「憲法上保障された労働組合の行動を否定する裁判所」~関生支部・強要未遂事件で不当判決!~

久掘 文弁護士

関生支部に対する一連の刑事弾圧のうち、いわゆる「加茂生コン事件」について、2020年12月17日、京都地方裁判所第3刑事部において不当判決が出されたので報告します。

本事件は、日々雇用組合員Aの組合加入公然化をきっかけに、会社が、Aのタイムレコーダーの撤去、自主廃業予定の表明、組合からの内容証明郵便の受領を拒否して団交に応じようとしない、毎年発行していたAの娘が保育園に通うために必要な就労証明書を発行しないなどの労働組合否認の態度に終始したため、組合員らが、団交の開催や就労証明書の発行等を求めて繰り返し会社を訪問したところ、その際の要求行為や会社周辺での監視行為が強要未遂にあたるとして起訴されたものです。

「組合の要求が強要罪の実行行為にあたると判断した裁判所」

検察官は、公然化から約1ヶ月半にわたる組合員の要求行為のうち、①Aの正社員化要求②一時金の支払要求③就労証明書の発行要求が強要罪の実行行為にあたると主張しました。
裁判所は、①②については、団交要求書に記載があるのみでこれらの要求行為は無かったと判断しましたが、③のうち、会社取締役Yが体調不良を訴えた後の組合員の要求は「Yに対し、継続的な訪問及び要求行為、監視行為をやめてほしければ就労証明書の作成・提出をするよう、黙示的に身体、自由、財産に対する危害を加えかねない気勢を示して害悪を告知した」として、強要罪の実行行為にあたると判断しました。

「子ども子育て支援法は、法令上の義務を定めた規定ではない」

弁護人らは、事業主は国や地方公共団体が講ずる子ども子育て支援に協力しなければならないと定める「子ども子育て支援法4条」を根拠に、会社には就労証明書を発行する法令上の義務があったから組合員は義務のないことを行わせようとしていない、と主張しました。
しかし、裁判所は、「同条は抽象的・一般的な義務を定めるものにすぎず具体的な義務を定めた規定ではない」と弁護人の主張を退けました。

「会社の対応が組合に不誠実だったと認めつつ有罪判決」

また、弁護人らは、就労証明書の発行を受けるという正当な目的のもと、これを拒否する会社に対して要求を続けた組合員の行為は、「労働組合法1条2項の正当行為にあたり違法性がない」と主張しました。
ところが、裁判所は、「組合員の行為の目的が正当であったことや、会社の対応が組合にとって不誠実と捉えられてもやむを得なかったことは認め」つつも、「なお会社の対応が改善しないという状況下において、組合としては、『しかるべき法的手段に訴えるのであればともかく』、さらに心理的圧力を加えて要求を通そうとすることは、いかに労働組合であっても許されるものではない」として組合員の行為は正当行為にはあたらないと判断し、有罪判決を下しました。

「労働組合の存在を否定するに等しい判決を控訴審で覆す」

労働組合は、「労働者の権利向上のために団結し行動することが憲法上保障されている団体」です。ところが、本判決は、労働組合否認の態度が一向に変わらない使用者に対し、「労働組合員が翻意を求めて交渉を続けることは、使用者に心理的圧迫を加えることになるから犯罪に当たる」と言うのです。
不誠実な対応を続ける使用者に対して労働組合が粘り強く交渉することが許されないのであれば、労働組合はその存在意義を失ってしまいます。このような判決がまかり通るのであれば、刑事罰を恐れて労働組合の活動は萎縮し、法令を遵守しない使用者は野放しになる一方です。
労働組合の存在そのものを否定するに等しいこの不当判決を、控訴審では必ず覆し、無罪判決を勝ち取るべく、弁護団一丸となって頑張っていきます。(担当は森博行弁護士と久掘弁護士)

※なお、本件は現場で活動していた組合員2名についての判決であり、共犯として起訴された組合委員長と副委員長については審理継続中です。
※「La-la通信2021年2月1日」に掲載されている記事を久掘弁護士の許可を得て掲載しています。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

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なぜ、いま戦後最大規模の刑事弾圧が労働組合に加えられているのか!?
641日勾留された武委員長が語る

「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
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そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一

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