最高裁決定を活用して、アスベスト被害者を救済する運動を展開しよう

首都圏の元建設作業員と遺族ら337人が、建設現場で建設資材に含まれる「アスベスト」(石綿)を吸って中皮腫や肺ガンになったとして、国と建材メーカー42社に計約120億円の賠償を求めた裁判で最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は国の上告を退ける決定を出しました。

最高裁の決定により、国に約22億8千万円の賠償を命じた二審・東京高裁の判決が確定しました(2020年12月14日付決定)。同様の集団訴訟は全国で17件ありますが、最高裁の判断が出たのは初めてです。

「個人事業主も救済の対象」

労働者の健康を守る労働安全衛生法は、企業が雇用する「労働者」を基本的に対象としており、「一人親方などの『個人事業主』も救済範囲に含まれるか」が、大きな争点でした。今回の最高裁決定で、「一人親方も対象とした」高裁判決が確定したのです。

「一人親方も元請け業者から使用されている」

「個人事業主」として扱われ、労働安全衛生法の「労働者」にあたらない「一人親方」の問題が、全国各地の裁判に共通する争点となっており、2012年~2017年に出た7件の一審判決は、いずれも「一人親方」は救済範囲に含まれず、高裁でも2017年10月の東京高裁は「一人親方」を対象外としました。
ところが、今回の最高裁決定の対象となった2018年3月の東京高裁の判決は「労働安全衛生法の趣旨や目的は労働者以外にも当てはまる」と初めて判断し、「一人親方も実質的には『元請け業者から使用』されている実態」を踏まえ、国の賠償責任を認めたのです。
その後、一人親方も救済する高裁判決が4件続き、風向きが原告側の主張に流れつつあるなかでの最高裁決定となりました。決定を出した第一小法廷には他に3件の訴訟が係属しており、今後も同じ判断を踏襲するとみられます。

「裁判をせずに救済を受けられる基金制度の創立」

東京訴訟の弁護団・佃俊彦事務局長は年12月16日、「いま裁判を起こしている人は全被害者の1割にも満たない。被害者が裁判をせずに迅速な救済を受けられる基金制度をつくるべきだ」とコメントしました(2020年12月17日付朝日新聞)。

「フリーランスの保護が課題」

国はこれまで労働基準法の対象から外れるとして「一人親方」への責任を否定してきました。しかし、働き方の多様化が進むなか、労働基準法の対象ではない「フリーランス」などをどう保護するかが課題になってます。「安全や衛生は同じ職場で働く人に共通する」とした高裁判決の確定により、フリーランスの保護をめぐる議論が発展することは確実です。

「建材メーカーは、共同不法行為」

一方、第一小法廷は、建材メーカーの賠償責任を否定した高裁判決を不服とする元建設作業員ら原告の上告は受理し、2021年2月25日に弁論期日を指定しました。二審判決を変える際に必要な手続きの「弁論」が開かれることで、建材メーカーの責任を認める可能性があります。
今後の上告審では、建材メーカーの賠償責任も認めるかどうかが焦点です。アスベスト(石綿)被害は確かでも、現場では複数の建材が使われているため、原因となった建材が特定できない点が争いになってきましたが、「民法」にはこうした場合に連帯責任を負わせる「共同不法行為」という考え方があり、原告側は市場占有率などから各企業の負担割合を算出できると訴えています。

「アスベスト被害者の救済を目指して行動を」

アスベスト(石綿)を吸い込んだ元建設作業員らが国や建材メーカーに賠償を求めた一連の訴訟で、最高裁は「一人親方も救済の対象」とする決定を下しました。
弁護団は高齢の原告が多いことから、被害者が裁判をせずに迅速な救済を受けられる基金制度など、救済の枠組みの設定を急ぐよう国に求めています。
私たち労働組合には、今回の最高裁決定を活用した運動が求められています。中皮腫などの疾患は、アスベスト(石綿)を吸ってから数十年経ってから発症します。建設現場や解体現場、港湾労働などでアスベスト(石綿)の被害を受けている労働者や個人事業主の救済を目指して行動しましょう。
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

ハーバービジネスオンライン
「関生事件」が揺るがす労働基本権
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なぜ、いま戦後最大規模の刑事弾圧が労働組合に加えられているのか!?
641日勾留された武委員長が語る

「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
・武建一という人物はいったい何者なのか?
そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一

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