1976年4月10日、全国港湾の組織した年金制度確立のための第4波統一行動に、大港労協傘下の全組合員が参加し、大阪港は全港ゼネストに入った。

㈱南港複合ターミナルの建設工事の建設反対を求め

港湾労働者の年金制度の確立は、すべての港湾労働者の切実な要求であるが、大阪ではこれに加えて、1974年に設立された株式会社南港複合ターミナルの建設工事が港湾労働者の中止要求にもかかわらず進められているという状況があった。
そこで大港労協は、港湾年金制度確立と複合ターミナル建設中止をメインスローガンに、第4波統一行動を展開した。南港では、全港湾労組員を主力として3ヵ所のピケットラインが設けられ、多数の労組員がピケットに参加した。

このなかで、南港ピケに参加した2名の組合員が威力業務妨害、道路交通法違反で現行犯逮捕されたのである。
逮捕後、2名は起訴され、5年余りを経た1981年5月15日、大阪地裁で罰金5万円の判決が言い渡された。

裁判所の判決は?

判決は、2名を「有罪」としたのであり、全面的に評価することはできず、不当であると言わざるを得ない。しかし、内容的にみると、港湾労働者の闘いに一定の理解を示し他方、大阪市港湾局等行政当局や日本港運協会に厳しい批判を加えたものということができる。年金闘争や対複合ターミナル闘争についていえば、港湾労働者らの主張と闘争の正当性をほぼ全面的に認めたと言ってもよい。その意味では、「有罪」判決ではありながら、積極的に評価すべきものを含んでいる。

弁護側は「無罪」を主張

被告・弁護側は、この裁判において、次のような理由で被告人らは無罪だと主張し、この主張に沿って立証活動をしてきた。
つまり、まず、労組法第一条第二項は、正当な組合活動は刑法上処罰できないと規定しているのであるが、本件のピケッティングは、①本件争議行為に至る背景・経緯、②目的、③手段、④態様等を総合してみると正当な組合活動であるから、無罪であるというのが第一の主張である。第二に主張したのは、仮に本件ピケッティングが違法であるとしても、上記の①~④を総合してみると、その違法性の程度は刑事罰をもって処罰する程度に達していない(可罰的違法性がない)、ということである。

複合ターミナルに関し、それが「海陸一貫輸送を目指すものであることはその立地条件よりして明らかである」としたうえで「港湾労働の特殊性(即ち、日々の仕事量の著しい変動による不安定性と、これに伴う中小零細港湾業者の乱立、異種の労働の結合による運営、労働集約型の移動産業であり、港湾全域が作業場ともいえること、労働条件の過酷さ、劣悪さなど)や、船会社、荷主等によって進められたコンテナ船の導入、カーフェリー航路の開設、国や地方公共団体のこれに見合う港湾政策の合理化、近代化に伴う港湾労働部門の縮小即ち職域の減少等を考慮すれば、大阪市港湾局をはじめとする関係官庁も、港湾の近代化推進の一翼を担ったものとして、ことに大阪市が複合ターミナル会社設立の中心となったことでもあり、港湾労働者の職域減少に伴う不安の解消に力を尽くすべきは当然である」と明解に断じている。加えて、第58回ILO総会で採択された港湾労働条約及び勧告を引用して、これらに「留意」すべきであるとしている。
上記のような理解にたって「本件ストライキ前における三庁の対応の仕方には疑問を抱かざるを得ない点も存する」と指摘しているのである。

年金問題制度についても…

また、年金制度の問題についても、全国港湾と日本港運協会の交渉経過を認定したうえ判決は次のように言う。
「いずれにしても、全国港湾側が、その後における右日本港運協会の態度に不信感を抱くに至ったのは当然の推移というべきである」と。
そして、このような二つのメインスローガンのもとでおこなわれた第四波統一行動については、「結局本件労働争議自体は正当というべきである」と判示したのである。
さらに、「港湾労働の職域は前示のようなその特殊性から港湾全域にわたるものとも考えられるから、大阪南港の入口である判事本件現場においてピケッティングを行うことも、その方法如何によってはあながちこれを不当ということはできないのである」と言っている。

このように、判決は、全体としての本件争議行為自体は正当でありかつ、南港におけるピケッティングもただちに不当とはいえないと判断したのである。
それでは、判決は、なぜ有罪という結論を導いたのかというと、「方法」が違法という判断を加えざるを得ないものであったとしたからである。

ピケッティングに際しての組合の方針が「いわゆる説得活動」にあったことを認めつつ、また、ピケッティング中にもバス、乗用車、タクシーなどを阻止せず通過させていたことを認めつつ、車線を完全に塞ぐ形で車道上に座り込み、「トラックについては無差別に停止させたままにしたこと、現実に停止させた車両の業務はいずれも港湾労働と無関係なもの」であったことを重視した。また、「行動の目的につての説明、説得の担当者も定めず、説得も不十分なまま・・・道路上に座り込むなどしたこと」が違法性の評価に結びついたものと思われる。
要するに、本件ピケッティングが「同一組合員ないし使用者側従業員に対するもの」でなく、「全く無関係な第三者に対する」ものであったことが違法性判断の分かれ目であったといえるだろう。しかし、判決は「全く無関係」というけれども、ことの真相は「無関係」な車両のみを警察がピックアップして氏名・住所を控えたものであって、それ以外の車両もすべて「無関係」というわけでは恐らくない。しかも一見「無関係」であっても、港湾労働者の職場といえる南港を走る車両であれば港湾労働者のスト、ピケッティングによってある程度の影響をこうむることは当然受任すべきであると思われる。港湾労働者からすると「職場」内を走る車両は「無関係」とは言えないのである。
判決には、上記のような点において限界があると言わざるを得ない。

労働組合つぶしの大弾圧を許さない!2019元旦集会
関生支部に対する不当弾圧に抗議するデモが、元旦に取り組まれます。
【大阪府警包囲デモ】コースが決定しました!
10時 大阪城公園・教育塔前広場で集会
10時40分デモ開始
広場→馬場町交差→府警前→府庁南→谷町2→谷町3→府警南側→馬場町交差→教育塔広場で流れ解散
府警本部には武委員長が、滋賀・大阪の被弾圧者の仲間が勾留されたまま年を越します。関生支部の対する弾圧を許すな・闘う労働運動の2019年にふさわしい元旦闘争にしましょう。
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