和歌山広域協組事件第5回公判、6月17日、和歌山地裁

連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が6月17日、和歌山地裁で開かれました。当日の公判は、検察側の証人尋問でした。

「和歌山広域協組事件とは」

和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、組合員らを脅すなどした行為に対して、2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。

「遮へい措置の審理」

第5回公判は、検察側の証拠調べで、被害者とされている和歌山広域協組の女性事務員(当時)と、協組の取引先とする建設会社の社長らの証人尋問です。
法廷では「遮へいの措置」が取られ、証人の入廷時や退廷時と、尋問中の証言台の周りに、衝立が置かれるというなかで開廷されました。
検察側の主尋問では、事件とされている当日(8月22日)のことが尋問され、4人の証人は検察のストーリーに沿った証言を行いました。

「検察官も大変」

協組の女性事務員以外の取引先ら3人の主尋問では、検察側が予定していた証言が得られない様子も見られるなど、検察官も苦労されていました。建設会社の社長の1人は、証言台で証言している最中に、携帯電話の呼び出し音が鳴り出しました。その後の証人には、携帯電話の電源OFFを確認するなど検察官も大変です。

「弁護側の反対尋問」

弁護側の反対尋問では、協組の女性事務員に対して、第2回公判で取り調べをした当日の映像をもとに尋問。
女性事務員の組合員らが「怖かった」、組合員らに「業務を妨害された」との証言に対して弁護人は、「当初、組合員4人が事務所に入ってきた(実際は3人)」こと。女性事務員が組合員らに「すみません。もうやめてください」「もうちょっと落ち着いてもらえませんか」と注意したこと。事務所に電話がかかってきたときに「電話に出るので静かにしてください!」と組合員らに毅然と注意したこと(映像では、電話応対が終わるまで、組合員らは黙っていた)。お茶や水、アイスコーヒーを組合員らに出したり、灰皿を交換したこと。コピー・ファックスなどの複合機を使って仕事をしていたこと。取引先からの電話対応。定時に帰れたことなどについて尋ねました。
女性事務員は、組合員らへの発言や複合機の使用などは概ね認める証言をしました。お茶を組合員らに出したのは、M理事長の指示だったが、2回目以降のアイスコーヒーや水は、理事長のコップに継ぎ足すついでに、組合員らにも出したと証言。
弁護人の「タバコを買いに行ったときに、なぜ警察に通報しなかったのか」との質問には、「自分の携帯電話は録音するために事務所のデスクに置いていたから」と答えましたが、弁護人の「公衆電話での通報はしなかったのか」との質問には、「頭が回らなかった」と答えました。「定時までに帰ってくれてよかった、という気持ちはありましたか」との質問に「あった」と答えました。
弁護人の「協組の事務所に取引先が訪問して生コンの注文をすることが多いのか」との質問には、「取引先からの生コン注文は、電話・ファックスが主で、事務所に直接きて注文するのはイチゲンさんだ」と答えていました。

「暴力団関係の質問になると、検察官から『異議』が発せられる」

2人目の建設会社作業員は、弁護人の質問に対して「覚えていない」「わからない」という答えが多く見られました。
3人目の建設会社社長は弁護人の質問に「下請けという呼び方は嫌いだ。M氏の会社とは協力会社という関係であり、M氏の下請けをしている」などと答えていました。
続いて、弁護人の和歌山営業所についての質問に、建設会社社長は「どうしても答えなければならないか?」と発言したところ、検察官から「異議」が発せられ、裁判官は検察官の異議を認めました。
証人の社長の会社は、和歌山県知事から「建設業者に対する建設業許可取消処分」(平成30年7月11日付)を受けており、「取り消しの原因となった事実」には、「株式会社○○の元和歌山営業所長は、和歌山営業所長であった当時、『暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条6号に規定する暴力団又は同号に指定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者に該当している』ことが判明した」と処分の理由が通知書に記載されています。
この事実を証言させないために、検察官は「異議」を発したのでしょう。この検察官の対応は、前回の公判(5月27日)でN理事長の証人尋問でも見られたように、「暴力団関係者との関連」についての証言は、全力で阻止するという検察側の方針がわかります。

「M理事長とは長年の付き合い」

4人目の建設会社社長は弁護人の質問に対し、「M理事長とは20~30年の付き合い。プライベートで食事もする。和歌山広域協組ができる前は、M理事長の会社から生コンを購入していた」と証言。
さらに「生コンの発注は、電話・ファックスですることが主で、和歌山広域協組の事務所に行くのは、遊びに行く、顔を出すというとき」「(事件当日)帰る途中に和歌山広域協組の事務所を訪問しようとしたのは、大きな工事を請けたので、あいさつしとこうと思った。ついでに生コンの発注も依頼するつもりだったが、生コン打設は翌日のことではなく先のことだったので、電話・ファックスでしようと思い、和歌山広域協組の事務所に立ち寄らなかった」などと証言しました。

「反対尋問で、多くの成果を獲得した」

公判終了後、弁護団は「本日の公判では、『怖かった。業務を妨害された』『生コンの注文が出きなかった』などの検察側主尋問の証言に対して、反対尋問では多くの成果が獲得できた。引き続き無罪判決を目指して取り組む」と報告がされました。被告人とされている当事者からは「無罪を勝ち取るまで闘う」と引き続きの支援が呼びかけられました。

「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」

午前、午後と約5時間半という長時間にわたる証人尋問に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさん、ありがとうございました。遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさんに感謝します。
次回の第6回公判は、7月8日(木)、10:00から17:00まで、検察側の証拠調べで、Y生コンの社長と和歌山県H・I協組理事長の証人尋問です。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

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「関生事件」が揺るがす労働基本権
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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20

業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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なぜ、いま戦後最大規模の刑事弾圧が労働組合に加えられているのか!?
641日勾留された武委員長が語る

「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
・武建一という人物はいったい何者なのか?
そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一

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