村田建材(加茂生コン)事件
高裁判決!
Y執行委員 30万円罰金(地裁判決:懲役1年執行猶予3年)
組合員A 無罪(地裁判決:懲役1年執行猶予3年)
今回の高裁判決で、京都地裁が出した判決がいかに不当なものであったのかが明らかになった。
連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が12月9日、和歌山地裁で開かれました。当日の公判は、武谷書記次長の被告人質問でした。
「和歌山広域協組事件とは」
和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、関生支部事務所を高級車で周回して、組合員らを脅すなどした行為に対して、2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。
「主尋問、関生支部の産業別労働組合の特徴と運動の成果」
主尋問で武谷書記次長は、関生支部の活動の特徴として「企業別労働組合と産業別労働組合の違いや、産業別労働組合の関生支部は、生コン産業の企業で働く労働者が、直接、関生支部に加入できること。経営者の集団と集団交渉を行うこと。組合員のいない企業にも集団交渉への参加を働きかけるのは、生コン産業の多くの企業と協約を結ぶことで労働条件を統一していくこと。一面共闘では、生コン企業を協同組合に組織化して、大手企業のセメントメーカーやゼネコンとの交渉力を強め、適正な価格での取り引きを実現し、生コン企業の経営を安定させて、労働条件の切り下げや雇用の機会を奪われないようにすること」などを証言しました。また、弁護人の「日本には関生支部と同様の特徴がある他の産業別労働組合はあるのか」との尋問に武谷書記次長は、「少ないが、全日本海員組合、全日本港湾労働組合、音楽家ユニオン、プロ野球選手会、介護クラフトユニオンがなどある」と答えました。
「過去の暴力団からの攻撃と今回の事件の背景と事実関係」
続いて、武谷書記次長が「和歌山県内の生コン協同組合と関生支部の一面共闘によって、和歌山県内の生コン企業の経営が安定した『和歌山モデル』と言われるような成果があがり、それを他府県に広げる方針で活動していたこと」を証言したあと、協同組合の相互扶助に反し、自らの利益のみを追及するY生コンの経営者やM理事長が「具体的な暴力団の名称や人物を発言して、脅してきた」こと。過去に、関生支部が「経営者が雇った暴力団関係者から、殺害されたり、傷害を負わされたりした」ことなどを証言しました。
起訴された事件の事実関係について武谷書記次長は、「①威力や業務妨害、脅迫などの公訴事実に構成要件の該当性がないこと。②M理事長が暴力団関係者と思われる者を差し向けたと判断したことに合理性があること。③抗議活動の正当性」などを証言しました。
前回の公判で映像が上映された2018年1月22日の関生支部事務所襲撃事件について武谷書記次長は「当日は、右翼団体の幹部や和歌山のM理事長とBMWで組合事務所を徘徊していた2人、M理事長がつくった女性を含む『自警団』、大阪広域協組の理事長や副理事長らが押しかけてきて、『武谷を出せ!』などと叫んでいた」と証言しました。
武谷書記次長は「大阪広域協組と和歌山広域協組のM理事長は、密接な関係にある」と答えたあと、「大阪広域協組と関生支部の関係は、一面共闘・一面闘争の関係だったが、2018年1月前後からは、完全な敵対関係となっている。私たち3人の事件のほか、大阪、京都、滋賀で関生支部の役員や組合員が大量に逮捕されたが、これに、大阪広域協組が深く関与している」と証言しました。
弁護人の「1月22日の映像を見て、関生支部は当時、どのような状況におかれていたのか」との尋問に、武谷書記次長は「和歌山でY生コンの社長とM理事長による協同組合と関生支部の良好な関係を破壊する活動は、大阪広域協組が関生支部と決別しようという動きと連動していたということ。また、大阪広域協組は、右翼活動家に資金を渡して、と関生支部との関係を断ち切ろうとしていた。その結果、大量の役員や組合員が逮捕され、起訴されるという弾圧事件に発展していった」と証言しました。
「反対尋問、2時間の予定が1時間で終了した」
反対尋問では、検察官の「捜査段階の供述を公判ではひるがえすのか」などの尋問のやり取りで武谷書記次長の感情的な発言が、裁判官から注意されるという場面がありましたが、予定していた2時間の反対尋問は、1時間超で終わりました。
