12.17関生支部から学ぶ学習講演集会(No.2)
「関生支部のような労働組合を創っていくことが大切だ!」

木下武男(労働社会学者・元昭和女子大学教授)

2020年12月17日、東京都内で関西生コン弾圧を許さない東京の会主催で「関生支部から学ぶ」学習講演会が開催されました。木下武男さんが講演し、活発な意見交流の場となりました。

前回からのつづき…

「2.産業民主主義のもとでの関生の到達点」

その到達点については、11.1集会で挨拶した通りです。年収800万円とか、日々雇用でも一日2万5千円とか、あるいは年間の休日期間が125日間プラス有給休暇。これは明らかに日本では突出しているのです。ドイツ、フランス並みのものを勝ち取っている。そうした小さな関西という、そして小さな生コンという業界の中で、実はヨーロッパのような労働条件を勝ち取っている。これは経営者全体からすれば我慢がならないことです。
つけ加えると、元朝日新聞の竹信三恵子さんが雑誌『世界』に書いたのもここです。竹信さんはシングルマザーの件を二人紹介しています。月収は27万円くらい。前職では12万~13万円くらいだった。その職場には関西生コンの支部がなかったのです。生コン業界の関西地域では労働協約の拡張適用のような賃金の社会的相場ができているのです。労働組合のないところでも適用されています。
また生コン運転手は女性にとって働きやすい職種になっているのです。シングルマザーにとって子育てしながら働くことができるのです。今、女性が関西では生コンの職場に進出しています。女性の活躍とか、ワークライフバランスとか言っても、全く実現していません。しかし産業別労働組合の関生支部の領域ではそうしたものが実現しているのです。
だからお話ししたかったことは、産業別組合の労働組合ならば、団体交渉の手段を使って高い水準の労働条件を実現できる。これが私は11.1労働者集会で「労働組合には社会を変える力がある」と言ったことです。労働組合は労働社会の範囲だけれども、そこに根を下ろすのなら、働き方と暮らし方を変えていける。そのようにして社会を変える力が労働組合にある。そのことを強調したかったのです。

「Ⅱ 産業別統一闘争と82年問題」

産業別労働組合とは何かという前に、実態として関生はどういった闘いをやってきたのかということを先にお話ししておきたいと思います。

「1.組織化の関生方式」

座談会のはじめのところで組織化の「受け皿」の話しをしています。言いたかったのは、例えば東京のレベルで、生コン労働者が組合に加入することのできる「受け皿」をつくる必要があるということです。私は30年ほど前から「受け皿」論という形で組織のあり方について提起してきました。「受け皿」論というのは、これまでの単産(企業別組合の連合体)の中に、個人加盟の受け皿をつくっていくことです。あまり受け入れられませんでした。ただ全労連系の出版労連で、いち早く「出版ネッツ」という出版のフリーランスの受け皿が30年くらい前に創られました。それから小さい零細企業で働く労働者が個人で加入できる横断的な個人加盟の受け皿として、「ユニティー・ユニオン」を創りました。それまでは個人で労働組合に入れなかった。小さくても企業別組合をつくって加盟して下さいということだったのです。今でもそんな労働組合はたくさんあるでしょう。
しかも、30年前の「受け皿」論とは時代も違います。非正規労働者や、正規雇用でも転職して労働する労働者が2000年以降、急増しています。労働市場が変わったのです。「受け皿」というよりも、個人加盟組織をしかも業種別・産業別に創ることが急務です。
東京の生コン業界では、例えば東京生コン支部というような初めから個人で入れる組織をつくることが必要でしょう。
東京では日々雇用が多いので転々と職場を変わってしまう。そういった人たちが加入できる組織のあり方が必要とされているわけです。福祉関係でも、個人加盟の組織ではないのがあります。一方、総合サポートユニオンというのがあります。これは最初から個人加盟です。
東京の生コンの労働者が入れるような「受け皿」をまず創る。1人増え、2人増え、3人増え、それで十分なのです。関西生コンが1965年に支部をつくったときに、個人加盟の業種別支部でした。企業組合ではありません。1960年に関生共闘会議というものがあって、これを母体にしながら1965年に個人加盟の業種別の単一組織を創ったのです。これが産業別労働組合としての質を持った出発点となりました。
「関生のような労働組合」という場合、まずは、単一指導部のもとで業種別の個人加盟組織を創ることです。「関生のように闘おう」ということは、至る所にこれを創ることです。これが組織化の関生方式と言って良いでしょう。

No.3につづく。

※「月刊労働運動2021年2月号」の記事。発行責任者・編集者から許可を得て掲載しています。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

ハーバービジネスオンライン
「関生事件」が揺るがす労働基本権
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日刊深夜快速Vol.3551/水曜版・週刊大石ちゃん自由自在(仮)~関西生コンスペシャル・前編~ ココをクリック

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なぜ、いま戦後最大規模の刑事弾圧が労働組合に加えられているのか!?
641日勾留された武委員長が語る

「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
・武建一という人物はいったい何者なのか?
そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一

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