和歌山広域協組事件第8回公判 9月16日 和歌山地裁
連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が9月18日、和歌山地裁で開かれました。当日の公判は、検察側の証人尋問でした。

「和歌山広域協組事件とは」

和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、関生支部事務所を高級車で周回して、組合員らを脅すなどした行為に対して、2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。

「組合を脱退したあと、警察・検察に捜査協力した」

第8回公判は、検察側の証拠調べで、事件とされている8月22日の抗議行動に参加した元組合員K氏の証人尋問です。
検察側の主尋問にK元組合員は、「ミキサードライバーのアルバイトをしているときに関生支部に加入した。加入後の組合活動や役職。2018年以降、6つ事件で逮捕・起訴され、219年3月の保釈後、関生支部を脱退した。脱退した理由は、家族に迷惑をかけたくないため。脱退後、和歌山県警や京都府警、検察庁に捜査協力を行い、すべて正直に話した」。「6つの刑事事件は、組合活動によって発生したもの。併合となった裁判では、2020年2月に懲役3年執行猶予6年の判決が出され確定している」などと証言しました。

「大阪広域生コン協組に謝罪した」

また、K元組合員は「組合を脱退した直後に、大阪広域生コン協組に謝罪した。そのとき大阪広域生コン協組は、あたたかく迎えてくれた。その後、O社長の計らいにより、K生コンに就職。現在は、京都協組に惨事として出向している」と証言しました。

「検察のストーリーに沿った証言」

さらに、K元組合員は「関生支部は、生コン業界の安定に向けて、協組運営の正常化と業界で働く労働者の労働条件向上を目指して運動をしていると認識して、一生懸命に運動してきたが、解決金など、お金の問題で不信感をもった」などと証言したあと、「発端となった8月18日に元暴力団らが関生支部事務所に高級車で来て、それを捕捉した経緯」「事件とされている前日8月21日のY生コン組合結成通知と団体交渉のあらまし」「8月22日の事実関係」「組合内での意思統一の内容」「現場の指示系統」など、検察のストーリーに沿った証言を行いました。

「女性事務員は、非常に怯えていた」

検察官の「和歌山広域の女性事務員が、お茶や灰皿をカウンターに出したそうだが」との尋問に対して、K元組合員が「女性事務員は、非常に怯えていた。早く帰って欲しそうだった。仕事にならなかったと思う」などと証言したことが印象的でした。
当日、和歌山広域の事務所に電話が架かってきたとき、女性事務員が「電話です!静かにしてください!」と毅然と発言したときに、K元組合員をはじめ、通話が終わるまで誰も発言せずに静かにしていたのですが…。

「腹が立った理由は、消去法でコイツやと思っていたから」

午後からは、弁護側の反対尋問です。久掘弁護人の「関生支部に加入して、賃金などの労働条件が向上したこと、関生支部は産業別労組との理解があったか」などの尋問に対して、K元組合員は肯定する証言をしました。
また「関生支部在籍中に、執行委員に就任していないこと、執行委員会や常任委員会に出席したことはないこと」などの尋問にも、K元組合員は認める証言をしました。
8月18日の暴力団らが関生支部事務所に高級車で来た出来事について、K元組合員は「8月18日以前から、不審な車両が和歌山で宣伝カーをつけ回していたり、和歌山の組合員宅に暴力団風の男が立ち寄ったなどと聞いていた」などと証言。
事件とされている8月22日の出来事について、K元組合員は「腹が立った理由は、8月18日の件もあり、消去法(Y生コンの社長でなければ)でコイツ(M理事長)やなと思っていた。M理事長はウソをついていると当時は思っていた」と証言していました。

「もう逮捕されたくない」

久掘弁護人の「2018年11月、滋賀県警に組合活動を理由に逮捕され、その後、威力業務妨害で起訴された。2019年2月には滋賀県警に組合活動を理由に再逮捕され、恐喝未遂で起訴され、3月に保釈された。その数日後に、滋賀県警の組織犯罪対策課に電話を架けて、取り調べ担当の警察官に事件について話したうえで、数日後、その警察官と直接会っている」などの尋問について、K元組合員は「保釈後、10日経って、大津署に電話し、大津署で直接、話しをした」と認める証言をしました。
また、「2019年3月26日には組合に脱退届を提出しているが、組合をやめようとして理由は」との尋問に、K元組合員は「家族のことも考え、もう逮捕されたくない」「コンプライアンス活動は、嫌がらせであり、犯罪行為と認識していたので、組合をやめるのが最優先だと。自分がやったことを正直に話すのが当然であり、捜査に協力した」と証言しました。
弁護人の「捜査に協力したことで、もう逮捕されないと確信したか」との尋問には、検察官の「異議」が発せられ、裁判官は異議を認めました。