弁護人の補充尋問で武谷書記次長は「16年前に、逮捕、勾留されたときは、黙秘したが、1年間勾留された。この時、勾留されたのは役員の6人のみだったが、今回は滋賀県警、大阪府警、京都府警が大量の役員や組合員を逮捕、勾留したあとに和歌山県警に逮捕された。最初の1週間は黙秘したが、事実関係を供述して保釈で出る方針に変更した。その理由は、大量の役員や組合員が不在のなかで、逮捕、勾留された役員や組合員の差入れや家族のケア、労使交渉などの組合活動をするためだった。結果、早期に保釈が認められたが、すべての関生支部組合員との接触禁止や組合事務所への立ち入り禁止などの保釈条件を付けられた。検察の方が一枚上手だった」などと証言しました。
その後、裁判官2人から尋問を受けて、この日の武谷書記次長の被告人質問は終わりました。
「予定通りの主尋問、想定通りの反対尋問だった」
公判終了後、弁護団から本日の公判の総括が報告されました。
中島弁護士(武谷書記次長の弁護人)は、「主尋問は、事件とされている前段の経過や背景を証言して、8月21日、翌22日の事実関係を証言したことは、予定通りの主尋問だった。反対尋問は、想定通りだった。裁判官質問では、向かって右側の裁判官は適切な質問だった。向かって左側の裁判官は、意地悪な質問だったので手立てが必要だが、全体としては良かった。次回の最終弁論の弁論要旨で、具体的に主張していく」と評価しました。
普門弁護士(O執行委員の弁護人)は「武谷書記次長の補充質問を担当した。関生支部の事件を初めて担当したことから、関生支部のことがよくわからなかったが、今日の主尋問で関生支部の活動がよく分かった。関生の活動は切り取った話しではなく、公益性のある活動をしていることが理解できた」と関生支部の産業別労働組合の活動を評価しました。
久堀弁護士(M執行委員の弁護人)は「傍聴席の空席が多かったことを述べる。M理事長ら経営側の人たちは抽選に並んでおり、当選した経営者らM理事長も含め法廷に入らなかったことは、組合側の傍聴を妨害するためだ。午後の審理が始まる前に、裁判官に対して、これだけ空席(3分の2くらい)があるので抽選に外れた労組員を傍聴させることを求めたが裁判官はこれを認めなかった。また、M理事長らは、武谷書記次長の証言を聞きたくなかったのかもしれないが、堂々と聞けばいいのにと感じた」とM理事長らの組合員の傍聴を妨害する行為などを述べたあと、「無罪判決に向けて、全力を尽くす」と発言しました。
「裁判を傍聴する権利を妨害・侵害することは許されない」
傍聴に駆けつけてくれた支援者から「尋問終了後、検察側から証拠の撤回などのやり取りがあったが、どういうことなのか」などの質問を受けて、弁護人らがその質問に丁寧に答えたあと、全港湾・小林委員長から「久堀弁護士が述べていた傍聴席の空席の件について、傍聴券を持ったまま帰ったのであれば、法廷の外で待っている抽選に外れた人にも傍聴席に座れるように柔軟に対応するべきだと裁判所に申し入れを行った。裁判を傍聴する権利を妨害・侵害するような行為を許してはいけない」と裁判所の対応を批判し、改善を求めたこと報告しました。
「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」
午前、午後という長時間にわたる証人尋問に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさんに感謝します。寒さが厳しくなってきたさなか、遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさん、本当にありがとうございました。
第12回公判は、3月10日(木)10:00から10:30まで、判決言い渡しです。
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF
「関生事件」が揺るがす労働基本権
<労働裁判が働き手を素通りするとき> ココをクリック
賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み)
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。
そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。
業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。
迫真のルポでその真実を明らかにする。
目次 : プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
【著者紹介】
竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011‐2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
amazonで購入できます。 ココをクリック