2022年カリフォルニア大学アカデミック労働者ストライキのインパクト

2022年のカリフォルニアでは、高インフレ、高住宅費、高医療費、高学生ローンの問題があった。(日本とは異なり、米国には国民皆健康保険制度がない)。2020年以降、多くの労働者がSARS-CoV-2に感染することを心配していた。大学内では大学院生が対面式の授業を担当することが多く、また、大学院生がそうした対面式の仕事を危険な労働条件と考えても、研究室での仕事を依頼されることがあった。そのような対面式の作業は危険な労働条件であると考えられていた。

労働教育研究部長であるコーネル大学のケイト・ブロンフェンブレナー氏(https://www.latimes.com/california/story/2023-01-02/uc-strike-energizes-labor-surge)
によると、米国の大学院生を労働組合の組織化に駆り立てたのは、パンデミックの間、危険で健康に悪いと感じる仕事に対して低い賃金が支払われていたからであるという。「労働者は我慢して働いているが、死ぬために働いているわけではない」と。つまり、「学生に対面授業で教えるのは危険だ」という認識が、彼らの正義への情熱を強めたのである。

幸いなことに、アメリカの大学で教える大学院生たちが、労働条件の改善や労働に対する報酬の増額を求めてきたこともあり、最近のアメリカでは労働組合に対する世論は肯定的である。2021年のギャロップ世論調査によると、18歳から34歳までの若者の77%が、労働組合は重要で価値があると信じている。そして、これらの若年層は、様々な年齢層の中で最も労働組合に対して肯定的な態度を示している。

2022年、アカデミック労働者は様々な労働運動に取り組んだ。例えば、コロンビア大学のアカデミック労働者は10週間のストライキを行い、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院生が労働組合を立ち上げた。

(https://ovc.mit.edu/news/faqs-about-graduate-student-unionization/)
コロンビア大学やMITでこれらの労働運動が始まった直後、プリンストン大学は大学院生の「奨学金」(stipend)を25%増額した。

このように他大学の労使関係に大きな変化が生じた後、「2022年カリフォルニア大学アカデミック労働者ストライキ」が発生した。ストライキは11月14日に始まり、12月23日に終了した。記録的な高インフレと州全体の住宅危機の中で、アカデミック労働者たちは生活賃金、持続可能な交通費、雇用保障、子を持つ研究者や外国人研究者への支援強化を要求していた。

彼らは成功し何を手に入れたかというと、①いじめや嫌がらせに対する画期的な保護②育児に対する財政支援、一部の労働者の扶養家族に対する医療(特に健康保険)、そして③ほとんどの組合員に対する大幅な賃金の向上である。2024 年 10 月までに、「UAW 2865」という 組合の労働者の 9 ヵ月のパートタイム労働の最低賃金(年収)が 23,250 ドルから 34,000 ドルへ引き上げられる。2024年10月までに、「SRU-UAW」という組合員である大学院研究者のパートタイム労働9カ月分の最低賃金は、34,564.50ドルになる。そして、UAW5810のポスドク研究員や学術研究者の最低賃金は7万ドルに引き上げられる。

これは大きな勝利であるが、特に雇用の安定や外国人研究者への支援強化の面では、大学側はアカデミック労働者の要求に応じなかった、彼らが望んでいたのを全て勝ち取ったわけではないといえる。

彼らがカリフォルニア大学以外で他の大学の労働者に与える影響は、おそらく大きい、他大学の労働者たちは、自分の大学で労働条件や賃金の改善を要求する際に、より良い、より強い立場に立つことができるだろう。

カリフォルニア大学でのストライキは、すでに他の大学院生労働者が立ち上がるきっかけとなった。企業を守る弁護士であるメリッサ・アトキンス氏
https://www.obermayer.com/our-team/melissa-k-atkins/
は、カリフォルニア大学は大きな大学であり、アカデミック労働者はストライキを通じて、生活できる賃金と手当を得たので、他の大学の大学院生も自分の大学に生活できる賃金と同様の手当を要求するだろう、と説明している。

これは、南カリフォルニア大学(USC)ですでに起こっていることである。南カリフォルニア大学は、ロサンゼルスにある私立大学で、スポーツや学問などの分野でUCLAとライバル関係にある。カリフォルニア大学のストライキを聞いて触発された南カリフォルニア大学の大学院生たちは、組合結成の努力を強めている。

パサデナ市(同じロサンゼルス地区)にあるカリフォルニア工科大学では、カリフォルニア大学のストライキ後すぐに、大学院生の給与が17%引き上げられた。

ワシントン大学では、博士号取得者の最低賃金を53,760ドルから65,000ドルに引き上げると申し出たばかりだ。その大学の労働組合員は、カリフォルニア大学のアカデミック労働者がストライキが成功したことに注目しており、ワシントン大学は、おそらくカリフォルニア大学で起こったことを考えながら、今回の65,000ドルへの引き上げを提示したのだろうと、ワシントン大学の労働組合のリーダーは述べています。

2022年の1年間に、少なくとも7つの大学の大学院生たちは全米労働関係委員会(NLRB)に組合選挙を要請した。その7校とは、南カリフォルニア大学、ノースウェスタン大学、イェール大学、ジョンズ・ホプキンス大学、シカゴ大学、ボストン大学、マサチューセッツ工科大学である。

カリフォルニア工科大学、アラスカ大学、ウェスタン大学、国立衛生研究所、シンクタンクなどの学術研究者が、現在、労働組合の設立に向けて動き出している。

つまり、科学者、学者、弁護士、発行人など、米国の将来の知識人の多くが、カリフォルニア大学のアカデミック労働者の成功を見て、労働組合の価値を学んでいるといえる。

マスメディアの新聞では,Los Angeles Timesが,カリフォルニア大学労働者のストライキについて,比較的質の高い報道をしている。ストライキを終わりにするプラス・マイナスについてのインタビュアーの録音が
https://kboo.fm/media/113492-uc-academics-strike
にありますが、これを聴くことによって、多くの学生がストライキ終結に反対した理由の優れた説明を聴くことができる。

2023年1月8日                
カリフォルニア大学労組出身、愛知連帯ユニオン
ジョセフ・エサティエ

関西生コンニュース83号 更新しています

杉田水脈総務政務官が辞表提出

「LGBTには生産性がない」「チマ・チョゴリやアイヌの衣装のコスプレおばさん」など週刊誌やブログに掲載。また伊藤詩織さんを誹謗中傷し高等裁判所で賠償を言い渡されるなど国会内でも問題視されていた杉田水脈総務事務次官が12月27日辞表を提出しました。いつまでも適切な処分を下さない政府に対して日本軍「慰安婦」解決全国行動が、差別発言を認めず総務政務官に居座る杉田水脈議員について、12月24日抗議文を出しています。
岸田文雄内閣総理大臣、松本剛明総務大臣宛 抗議文 ココをクリック
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

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2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

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