「西日本建設関連オーナー会から、日当2万5千円をもらっていた」

久堀弁護人の「組合を脱退後、大阪広域生コン協組に謝罪しに行ったとのことだが、謝罪の理由は?また、どのような経路をたどったのか」との尋問に、K元組合員は「大阪でもコンプライアンス活動をしていたことから迷惑をかけたことや、自分の発言に対して謝罪が必要だと感じた」「大阪広域生コン協組の事務所には、ひとりでアポも取らずに行ったところ、大阪広域生コン協組のK理事長に会えた。K理事長に謝罪したい旨を伝えると、後日、改めて謝罪する日を設定するとなり、設定した日に改めて大阪広域生コン協組の事務所に赴き、謝罪した」と証言しました。弁護人の「その日、謝罪したのは誰と誰か」との尋問に、K元組合員は「答えたくない」と述べました。
また、「組合を脱退してT社を退職したあと、K生コンに就職するまでの間の生活費はどうしたのか」との尋問に、K元組合員は「西日本建設関連オーナー会から、日当2万5千円×20日をもらって生活していた」「西日本建設関連オーナー会の理事は、大阪広域生コン協組の理事を兼任している人もいる」などと証言していました。
さらに、K元組合員は「大阪広域生コン協組に連携を取ってもらい、『会っていただける』ことになり、昨年の8月、(和歌山の)M理事長に謝罪した」と証言していました。
弁護人の今回の事件の経緯についての尋問に、K元組合員は「2019年5月、6月、7月に和歌山県海南警察で取り調べを受け、検察庁でも取り調べを受け、今回の事件(8月22日の事件)で8月9日に起訴された。今回の事件で自分は、逮捕も勾留もされていない」と証言。弁護人の「武谷ら3人が今回の事件で逮捕され勾留されたことは知っているか?」との尋問に、K元組合員は「知っていた」と証言しました。

「組合加入により、まともで落ち着いてきたと家族が」

普門弁護人の「当日は、元暴力団らを差し向けたのは、M理事長と思っていたか」との尋問に、K元組合員は「今はそう思っていないし、(当時は)決定的な証拠も無かった。振り返れば、M理事長の立場やメリットを考えると、ヤクザを介入させることはない。なぜならば、M理事長は能力のある方だから」と証言していました。
また、弁護人の「当日、和歌山広域の事務所に入る前に、和歌山広域のT氏について、武谷は同席させない、K元組合員は、同席させると意見が異なっていた」こと、「和歌山広域の事務所に電話が架かってきたとき、K元組合員が女性事務員にたしなめられた」こと、「組合に入ったことで、まともで落ち着いてきたと家族が言っていた」ことなどの尋問に、K元組合員は概ね認める証言をしていました。

「集団交渉により、個社で対応できないことも団体で対応できるメリットがある」

中島弁護人の「関生支部活動の特徴は」との尋問に、K元組合員は「産別労組として、企業の枠を越えて、その産業としての労働条件を確立する運動」「適正な協組運営、安定した生コン価格、立米基金の確立」「集団交渉により、個社で対応できないことも団体で対応できるメリットがある。問題がある側面と産別の側面がある」などと証言していました。

「検察官、あわてて修正の補充尋問」

補充尋問で検察官の「8月22日のことで、M理事長に対して、怒りにまかせて個人的に追及したのか」「武谷ら3人とK元組合員の事前の打ち合わせはなかったが、一貫した行動は?」との尋問に、K元組合員は「謝罪を取れとの司令でやっていた」「武谷らは、場慣れしており、あ・うんの呼吸で、その場でやれる」などと証言。検察官もあわてて修正の補充尋問を行ったのでしょう。

「上(事務所内)と下(外)では連携が図られていなかった」

裁判官の「和歌山広域の外では、街宣も並行しておこなっていたが、どういう言葉を発するか、どのタイミングで街宣するかなどはどうしたのか」との尋問に、K元組合員は「上(事務所内)と下(外)では連携が図られていなかった。街宣のきっかけも知らない」などと証言していました。
また、裁判官の「当日の意思統一の場面」の尋問についてのK元組合員の証言に対して、検察官が補充尋問で修正していました。

「無罪を勝ち取るまで闘う。引き続きの支援を」

公判終了後、弁護団は「K元組合員は有罪となっている。検察側は、指揮系統の立件としてK元組合員は重要な証人だったが、組合の悪口は少なく、淡々と証言し、以外と正直であった」、「共謀の成立を確立する証人だったが、『あ・うんの呼吸』や和歌山広域の事務所に入る前の意見の違いが露呈した。O社長やM理事長の恩恵などの証言は、傍聴席を意識したもの。それは敬語を使ったことに現れていた」「個人が怒りにまかせてやっているという証言に、検察があわてて再確認し、当時の認識を再度、強調していた」と、本日の証人尋問を総括し、一定の成果が獲得できたことを報告、「引き続き無罪判決を目指して取り組む」と発言されました。
被告人とされている当事者からは「無罪を勝ち取るまで闘う。引き続きの支援を」と呼びかけがありました。

「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」

午前、午後という長時間にわたる証人尋問に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさんに感謝します。コロナ禍で暑いさなか、遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさん、本当にありがとうございました。
次回の第9回公判は、10月7日(木)、10:00から12:00まで、検察側の証拠調べで、第7回公判に出廷しなかった元暴力団の証人尋問の予定ですが、元暴力団の所在が不明とのことで中止になる可能性があります。予定通り行うか、中止になるか決定次第、お知らせしますのでよろしくお願いします。
次々回の公判(予備日であった)は、10月28日(木)、午後からの予定で、元組合員M氏の証人尋問です。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

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- お知らせ -
10月7日、和歌山広域協事件の公判ですが、変更の可能性があります。
分かり次第、お知らせします。再度、ご確認ください。
挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20
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「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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