警察国家と監視社会を許さない行動を展開しよう
イギリスは「監視カメラ大国」として知られます。イギリスの報道によれば、ロンドンだけで、監視カメラは40万台を超えるとのこと。1990年代に防犯目的で政府が推進し、2005年のロンドン同時多発テロを機にさらに拡大しました。テロや凶悪犯罪が絶えない社会で市民の理解を得てきたこともあります。
「車体に『顔認証』と記された警察のバン」
その監視カメラ社会は、人工知能(AI)によりさらに「進化」し、顔の特徴から人を見分ける「顔認証」技術が登場しました。
イギリス西部ウェールズ地方に住む大学職員は2017年12月、カーディフの商店街にクリスマスプレゼントを買いに出たところ、車体の腹に「顔認証」と記された警察のバンが1台、路上に止まっているのを見かけました。大学職員は、「自分の顔がスキャンされたのか」と気味悪く思っていましたが、翌年3月、ガーディフで平和デモに参加した大学職員は、通り向かいに昨年見かけた同じ警察のバンを見つけ、今度はゾッとしたといいます。
「警察の野放図な利用は許されない」
「顔認証技術は、私を含む参加者に向けられていた。市民の安全と権利を守るべき警察による、威圧と感じた」と、大学職員は人権団体に相談し、警察の顔認証技術の利用はプライバシー権の侵害で違法だと裁判に訴えました。2019年9月の一審判決は敗訴しましたが、2020年8月、日本の高裁にあたるイギリス控訴院が判断を覆し、大学職員が勝訴しました。
イギリスに顔認証利用に特化した法律はまだなく、警察は、監視カメラの設置ルールとデータの扱いを定めたデータ保護法などに照らし、適正だったと主張しましたが、判決は「顔認証を使うシーンなどのルールがあいまいだ」と指摘しました。肝心の「顔の照合リスト」を誰がどう作るかで、「警察に過度の裁量が与えられている」ことを問題視したのです。技術そのものの捜査での有用性には理解を示したうえで、「警察の野放図な利用は許されない」ということです。
「差別や人種による不公平を助長してはならない」
アメリカでも、黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」(BLM)運動を契機に、警察による顔認証利用への懸念が相次ぎました。
アメリカ大手IT企業のIBMは昨年6月、アメリカ議会下院に宛てた手紙の中で、顔認証システムの一般提供をやめると表明しました。アービント・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は「テクノロジーは透明性を高め、警察が社会を守るのにも役立てられるが、差別や人種による不公平を助長してはならない」と述べ、開発企業の立場から法整備の必要を訴えたのです。
アマゾンも同様の趣旨で、自社の顔認証システムを警察が使うことを1年間中止しました。マイクロソフトも一時的な取りやめに踏み切りました。これらの判断は、アメリカ・ミネソタ州で白人警官が黒人男性を死なせた事件が起きた直後のことです。
顔認証は「黒人を見分ける精度が低い」という研究結果もあり、「警察の差別的な捜査姿勢」と相まって、「誤認逮捕などを招きかねない。BLMデモの参加者の監視につながるのではないか」との指摘が出ていたのです。
「市民は、顔認証の防犯目的利用への期待がある」
イギリス・ウェールズの警察当局は「(判決の指摘部分に)対応することで運用は可能」との立場を示し、利用を諦める気はなさそうです。
AIやデータを専門にするロンドンのエイダ・ラブレス研究所が2019年9月に出した調査結果によると、顔認証の用途として回答者約4100人の支持が最も高かったのは「警察による犯罪捜査」の70%、「スマートフォンのロック解除機能(54%)」や「空港でのパスポート代わり(50%)」を上回りました。一方では、「スーパーの客の動向把握(7%)」や「学校での生徒の態度監視(6%)」は敬遠されることもわかりましたが、イギリスでは市民にも、顔認証の防犯目的利用への期待があるのです。
「警告8件のうち7件は間違いで、残る1件が検挙につながった」
ロンドン警視庁は昨年、顔認証カメラの本格運用を発表しました。採用するのは、日本で開発をリードするNECのシステムです。使用場所はネットで周知され、結果も公表されます。
コロナ禍の影響で、最後の運用は昨年2月、繁華街のオックスフォード・サーカスでした。開示資料によると、約8600人の顔が認識処理され、約7300人分の「リスト」と照合された結果、システムによる警告は8件。うち7件は間違いで、残る1件が検挙につながりました。
「警察国家と監視社会をつくらせないために行動しよう」
欧米でプライバシーへの懸念を契機に、顔認証利用の規制をめぐる議論が広がっています。
日本では、菅政権が「デジタル改革関連法」や「土地利用規制法」などを成立させ、国民を監視して、市民運動や労働運動を弾圧し、改憲と戦争する国に突き進んでいます。
私たち労働組合には、イギリスの人権団体やBLM運動に学び、監視社会をつくさせない運動を強化することが求められています。警察国家と監視社会をつくらせないために行動し、改憲と戦争を阻止しましょう。
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF
「関生事件」が揺るがす労働基本権
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日刊深夜快速Vol.3551/水曜版・週刊大石ちゃん自由自在(仮)~関西生コンスペシャル・前編~ ココをクリック
日刊深夜快速Vol.3558/水曜版・週刊大石ちゃん自由自在(仮)~関西生コンスペシャル・後編~ ココをクリック
挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20
業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税
「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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641日勾留された武委員長が語る
「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
・武建一という人物はいったい何者なのか?
そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか』
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一
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