滋賀「コンプライアンス」事件第49回公判、4月26日、大津地裁

連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が4月26日、滋賀・大津地裁で開かれました。本日の公判は、3人の裁判官が交替したことによる「裁判更新手続き」です。

「コンプライアンス事件とは」

「滋賀・コンプライアンス事件」は、建築現場で働く労働者の安全確保や現場近隣の安全と環境破壊を防止するなどのコンプライアンス活動(法令遵守)が、恐喝未遂・威力業務妨害などとされている事件です。

「交替した裁判官に、あらためて『無罪』を主張」

3人の裁判官が交替したことによる「裁判更新手続き」は、冒頭、被告人とされている仲間の人定質問と罪状認否がおこなわれ、被告人とされている5人の仲間は、「コンプライアンス活動は、正当な組合活動だ」などと、交替した新しい裁判官にあらためて「無罪」を強く主張しました。

「労働事件として判断されなければならない」

弁護人らの冒頭陳述では、「前提として、労働事件として判断されなけらばならない」としっかり主張。続いて「生コン産業の構造と課題」「関生支部は産業別、業種別の労働組合であり、集団交渉で産業別協定を締結している」「生コン産業の集約事業は個別ではできず、労働組合の協力が必要」など、関生支部の産業別労働組合運動と生コン産業における政策提言を具多体的な事例をもとに述べました。
さらに、弁護人らは「2017年のストライキ以降、大阪広域生コン協組と関生支部が決別し、大阪広域生コン協組が主導する加盟社による解雇などの不当労働行為の数々」「89人が逮捕され、67人が起訴されるという関生支部への一連の弾圧で労組員が刑事事件に問われている」「逮捕後の644日にわたる身体拘束、組合事務所立ち入り禁止や組合員との接触禁止の保釈条件、組合員の身体拘束での組合脱退勧奨や取り引きなど、関生支部に打撃を与えるため」の権力弾圧の実態を述べました。

「憲法・法律に基づいた審理を求める」

そして、弁護人らは「本事件の不当、違法性」を述べたあと、「関生支部は産業別労働組合であり、その産業別労働運動の形態は正当な組合活動であり、タイヨー社への恐喝、セキスイ社・日本建設社・東横インのコンプライアンス活動やビラの配布などの本事件は、恐喝未遂・威力業務妨害の構成要件にはあたらない。刑法35条の適用がある。労組法1条2項の正当なものである」と主張し、「加茂生コン事件の控訴審では無罪判決が出されている」「憲法・法律に基づいた審理を求める」と締めくくりました。永嶋弁護士のパワーポイントを使った陳述に、裁判官や傍聴人はよく理解できたことでしょう。

「映像を見れば、正当な活動が明らか」

続いて、証拠調べで採用した映像が上映されました。それぞれの建設現場では、「安全帯の未使用」「ユニック社の不十分なアウトリガー設置」「現場に出入りする車両のバンパー不備」などの建設関連法や道路運送車両法に違反している実態。建設現場から汚水が側溝に流されているなど産業廃棄物法違反の実態の映像が描かれていました。
また、関生支部の組合員が現場の責任者に指摘している場面では、丁寧で穏やかに話している姿、その指摘に対して建設現場の責任者も真摯に対応している姿が映像に描かれており、起訴状に記されている「軽微な不備に因縁をつけて」などは一切、見られません。この映像を見れば、コンプライアンス活動が正当な組合活動であることは明白です。

「コンプラ活動は、『正当な組合活動』『社会通念上相当』」

生コンクリートの品質を確保する報告では、「協同組合の必要性」「近代化促進」「従業員の福祉など労働環境の整備や安定」「工場集約化による生産調整」「生コンの品質確保」「法令遵守」など、協同組合の相互扶助の実践、社会貢献のための法令遵守を堅持するなど、生コン産業における国の政策提起が報告されました。
労働法制学者の鑑定書では、「関生支部のコンプライアンス活動は当な組合活動であること(刑事免責)」。京都大学教授の意見書では「違法性は阻却される。コンプライアンス活動は、社会通念上相当」などと述べられてることが読み上げられました。

「組合員ではない労働者の身分・賃金・労働条件の向上をめざす」

連帯ユニオン関西地区生コン支部が発効している冊子(人間としてふつう・・・)の紹介と、建設業界の設計労務単価引き上げの運動を紹介しました。
そして、K元組合員の講演する「産別運動とは」と題する学習会の映像が上映されました。K元組合員は「①協組と労組が大同団結し、大企業との対等取引をめざす。②各地区の生コン価格の値戻し、値上げを打ち出さし、業界の安定をめざす。③労働組合の組合員ではない労働者の身分・賃金・労働条件の向上をめざす」と強調していました。

