまっているのに新たにふたりを逮捕したのは輪をかけて無理筋というほかない。
結果、12月4日、N執行委員は処分保留で釈放されたのだった。(Y副委員長もこの件では処分保留となったが、残念ながらそれ以前からつづく京都の一連の事件による保釈が認められていないので京都拘置所に戻された)

勾留理由開示公判の意見陳述の要約は後日、掲載

主な一問一答

――釈放されたのが 12 月4日朝だった。
N:「朝一番、いきなり釈放と言われた。荷物をまとめて出たらだれも迎えにきていない。弁護士事務所に電話したら、『えっ、出られたんですか?』と驚いていた。釈放について警察はどこにも連絡していなかったとわかった。仕方ないから途中まで歩いていたら、弁護士事務所から連絡を受けた迎えの仲間がようやく来た」
――取り調べはどんな様子?
N:「黙秘します」と告げ、名前も言わなかった。“N”と勝手に書いた調書を作ろうとしたから、抗議してやめさせた。こちらも話さないから、ほとんど取り調べはなかった。
おもしろかったのは、警察とのこんなやりとり。
警察:今回は完全に公判維持できる。
N :無理やで。労働組合活動については刑事免責となっているのを知らんのか?
警察:自分らのは組合活動じゃない。あきらかな脅迫だ。
N :暴力団を使ったことに抗議したらいかんのか?
警察:自分ら、刑事免責とかいうが、労働組合法にはそんなこと書いてない。自分ら、暴力せえへんかったらなんでもいけると思うてるやろ

逮捕の狙いは2点ある

――なにが逮捕の狙いだったんだろう。
N :「ひとつは、関西生コン事件とは別の『白バス事件国賠訴訟(※)』で予定されていた自分の証人尋問を妨害すること。去年11月に大阪のストライキ事件で逮捕されたあと、19年2月に勾留されていた大阪拘置所で証人尋問をおこなうことになっていた。そうしたら2月18日に滋賀県警のコンプライアンス事件で逮捕されて滋賀に移送されたので尋問は延期になった。そして、9月に保釈されたので今度は11月15日に大阪地裁で証人尋問をやる予定だった。すると、前日に今回の逮捕。はっきりしているのは自分に真実を証言させたくないということだ。白バス国賠訴訟の公判は来年1月10日が最後と裁判官は言っているから、もし今回釈放されなかったら自分の証人尋問はなくなっていただろう。釈放されたが、今後も警察がなにをするわからない」

※Xバンドレーダー配備反対集会に、大阪の市民運動が関生支部のマイクロバスに分乗して参加。経費を割り勘したことが無許可の有償行為だとして道路運送法違反で逮捕された事件。反基地運動への弾圧として国家賠償訴訟がつづいている。

――証人尋問といえば、労働委員会事件の証言も予定されている。
N :「それがふたつめの狙いだと思っている。関西生コン事件では刑事弾圧事件だけじゃない。大阪広域協組の指示で、去年初めから多くの生コン業者が関生支部の日々雇用組合員の就労を拒否している。この不当労働行為事件が大阪府労委にたくさんかかっていて、12月以降、自分が証人で呼ばれている事件がいくつもある。これも妨害したかったのではないか?」

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ 
PDF


12月11日の大阪地裁での公判は通常通り開催され、午前中で終了する予定です。傍聴お願いします。
ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?(労働組合なのに…) 単行本 – 2019/1/30
連帯ユニオン、小谷野 毅、葛西 映子、安田 浩一、里見 和夫、永嶋 靖久(著)
内容紹介
レイシスト(差別主義者)を使って組合破壊をしかける協同組合、ストライキを「威力業務妨害」、職場のコンプライアンス違反の告発を「恐喝」、抗議を「強要」、組合活動を「組織犯罪」、労働組合を「組織犯罪集団」と言い換えて不当逮捕する警察。
いま、まっとうな労働運動に加えられている資本による攻撃と「共謀罪のリハーサル」ともいえる国家権力による弾圧の本質を明らかにする!
お問い合わせは、連帯ユニオンまで TEL:06(6583)5546 FAX:06(6582)6547
アマゾンでも購入することができます。
こちらから