推定無罪の原則で公平に訴訟指揮をすることを裁判官に求める弁護士たち

「手錠・腰縄をつけられた被告が、傍聴人の見守るなかで入廷する」という、刑事裁判の常識を変える取り組みが、中井雅人弁護士(大阪)・金岡繁裕弁護士(名古屋)・川崎真陽弁護士(大阪)をはじめとする人権重視、人権侵害を許さない弁護士たちの行動によって大きな成果をあげています。

「手錠・腰縄姿を見られたくない」とする被告の利益を「法的な保護に値する」と判断した今年5月の大阪地裁判決後、各地の法廷で被告に配慮した措置が相次いでいます。
6月4日の静岡地裁浜松支部では、殺人などの罪に問われた男性被告の裁判員裁判で、山田直之裁判長は、この日の審理では傍聴人が法廷に入る前に被告を入廷させ、あらかじめ手錠・腰縄を外しました。以降の審理では被告の出入り口前に蛇腹のついたてが置かれ、ついたての陰で手錠・腰縄を外すなどして、被告が手錠・腰縄を着けた姿を傍聴人に見せないようにしたのです。
弁護人の金岡弁護士によると、被告は「すべてにおいて違っている」として起訴内容を否認しています。「傍聴人に手錠・腰縄姿を見られるのは耐え難い屈辱感がある」と打ち明けたため、金岡弁護士が開廷前日、傍聴席に手錠・腰縄姿をさらさないよう静岡地裁浜松支部に申し入れていました。金岡弁護士は「被告の手錠・腰縄姿は当然なんだと弁護士側の感覚も麻痺していた。裁判長が申し入れに応じるか半信半疑だった」と話しています。
大津地裁では6月、威力業務妨害などの罪に問われた男性被告の公判はさらに徹底していました。今井輝幸裁判官は弁護側の申し入れを受け、傍聴人だけでなく、裁判官自身や検察官の視界もさえぎるついたてを置いたのです。
弁護人の中井弁護士は「配慮は予想以上だった。推定無罪の原則で公平に訴訟指揮をする、という裁判官の意思の表れとも受け取れる」と話しました。
続いて、大阪地裁でも7月12日、覚醒剤取締法違反罪に問われた女性被告の裁判で、大津地裁と同様の措置が取られたのです。

…次回につづく


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