「民主労総・建設労組の闘いと関生支部の闘い」講演・金元重氏(第5回/全6回)
「ヤンフェドン江原支部支隊長の抗議焼身」
5月1日、建設労組のヤンフェドン氏(50)は、建設現場での組合員の採用、労組専従費の支給を要求したとして、2月から警察の捜査を受け、検察は4月26日、これらの容疑で拘束令状を請求し、5月1日午後3時、別の2人の幹部とともに拘束前被疑者尋問(令状実質調査)を江陵支院で受け取る予定だった。
ヤンフェドン氏は焼身の直前、SNSの建設労組幹部グループへの投稿で「罪もなく正当な組合活動をしていたのに、(適用された容疑が)集会・デモ法違反ですらなく、業務妨害および恐喝だという。・・・私の自尊心が許さない」と記した。
焼身直後、一時、心肺停止になったが蘇生し、ソウルの火傷専門病院にヘリコプターで搬送されたヤンフェドン氏は、翌日、搬送されたソウルの病院で死亡。
車に残されていた遺書は、家族、労働組合、4つの政党(共に民主党、正義党、進歩党、基本所得党)に宛てた3通だった。
「ヤンフェドン支隊長の任務と活動」
鉄筋工だったヤンフェドン氏は、40歳を超えた2019年10月に民主労総・建設労組に加入し、鉄筋チーム長として働いていた。俗称「オヤジ」と呼ばれる仕事紹介業者が違法な再下請けをあっせんし、月に100万ウォンほどの賃金をピンハネしていた。特に、ピンハネがひどかった仲介業者の下で働いていたヤンフェドン氏は、不合理に耐えられず、建設労組に加入した。
2年後の2022年1月、自身が働いていた嶺東地域の労組代表に就任し、「全国建設労働組合江原建設支部第3支隊長」(4つの地域を担当)に就いた。ヤンフェドンたちの努力で嶺東地区の組合員は、約1年間で50人から170人余りに増え、ヤンフェドン氏は「模範組織賞」を受賞した。
建設労組の支隊長の主な任務は、組合員の仕事が途切れないようにすること。日雇いがほとんどを占める建設労働者は、年に10回ほど求職する。短かければ2週間、長くても2~3ヶ月働いて失職する。仕事が続かなければ生計が脅かされる。「仕事があるときは使い、ないときはゴミのように捨てられる」(建設労組チャンオッキ委員長)構造だ。自然と違法な再下請けと中間搾取が横行する。どちらも建設産業基本法と勤労基準法が厳格に禁止する行為だが、事実上、監督されず違法がまかり通っていた。
建設労組が組合員の採用窓口を担うようになったのは「違法」をなくすための苦肉の策だった。労組の幹部が組合員に代わって仕事を見つけ、オヤジが受け取っていた紹介料を組合員の手に取り戻そうというわけである。建設労組は、有給休日手当などこれまで無視されていた法的権利の保障も引き出した。
「ヤンフェドン氏の『恐喝』容疑内容」
3月、警察の出頭要求書では「ヤンフェドン氏の労組支隊長としての活動が、暴力行為処罰法の『共同恐喝』にあたる。『恐喝』は、財産上の利益を得るために他人を脅迫する犯罪だ。警察は、2021~2022年にヤンフェドン氏ら労組幹部が下請け業者から受け取った7900万ウォン(約803万円)あまりの賃金をすべて恐喝で得た金だと判断」した。
ヤンフェドン氏ら江原支部の3人の幹部は、2021~2022年に組合員採用要求がなかなか受け入れられなかったため、工事現場で集会を行い、下請け業者の手抜き安全管理を通報するとして(コンプライアンス活動)、圧力をかけたことがある。その後、会社側とあらためて交渉して、組合員の採用を勝ち取り、労組幹部の賃金支給に関する団体協約も下請け業者と締結した。
支部長の1人は、労組専従費(労働組合法に則り、労組専従者が受け取る賃金)を受け取り、他の幹部らは鉄筋・解体チームなどの現場管理業務をこなしつつ日常的な労組活動も保障されるという内容で下請け業者と合意。ヤンフェドン氏も、この合意に則って鉄筋チーム長と労組の支隊長を兼任した。
警察は、これらすべての過程を労使交渉ではなく、建設労組の一方的な脅迫だとみなした。「(建設労組は)集会の自由を悪用して、工事業者を屈服させ、彼らの思い通りにして数千万ウォンの労組専従費と無労働賃金の支給を受けた」(ヤンフェドン氏の拘束令状)。
賃金を受け取りながら、業務とは関係のない労組活動も同時に行ったのは不適切だとの趣旨。警察はまた「彼らの主な目的は団体協約によって労組専従費と無労働賃金を受け取ることで、勤労者の権益保護ではない」とつけ加えた。
「正当な組合活動」
しかし建設労組は、「組合員の採用と安全な作業環境を要求するために集会を行ったのであって正当な組合活動だ」と主張。また、「労組専従費などはすでに法で保障されている通りに労使で合意したものであり、とくに集会を行って受け取る必要はない」という立場を示した。
実際、建設労組は2021年11月に、下請け業者の代表者からなる「鉄筋コンクリートソウル・京畿・仁川使用者連合会」と団地協約を結び、労組専従費支給に合意している。また、専従でない幹部たちは労組活動を行っていても、主な業務は現場管理だったので賃金を受け取るのは当然だと反論した。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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ー 公判予定 ー
10月12日 京都3事件 京都地裁 | 10:00~ |
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10月23日 コンプライアンス事件 大津地裁 | 10:00~ |
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関連動画 「関西生コン事件」報告集会 ココをクリック
検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comま