「検察官調べの映像が映し出された」

弁護人らの証拠調べの請求が、検察官の異議を却下して裁判官が採用した取り調べがおこなわれました。「報告書、検察調べの反訳、『連帯をけずる』検察官の発言」と、その検察官調べの映像が法廷で上映されました。

「連帯(関生支部)を削っていく」

検察官の不当に逮捕した仲間の取り調べの映像には、黙秘を続けているS元執行委員に対して検察官が「あなたが逮捕されて、それで終わるはずもない。これからどんどん連帯(関生支部)を削っていく」「どんどん削っていって、正しい方向に導いてあげなきゃ」と発言している姿が描かれていました。この検察官は、「だけど削りますよ」「削っていって・・・」などと数回にわたり発言していました。この映像を見た傍聴席からは、驚きの声があがっていました。法廷の二人の検察官が小さくなっていたように見えたのは勘違いでしょうか?
映像が上映されたあと、検察官がM氏の証人を撤回し、次回の公判期日を確認してこの日の公判は終了しました。

「無罪判決をめざして全力をつくす」

公判終了後、弁護団から本日の公判の総括が報告されました。永嶋弁護士は「本日の公判は、裁判更新手続き。裁判官が交替したことで、大事な主張はやり直すと考えて臨んだ。証拠を見ないで判断すると思い、映像の再生など交替した裁判官自身に見てもらうためにおこなった。新しい裁判官らには、S元執行委員の検察官取り調べの映像を見せたことは有意義だった。検察官らはK元組合員を証人申請するなど、検察官らがタイヨー事件の無罪をひっくり返すための証拠をそろえたが却下された。今後の公判は、S元執行委員と湯川委員長の被告人質問、論告と進む。新しい裁判官が公正な判断をするために、できることを全力でおこない、無罪を勝ち取る」と総括しました。

「被告人質問には、まっこう勝負で挑む」

中央本部・小谷野書記長は「連日の京滋実行委員会の仲間の支援行動に感謝する。検察官取り調べの映像では、S元執行委員が頑張っていた。無罪をめざして共に頑張ろう」とあいさつしました。
続いて、当事者のS元執行委員から、仲間への支援行動のお礼が述べられたあと「映像を見てもらった通り、黙秘を貫いた。無罪判決を勝ち取る」と決意が表明されました。
湯川委員長は「京滋実行委員会の仲間をはじめ、みなさんの支援行動と傍聴支援に感謝する。本事件の6月の被告人質問では、まっこう勝負で挑む。大阪広域生コン協組の労働組合つぶし、それに便乗する警察・検察の権力弾圧に勝利するまで闘う決意だ。裁判闘争、産業別労働運動の前進に全力で挑む。引き続きの支援をお願いする」と支援のお礼と闘いの決意を表明しました。

「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」

長時間にわたる公判に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさんに感謝します。遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさん、本当にありがとうございました。
次回の第50回公判は、5月30日(月)、10:00から。S元執行委員の被告人質問です。

ー お知らせ ー
関西地区生コン支部が展開する産業別労働運動への仲間の皆さんのご協力とご支援に感謝します。また、日頃の関西地区生コン支部弾圧への物心両面にわたるご支援に、心からお礼を申し上げます。さて、「今こそ関生魂を!!激動と根底的変革の時代を共に生きよう!6.4映画「棘2.独白」上映(主催、6.4映画「棘2.独白」上映実行委員会)が、6月4日(土)18:00から文京区民センター2Aで開催するというチラシが配布されています。
このチラシには、連帯・関西地区生コン支部と記された組合旗が、写真で掲載されていますが、この主催者団体らと、全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部は、何ら一切関係のないことをお知らせします。
関西地区生コン支部が携わり、関与する集会などのイベントについては、当労働組合発刊の機関紙「くさり」や、当労働組合が作成するホームページの「連帯広報委員会」でお知らせしています。支援共闘の仲間の皆さんには、お間違えのないようにくれぐれもよろしくお願いします。

「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

デモクラシータイムス 〈 2022.01.11 〉
池田香代子の世界を変える100人の働き人60人目
労働運動を〈犯罪〉にする国「連帯ユニオン関西地区生コン支部」事件
ゲスト:竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)
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関西生コン事件ニュース No.72 ココをクリック
関西生コン事件ニュース No.73 ココをクリック
2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み)

1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。
そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。
業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。
迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 : プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】
竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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